第28話 世界が変わっても、婚活であり得ない条件を出す人はいる(その3)
新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。
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同じくロボット物です!
「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」
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「バウマイスター辺境伯様、お会いできて光栄ですわ」
「ははは……どうも……」
「竜退治のお話や、帝国の内乱で活躍したお話を聞かせてくださいな」
これも大貴族の義務だと思って参加してみたものの、今の俺の気持ちは、『一秒でも早く終わってくれ!』だった。
どうやらこのお見合いパーティーに参加している男性参加者の中で、一番人気があるのが俺らしい。
奥さんの数が多いから、自分一人混じっても問題ないと思っているのであろうか?
もしそうだとしたら本当に勘弁してほしいところだが、実際に彼女たちと話してみると、どうして彼女たちが未婚なのか容易に理解できてしまった。
前世で、結婚相手のあり得ない条件を口にした、会社の先輩たちと非常に酷似していたからだ。
「私はロッテンマイヤー公爵家の娘だから、正妻にすると王都との繋がりができて便利ですわよ」
「……」
俺のこの世界の母とそう年齢が違わない女性が、お化粧と香水の匂いをプンプンとさせながら、ドヤ顔で俺と結婚したあとの話……彼女の希望が混じった……いや、ほぼ彼女の希望か……を喋り続けていた。
自分は公爵家の娘だから、もし俺が彼女と結婚したら正妻の交代は必須だそうだ。
ホーエンハイム枢機卿が聞いたらガチ切れしそうな話だが、どうやら彼女はあまり頭が良くないようで、自分の発言の危険性についてまったく気がついていなかった。
大身となったバウマイスター辺境伯の正妻がバカだと困るのだが、 彼女は自分がとても頭がいいと思っているようだ。
バカは自分がバカだと気がつかないって、前世でなにかの本で読んだことがあるけど、まさに彼女がそういう人なんだろう。
ペラペラと、エリーゼを押しのけ、新しく俺の正妻となった自分が、バウマイスター辺境伯家中を統率していくか、ずっと話し続けている。
その内容は……まったく聞く価値がなかった。
「結婚式は、多くの招待客を呼んで豪華に行いましょう。大型魔導飛行船を借り上げて、船上結婚式なんていいかも。今、貴族たちの間でとても流行しているのです。ドレスは特注品で、新婚旅行はアーカート神聖帝国がいいわね。結婚したあとはバウマイスター辺境伯家の正妻に相応しい格好をしないといけないので、懇意にしている洋品店と宝飾店に沢山お洋服とアクセサリーを注文しないと。お化粧品や香水のグレードも上げましょう」
「……」
それは結婚できないわけだ。
もうすぐ五十歳になろうかという女性が、結婚式で見栄を張り、高価なドレスやアクセサリー、化粧品や香水を使うことに執着しているのだから。
まともな貴族なら、このオバさんが家を傾ける危険に気がつくだろう。
「(この匂いは苦手だなぁ……)」
前世であまり女性に縁がなかった俺は、とにかく女性の香水と化粧品の匂いが苦手であった。
エリーゼたちはそれを察してくれて、匂いの強い化粧品や香水は決してつけないのに、彼女たちよりもはるかに年上のオバサンがそれに気がつきもしない。
大貴族の娘なのに、実家はちゃんと教育しなかったのだろうか?
してないから、今の今まで結婚できなかったのだろうけど。
これから結婚して数十年と一緒に暮らしていくのに、結婚相手に気を使えないようでは、それはその歳まで結婚できなくても当然というものだ。
「(なにより彼女は、俺のお金でいくらでも贅沢できると思っているんだろうな)」
普通もう少し隠すものだが、彼女は俺と結婚すれば、もっと豪華な衣装やアクセサリー、化粧品や香水が買い放題だと思っているらしい。
確かに俺は資産家だが、それを無駄な浪費に使ってしまえば領内の開発が遅れ、ローデリヒから怒られてしまう。
もし彼に叱られた時、彼女は素直に反省するだろうか?
「(それはないな)」
この歳まで、自分で働きもせず、親からもらったお小遣いで自分を着飾ることしかしてこなかったのだ。
俺と結婚したら変わる、なんてことはまずあり得なかった。
「バウマイスター辺境伯様、是非この私、ロッテンマイヤー公爵家のシルヴィアを選んでくださいね」
「……」
そう言いながら、俺にウインクしてくるシルヴィア嬢。
美少女がウインクするのならいいが、アラフィフの女性にされると色々と厳しい。
あまりに衝撃的な行動に、俺は無言のまま顔をヒクつかせながら、かろうじて硬直状態を解いて小さく会釈をするのが限界だった。
これも、乗り越えなければならない貴族の柵なのだと己に言い聞かせながら。
あと、ルックナー侯爵にあとで思いっきり文句を言ってやる。
「次は、アンサント侯爵家のドロシー嬢です」
「バウマイスター辺境伯様、私、父がくれるお小遣いでは全然足りないから、結婚したらお小遣いを十倍増やしてくださいね」
「……」
またも、硬直する以外の術がないような女性が話しかけてきた。
どうにか周囲を見渡すと、ブライヒレーダー辺境伯、導師、ブランタークさん。
全員が、俺と同じような目に遭って体が硬直したままだった。
さすがの導師も、自分の使えるお金が増えて、それで贅沢することしか興味がない彼女たちに言い返す余裕はないようだ。
好条件の男性ばかりなので、彼女たちはまるで世に放たれた野獣のごとく積極的に話しかけてくるが、基本的に全員夫のお金で贅沢することしか考えていない。
元々の性格なのか、王族や貴族の娘として何不自由なく暮らしてきた弊害なのか。
残念ながら、俺にはよくわからなかった。
どうやら嫁ぎ先の都合なんてどうでもよく、ただ自分が贅沢できればいいと思っているのだろう。
まだ若くて美少女なら甘やかす夫もいるかもしれないが、あきらかに四十歳を超えているのに、節制ができない女性ってどうなんだろう?
「(聞きしに勝る不良債権揃い。早く帰りたい……)」
間違いなく、男性参加者たちは全員そう思っているだろう。
彼らも定期的に、自分たちをこの地獄に引きずり込んだルックナー侯爵と、確かエンデルス内務卿だったな、もう一人のお見合いパーティー主催者に恨みのこもった視線を向けていた。
それでも、自分たちもお見合いパーティに参加していればまだ許せたけど、パーティーの運営に回って被害を受けるのを避けているから、余計に男性参加者たちの恨みを買っているように思える。
「バウマイスター辺境伯様、私が正妻になったら、実家から内政と財務に長けた家臣たちを連れて来ますので、彼らに任せてくださいね。それと、嫡男のフリードリヒは私の養子にしますから」
「……」
バカは、自分がバカなことに気がつかない。
この人もその実例とは……。
厚化粧のアラフォーと思われる妙齢?の貴族令嬢は、もし自分が俺の正妻になったら、実家から家臣たちを連れて来て、バウマイスター辺境伯領のすべてを取り仕切らせるつもりのようだ。
だが、そんな平時に乱を起こすような要求が認められるわけもなく、そんなこともわからない彼女はやはりバカなんだろう。
でも、バカは自分がバカだってわからないから、そうすることでみんなが幸せになると本気で思っている。
だから余計に手に負えないとも言うのだけど。
「バウマイスター辺境伯、酷い有り様ですね」
「ええ……」
ヤバイ貴族令嬢たちからの猛アピールに疲れ果てたので会場の端で小休憩を取っていると、同じく疲れた表情を浮かべたブライヒレーダー辺境伯が話しかけてきた。
思えば、ブライヒレーダー辺境伯も奥さんは元気なので、すでに子供を産めない彼女たちを正妻として受け入れなければいけない理由がない。
俺だってそうなんだが、ルックナー侯爵に仏心を出したらこの様だ。
「ルックナー侯爵……この貸しは大きいですよ……」
この会場にいる男性全員が、ルックナー侯爵とエンデルス内務卿へのヘイト値を溜めている最中だった。
内務卿は貴族の管理も仕事だけど、そんな理由で奥さんを増やしたくないし、俺にも選ぶ権利くらいあってもいいだろう。
「エンデルス内務卿は、貴族の管理も仕事です。とはいえ、結婚できない娘を私たちに押し付けるのが仕事だなんてあり得ませんけどね!」
ルックナー侯爵とエンデルス内務卿。
今日の大惨事の主犯だと、俺たちの認識は一致した。
「ところで、とんでもないことを言っている貴族令嬢の方々がいますけど……」
「長年結婚できず、親に財力があるので自由にさせた結果、あのような贅沢するしか能がなく、プライドと承認欲求の塊が完成したわけです」
好条件の男性と結婚できるチャンスだと親から聞かされテンションが上がった結果、自分は血筋がいいから今いる正妻を押し退け、自分が新しい正妻として振る舞っても構わないと思い込んでしまった。
さらに自分の力を誇示するため、これまでバウマイスター辺境伯領の統治を担ってきたローデリヒたちの代わりに、自分の子飼いの家臣たちにバウマイスター辺境伯領の統治を任せるそうだ。
家柄がいいのか知らないが、バカの無駄なプライドの高さには辟易する。
そもそも、そんな話が本当に実現すると思っているのだろうか?
思ってるから、言うんだろうな。
親心で陛下に陳情し、ルックナー侯爵とエンデルス内務卿が頑張ってお見合いパーティーを開いた結果、彼女たちの父兄の評判もガタ落ちしてしまうなんて、こんな皮肉はないと思う。
「彼女たちの親は、なにか注意しないんですかね?」
「子供ならいざ知らず、彼女たちはもういい年の大人ですからね。なにより、これまで社会にも出ず、同じ境遇の女性たちと長年いい家に嫁いだ時のことを妄想しながら生きてきたのです。もう親が注意しても無駄なんでしょうね。もしくは……」
「もしくは?」
「父兄も、まさか彼女たちがあそこまでバカなことは言わないと思っていたとか?」
「それは悲劇ですね」
せめて夢を見させてあげようと今日のお見合いパーティーに参加させたら、肝心の娘たちが王国でも指折りの大貴族たちに喧嘩を売っているのだから。
「本当に最後の手段ですけど、形だけ嫁ぐって方法もあるんですよ」
「そんなのあるんですか」
「ええ、その代わり、娘を出す家が相当信用されていないと駄目です」
正妻、嫡男、すべて揃っていて代替わりに問題のない家に、形式上だけとはいえ家柄のいい貴族の娘を嫁がせた結果、後継者に異議を唱えたり、その家の統治体制に口を出し、自分が連れてきた家臣を出世させようとしたりと。
平時に乱を起こすような行動をされると困るからだ。
誰だって、そんな面倒事は嫌なのだから。
「彼女たちは駄目ですね。当然、その父兄たちも駄目です」
自分が正妻になるため、今いる正妻の序列を落とせと言い放ち、後継者を自分の養子にしろと要求したり、自分が連れて来たお気に入りの家臣たちを領地の統治に責任ある立場として参加させようとしたり。
彼女たちの父兄は、娘たちの暴言を知っているのだろうか?
そして、自分の娘たちのせいで家の悪評が立ってしまったことに。
「もしかしてこれって、陛下とルックナー侯爵の謀略なんでしょうか?」
結婚できない娘のために、条件のいい男性を集めてお見合いパーティーを開くことで王国に恩を売りつつ、彼女たちの暴走により娘をお見合いパーティーに出した家の評判を落として力を削ぐとか?
「さすがにそれは、バウマイスター辺境伯の考えすぎですよ。どうしても自分の娘や妹だから、そんなことはしないと思いたいんでしょうね。親バカなんですよ」
身内贔屓ってことか。
わかるような気がする。
「では、ブライヒレーダー辺境伯も、アニータ様を心のどこかで信用しているのでしょうか?」
「……それは、あり得ませんね」
「言い切るなぁ…… 」
「あの伯母を、野放しになんてできませんよ。もしこのお見合いパーティーに誘われても、決して参加させなかったはずです。実際、参加させなくて正解でしたからね」
「ですよねぇ……」
このお見合いパーティーに参加した男性は、確実に女性たちの実家を嫌ったはずだ。
なぜなら、お見合いパーティーで初めて顔を合わせた世間知らずのオバさんたちに、家のことにまで口を出されたのだから。
「はぁ……。あと半分ですか……」
「長く感じますね」
半ば義務とはいえ、出たくもないお見合いパーティーなのでまったく興味がないどころか、イメージがマイナスの女性たち相手に社交辞令に徹するのは、非常に辛かったからだ。
まさにメンタルを削られる、であった。
「(これが終わったら、エリーゼたちと王都で夕食を楽しもう)」
お見合いパーティで出されている料理自体には目新しさもなく、元々お見合いが主体なので、俺はほとんど料理を食べていなかった。
前世なら無料飯は食べれば食べるほど得と考えて食べたはずだけど、そういうところは俺も貴族になったのかも。
「バウマイスター辺境伯様は新しい料理を次々と考案されるほど、教養あるお方と聞き及んでいます。そこで、私の家に伝わる伝統料理をご馳走したいのです」
「ははは……時間があったら是非」
出た!
歴史ある貴族家に伝わる伝統料理!
実は、大半の料理が美味しくなかった。
昔から、同じ食材と調味料、調理方法を続けてるので、料理の進化から取り残されていたからだ。
実際、ホーエンハイム子爵家の伝統料理であるフナのパイもビックリするほど美味しくなく、ホーエンハイム枢機卿が俺には絶対に出さなくなったくらいだから。
「参考までに、どのような料理なのでしょうか?」
「魔物のモツをよく煮込んだシチューだそうです」
「へえ、そうなんですね」
ああ……、元々コミュ障の俺が興味がない人と話を続けるのは大変だなぁ。
貴族の伝統料理で、モツを使った料理は特に危険である。
なぜなら、昔から同じ調理方法を踏襲しているので臭いケースが大半だからだ。
じゃあ、今風に料理を改良すればいいって?
調理方法まで含めて伝統なので、それは伝統に拘る貴族ほど決して許されない。
貴族はそんな不味い伝統料理をパーティーなどで作らせ、招待客に振舞うことで、自分の家の古さを自慢しているのだから。
呼ばれた方も、まさか他の家の伝統料理を不味いとも言えず、失礼にあたらないよう残さず食べる。
そんな貴族のパーティーは地獄とも言えた。
中には伝統料理をちゃんと美味しくアレンジしている貴族もいるけど、歴史の長い大貴族ほどそれを嫌がる。
なぜなら、昔ながらの作り方を守り続けることこそが尊いと、本気で思っているからだ。
ちなみに、バウマイスター騎士爵家がよく出していた、薄い塩味の野菜スープとボソボソの黒パンは別に伝統料理でもなんでもない。
昔は、それしか出せなかっただけだ。
ゆえに今は、たまに父が昔を思い出すため食べているくらいだ。
母も他の家族も決して口にはせず、わざわざ不味い料理で腹を満たしたくないから当然か。
「(早く終わらないかなぁ……)」
中身はともかく、全員俺よりも年上で、なんなら前世とこの世界の母親よりも年上の女性もいるのに、『もし俺と結婚したら……』なんてドリームを語られ続けるのは辛い。
そもそも夫婦って、お互いに助け合って家を維持していくものではないのか?
こんなことを言うと、『お前は利害関係で夫婦になるのか? 』って怒られそうだけど、じゃあ一方的に『奥さんになったら好き勝手やります』と言い放つ、化粧と香水臭いオバさんと俺が、どうして結婚しなければいけないんだ?
エリーゼは治癒魔法だけでなく、俺の正妻として凄く頑張っている。
少なくとも、今日お見合いパーティーに参加しているオバさんたちでエリーゼに敵う人はいないだろう。
それなのに、自分の方が家柄がいいから、エリーゼを正妻の座から下ろせなんて言うのだから救えない。
教会の重鎮であるホーエンハイム枢機卿を敵に回すなんて、いい度胸をしている……多分なんも考えてないんだろうなぁ。
「(もうすぐ終わる……。もうすぐだ……)」
地獄の三時間が、ようやく終わろうとしている。
ふと他の参加者たちを見ると、全員がもうすぐこの地獄が終わると、安堵の表情を浮かべていた。
「(バウマイスター辺境伯、誰か気に入ったのであるか? 結婚式には呼んでくれなくていいのである!)」
「(酷い言われようですね……。で、導師こそどうなんです?)」
冗談なのか、皮肉なのか。
導師が、今日お見合いパーティーに参加している、やんごとなき貴族令嬢の誰かと結婚するのか聞いてきたので、つい質問し返してしまった。
「(天地が引っくり返っても、あんなのと結婚なんてしないのである! ストレスが溜まるだけなので当然であろう!)」
「(俺もそうですよ)」
「さて、名残り惜しいですが、パーティーの時間が終了となりました。最後に、この人がいいという希望を、これから配る紙に書いてください」
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
予想もしなかった事態に俺たちは絶句するが、『希望する女性の名前を書く紙』がパーティー会場でお世話係をしていた男性使用人たちから手渡された。
なお、今日のお見合いパーティ―には女性のお世話係は参加していない。
その理由はとても簡単で、女性参加者たちよりも若い女性を会場に配置したら、結婚成立数が減ると思ったからであろう。
男性の世話係しか配置していなくても、そう簡単に結婚が成立するとは思えないけどね!
俺たちは女性の名前を書く紙をしみじみと見つめつつ、一瞬だけルックナー侯爵に対して一斉に殺意を籠めた視線を送った。
『なに余計なことしてくれてるんじゃ! 』と。
『男性参加者は誰も女性を選びませんでした』で終わると言うからお見合いパーティーに参加したのに、まさかそれすら裏切られるとは思わなかったからだ。
「(ゴラァーーー!)」
珍しく激昂した俺は、パーティー会場の真ん中で好きな異性を書く紙を配ろうとしていたルックナー侯爵を会場の端まで引っ張って行った。
「(なにを考えてるんですか? このままお見合いパーティーは終了でいいじゃないですか!)」
「(よくよく考えてみたら、もし男性参加者が一人も女性を選ばなかったら、あとで大騒ぎになると思ってな。なにも無理に、紙に書いた女性と結婚しなくてもいいから)」
「(当たり前です!)」
「(気になってもう一回二人で会ってみたけど、なんかシックリこなかったから断ります、って感じにしてくれないか?)」
「(嫌です)」
そんなの嫌に決まってるし、もしもう一回二人だけで会ってしまったら、女性も実家も絶対にこのまま結婚させようと目論むに違いない。
それを阻止するのに、いったいどれだけの労力が必要か。
「(お見合いパーティーには出たんですから、あとは自分でどうにかしてくださいよ。俺はそんな紙に誰の名前も書きません!)」
ルックナー侯爵とエンデルス内務卿は、どうせ陛下にいい顔見せようとしてこのお見合いパーティーを主催したんだから、責任は二人で取るべきだ。
向こうが誤解するようなことはしたくない。
「(俺だけじゃなくて、男性参加者全員が同じ考えだと思いますけどね……じゃあ、俺はこれで)」
俺は紙に名前を書かず、そのままパーティー会場をあとにした。
「ふぅ……。私ももうこれ以上は付き合いきれませんよ」
「右に同じなのである!」
「ああ、怖かった。ある種のホラーだよな、貴族社会の闇だ。帰って娘に癒されよう」
ブライヒレーダー辺境伯、導師、ブランタークさんも、紙に女性の名前を書くことを拒否して強引に会場をあとにした。
三時間パーティ―会場にいたので、もう義理は果たしたわけだ。
さらに俺たちに続く男性参加者たちも続出して、今頃誰にも選ばれなかった女性たちが主催者二人に詰め寄ってるかもしれないな。
だとしても、まったく可哀想だとは思わないけど。
それにしても、とてつもなく長く感じた三時間だったな。




