第17話 アナゴ、ハモ、ドジョウ(その2)
新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。
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「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」
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「一匹も死んでないな。よかった」
綺麗な海水も汲んできたので、水を替えてから丸一日餌をやらず、お腹の中を空にしたマアナゴたちを、バウマイスター辺境伯家が雇っているミズホ人の料理人がウナギと同じ要領で捌いていく。
彼は北の海で獲れるクロアナゴしか知らないので、俺にマアナゴを捌いてほしいと頼まれた時、『こんな美味しくない魚をですか?』という表情を浮かべていた。
それでも主人の命令なので、料理人は目打ちをし、包丁の背で体表のヌメリを丁寧に取り、素早く背開きにしていく。
内臓と背骨を切り離し、内臓は綺麗に下処理して塩辛に。
マアナゴの肝は、甘辛く煮ると美味しい。
背骨は骨煎餅にして、頭は焼いてから煮アナゴや蒲焼きのタレと煮て出汁を取るのに使う。
ウナギに慣れているのもあって、料理人はテキパキとマアナゴを調理した。
「そして、マアナゴと言えばこれ!」
開いたマアナゴの身を切らずに一本そのまま天ぷらにすると、見映えのよさで大きなエビフライと双璧を成す、マアナゴの一本天ぷらの完成だ。
さすがは、バウマイスター辺境伯家お抱えの料理人。
天ぷらも名人級の腕前で、見事なマアナゴの一本天ぷらが完成した。
カラッと揚がったマアナゴの一本天ぷらと、ナス、大葉などの野菜天ぷらを丼ご飯の上にのせ、ここにアナゴの頭で出汁を取った天ツユをかけると……。
マアナゴの天丼の完成だ。
他にも、煮アナゴ、蒲焼き、煮アナゴを巻いた玉子焼き、蒲焼きとキュウリの酢の物、白焼きなどが完成する。
「しかし、この魚はウナギに似ているな」
試食に招待されたブランタークさんは、アナゴとウナギの差がつきにくいと述べた。
「実際に食べてみればわかりますよ」
「確かにな。ほほう、これはいいな。俺はウナギの脂っこさのせいでそんなに食べられないんだが、こいつなら天ぷらでもいける。身がホクホクで、ウナギよりも脂が少なくてサッパリしているじゃないか」
ブランタークさんは、ウナギよりもアナゴが気に入ったようだ。
「ウナギの天ぷらって、前にリバーでも食べたことあるけどよ。まあ美味しくはあるが、脂っこいものを油で揚げるから、そんなに食えないよな。俺は、アナゴの天ぷらの方が好きだ」
ウナギの天ぷらも美味しいけど、ウナギ自体はとても脂が多い。
脂っこいものを油で揚げるので、俺もアナゴの天ぷらの方が料理としての完成度は高いと思っていた。
ウナギは、その脂を落としながら焼くのがいいんだ。
「この煮アナゴもいいな。柔らかくて実に美味いじゃないか」
「酒に合うのである!」
導師は、アナゴ天丼と煮アナゴ丼を交互に食べつつ、他の料理も食べながら酒を飲んでいた。
さすがの食欲だが、やはりこの人物には勝てなかった。
「美味しい。ウナギとは違って脂が少なくて、サッパリ食べられる」
「脂の量とか、もう関係ないよな」
エルは、ヴィルマの食べっぷりに感心していた。
アナゴの一本天ぷらを二十本使った特大アナゴ天丼と、同じ量の煮アナゴを使った煮アナゴ丼を恐ろしい勢いで食べるヴィルマを見ていると、ウナギとマアナゴの脂の量なんて些末な差ではないのかと錯覚してしまいそうになる。
「それにしても、クロの仲間がこんなに美味しいなんて……」
ミズホ人であるハルカからしたら、アナゴはただ大きくて、身に骨が多くて固く、皮はゴムみたいで噛みきれず、流通量も少ないので、無理に食べるものではなかった。
少し違うくらいで、マアナゴがこんなに美味しいとは思わなかったのであろう。
感心しながら食べていた。
「天ぷらがとても美味しくて、しかも一本丸々揚げてあるのが豪華でいいわ。お店で出すと流行りそう」
俺もイーナの意見に賛成だが、問題は今のところ、昨晩釣りをした西部の海岸しかマアナゴの生息地を確認していないことだ。
他の大きなアナゴなら割とどこでも釣れるけど、美味しくないのはハルカがよく知っている。
お店で出すのは難しいかも。
「以前のフジバヤシ家は貧しかったですけど、それでもクロなんて食べませんでしたよ」
「クロ?」
「ああ、ルイーゼさん。ミズホで獲れる黒くて大きなアナゴのことを、クロって言うんです」
「どうにか料理できないの?」
「工夫すれば、まあまあ美味しくなるかも。ただ、マアナゴほど美味しくならないです」
「うーーーん、残念!」
というわけなので、これからもマアナゴの生息する場所を探しつつ、今はバウマイスター辺境伯家のみの秘密としよう。
「あなた、秘密にするのですか?」
「こうも美味しいと、すぐに獲り尽くされてしまうからさ」
マアナゴの生息海域がバウマイスター辺境伯領内なら、漁獲制限などをすればいいのだが、如何せん俺ではどうにもできない西部の海域の話だ。
どんな生物でも、人間が沢山獲るとすぐにいなくなるか希少な存在になってしまう。
たとえば、ウツボ。
ほとんど食べる人がいない海域には沢山生息しているが、ウツボをよく食べる高知の海では生息数の減少が問題になっていた。
それだけ、人間の食欲とは凄いものなのだ。
「だからこそ、断腸の思いだけど、マアナゴの生息海域は隠す必要があります」
決して、マアナゴが獲られすぎた結果、俺が食べられなくなるのが嫌だからってだけじゃないぞ。
「こんなに美味しいのに残念ですね」
エリーゼは残念そうな表情を浮かべながらも、楽しそうにマアナゴの一本天ぷらと格闘していた。
「じきに、他のマアナゴの生息域は見つかるはずだよ」
いまだリンガイア大陸には、ほとんど人が踏み入れたことがない海岸が山ほどあるのだから。
「ぷはぁーーー! このマアナゴの内臓の塩辛は酒によく合うな」
「肝の甘辛煮もである!」
「骨煎餅も酒によく合うなぁ」
「まったくなのである!」
食事を終えたブランタークさんと導師は酒飲みモードに移行し、俺たちはいつものように時間を過ごした。
別に貴族になったところで、俺に貴族っぽいパーティーになんて、つき合い以外でほとんど必要ない。
家族や仲のいい友人たちと過ごす、こういう砕けた席の方が楽しいのだから。
「どうです? この特製のウナギ裂きは。最近、バウマイスター辺境伯様が持ってきてくれたマアナゴにも使えますぞ」
「俺の腕前は微妙なので、うちの料理人に試しに使ってもらうよ」
「それで、こちらの包丁は依頼された通りに作りましたが、なにに使うんですか?」
「特別な魚の骨切りに使うのさ。骨が多いので、皮を切らないように身に細かな切れ込みを入れて、小骨が口に当たらないように調理する必要があるので」
「そんな面倒な調理をしないと食べられない魚が……クロですか? あれはそこまで手間をかけてもそんなに美味しくないでしょう」
「他の魚だよ。上手くやらないと身が潰れて美味しくなくなるし、骨切りの間隔が広いと骨が口に当たる。料理人の腕の見せどころなんだけど、当然優れた刃物は必要ってね」
マアナゴを探す過程で、ハモを釣りあげた。
日本だと、関西でよく食べられている魚だ。
生きたハモを開いてから、皮を切らないように身を骨切りする。
ウナギと同じく血に毒性があるので加熱調理が基本だが、活きているハモを骨切りしてお湯にくぐらせると、その白い身がまるで花が咲いたかのように反り返る。
いわゆる『牡丹ハモ』だが、これを梅肉や辛子酢味噌で食べたり、お吸い物、土瓶蒸し、ハモ寿司、天ぷら、唐揚げ、蒲焼き、ハモすきという鍋料理、高級カマボコの材料としても有名だ。
貧乏サラリーマンだった俺は一度だけ会社の接待で食べたきりだが、今の俺はバウマイスター辺境伯だ。
ハモさえ見つかれば……ということで活動していたら、バウマイスター辺境伯領の海にも生息していて助かった。
ただハモは、ウナギやアナゴよりも扱いが難しい。
その凶悪な面構えどおり噛みつかれる可能性が高く、生かして持ち帰ろうと複数匹を同じクーラーボックスに入れると、噛み合って殺しあうほど凶暴だ。
なにより骨切りが……まず俺には不可能……いや、それほど包丁の扱いが得意でない俺が、刃物でハモの骨切りをしようとするから苦戦するのだ。
「魔法で骨切りをしよう! 活きのまま持ち帰るのも危険だな。思い切ってここで締めてしまおう」
釣れたハモの首の後ろに魔法の刃を入れ、中骨を断つ。
そして冷海水につけて血を抜きつつ、冷やしながら運ぶ。
「ヴェンデリン様。このお魚、とっても凶悪な面をしていますね」
フィリーネのような若い女性からしたら、ハモは可愛く見えないだろう。
だが俺には必要な魚なのだと知ると、締めて動かなくったハモを次々とクーラーボックスに仕舞っていく。
やはり、この世界の女性は逞しいというか。
「そろそろ屋敷に戻ろうか」
「「「はい」」」
ハモ釣りにも同行してくれたアグネスたちと共に、十分な数のハモを釣った俺たちはお屋敷へと『瞬間移動』で戻る。
「まずは、体表のヌメリを取ります。これが、臭みの原因だから」
「締めて血抜きをし、冷やしたハモに八十五度くらいのお湯をかけると、体表のヌメリが凝固して白っぽくなるから、これをタワシで擦ってすべて取り除く」
ヌメリは、生臭さの原因になってしまう。
できる限り、すべて除去した方がいいに決まっている。
「頭を落として、お尻の穴から刃物を入れてお腹を裂くんだけど……」
ウナギやアナゴで慣れている料理人は、手早くハモを開き終えた。
さすがの腕前である。
「内蔵はお尻の穴の下まであるので、そこまでお腹を切り開いてから、血合いと内蔵を取り除きます」
この作業も、料理人は上手にこなしていた。
「お腹の中を水でよく洗い、綺麗な布で拭いてから、中骨を取り除くけど、ハモの骨は三角形なので、包丁を立てて捌くといい」
「お前、 そんなに包丁の使い方が上手じゃないのに、そういうコツは知っているんだな」
「わかっていてもできないことって、あると思います!」
と思ったら、魔法で無属性の刃物を出してやると、料理人ほど上手ではないけどできた。
「やはり俺は、調理人ではなく魔法使いなんだな」
「その前に貴族だろうが」
エルからツッコミを入れられてしまった。
「裏返して、背ビレの骨と一緒に背骨を切り離す。さらにヒレを切り離して……」
「おいおい、そもそもヴェルができてなくね?」
「むむむっ……とにかく、ハモの身には骨が多いから、骨切りをして食べやすくするんだよ」
「なるほど……。確かに、この魚には骨が多いですね」
ハモってのは、俺が思っていた以上に骨切りをするまでの捌き方が難しいな。
どうにか骨切りを終え、湯通したが、上手く骨切りできなかったので、牡丹の花のように身が咲かなかった。
そして、裏ごしした梅干しで食べてみたのだが……。
「口の中で骨が当たるなぁ……」
ハモの身はとても美味しいんだが、やはりこの骨がネックだな。
知識だけでどうにかしようと思ったのだが、そう簡単にはいかないようだ。
「骨切りをしても、口に当たる骨があるようですね。確かに、頭や中骨からはいい出汁も取れますし、調理方法を研究する価値がある食材です。お館様、時間がかかるかもしれませんが研究させていただけないでしょうか?」
「是非頼む!」
だって、俺の調理技術ではハモは手に負えないのだから。
包丁ではなく、魔法の刃物を駆使してみたけど、素人がハモを調理しても骨が当たって駄目だ。
ここはバウマイスター辺境伯らしく、 料理人に存分に研究させることにしよう。
才能のある家臣に任せ、その果実を得る。
まさに貴族らしい生き方だ。
「活きのハモはすぐに入手できるから、 必要になったら言ってくれ」
「お館様、頑張ります!」
ミズホ人の料理人だから、和食を修行中の板前さんみたいで実にいい絵だ。
彼は腕がよくて真面目なので、必ずやハモの骨切りと、美味しいハモ料理を完成させてくれることだろう。
それまでは、ウナギとアナゴ料理を楽しむことにするか。
「先生、このハモですけど、お兄さんに持っていっていいですか?」
「いいよ」
「お兄さんは、料理の研究は真面目にする人ですから」
ベッティに頼まれて彼女のお兄さんにもハモを融通したけど、確かに彼の料理人としての腕は決して悪くない。
経営に関わるとろくなことがないだけだ。
だから安心して、俺は彼にもハモを渡してみた。
「(だけど、ベッティのお兄さんの専門はどちらかと言うと洋食っぽいもの。魚を調理する機会も少ないから、ハモを上手く調理できるものなのかな?)」
とにかくお手並み拝見ということで、俺はベッティを通じてお兄さんにもハモを渡した。
どちらかというとあまり期待しておらず、あくまでも俺の本命はバウマイスター辺境伯家お抱えのミズホ人の料理人だったのだけど……。
「先生、お兄さんが作ったハモのカラアゲですけど、骨が当たらなくて美味しいですよ」
「なっ!」
数日後、ベッティが持参したお兄さん作『ハモの唐揚げ』 を試食してみたら、まったく骨が当たらずに美味しい。
よくハモの身を見てみると、骨切りが完璧にしてあった。
「完璧じゃないか!」
うちのミズホ人の調理人ですら苦戦しているのに、もうハモ骨切りを習得してしまうとは……。
ハモを食べるにあたって、食感の邪魔になる骨やヒレなどが完璧に取り除いてあり、食べるとハモ特有のフワフワで甘い身が実に美味しい。
これなら、湯引きした身も美味しく食べられそうだ。
「……完璧ですね」
俺が指定したハモ料理が、ミズホ料理に近いものばかりだったからであろう。
ヘルムート王国の料理人であるベッティの兄にハモの骨切りで先を越されるとは思っていなかったうちの料理人が、まさかの敗北に動揺を隠せないでいた。
だが、俺が雇った専属料理人は真のプロだった。
「ベッティ様、あなたのお兄様にハモの骨切りの仕方を教えてもらいたいのですが……」
「はい、いいですよ」
「ありがとうございます!」
うちの料理人は、ベッティの兄にハモの骨切りの仕方を教わり、無事にハモ料理がバウマイスター辺境伯家の食卓を囲うようになった。
さらに彼は技術を磨き、俺が食べたことがないハモ料理まで習得することに成功した。
「ハモの刺身か……」
皮を引いたものと、皮目を火で炙ってあるハモの刺身は、甘さが引き立っており、とても美味しかった。
前世の俺は食べたことがなかったが、ハモの刺身はとても手間がかかる料理で、出しているお店はとても少なかったはず。
「ハモの刺身、甘くて美味しいな。骨をすべて抜くから、もの凄く手間がかかるだろうに」
「どうにか習得しました。これからはリクエストをいただければ、いつでもお作りしますよ」
さすがは凄腕の料理人だ。
ミズホから高給で雇い入れてよかった。
「他にも、湯引き、焼き霜、土瓶蒸し、天ぷら、蒲焼き、唐揚げ、 すき焼きなど、今日はハモ尽くしとなっております」
「美味しそう!」
「あの凶悪な顔のお魚が、こんなに美味しいなんて」
最初エリーゼも、ハモの顔を見て恐怖した口だが、見た目とは大違いのハモの美味しさに感動していた。
「ちゃんと骨切りをしないと、口に当たってしまうのね。川魚にも骨が多くて食べるのに難儀する魚はいるけど、この方法を使えば美味しく食べられるのかしら?」
「応用は可能だろうね」
よく川魚を食べていたイーナとルイーゼらしい会話だ。
たとえば、この世界にもいたニゴイなんて骨が多い魚だから、骨切りすれば美味しく食べられると思う。
問題は、そこまで手間をかける価値があるのかという話なんだけど。
とにかく、ハモは美味しくて栄養がある。
ハモの皮には骨粗鬆症を防ぐ成分が入っており、血中のコレステロールを減らして、動脈硬化や高血圧を減らす効果もあった。
骨切りをして食べるのでカルシウムも豊富で、身には良質なたんぱく質とグルタミン酸などのアミノ酸が多く含まれており、味もとても美味しい。
ウナギよりも脂質が少なく、さっぱり食べられるのも好印象だ。
家族みんなでハモ料理を食べているが、特に女性陣に好評だった。
「先生、お兄さんは無事にハモの骨切りを習得したので、試しにどこかのお店で出してみるそうです。お義姉さんもオーケーと言ってくれたそうで」
今となっては、ベッティの義姉であるローザさんは複数のお店を経営するようになっていたから、どこかのお店で試しにハモ料理を出してみることにしたのだろう。
なお非常に残念なことに、ベッティのお兄さんはこれまでのやらかしのせいで、誰にも経営者だとは思われていない。
一応ローザさんの共同経営者なんだけど……。
料理の腕は悪くないのに、経営能力がないとこういうことになってしまうという、最もわかりやすい事例だ。
「ミズホ料理風でコースにして、『夏バテに効果抜群!』って宣伝すればいいと思うよ」
「ですが、最近はウナギが主流ですから」
王都郊外にあるリバーの店主は王都に複数の支店を持ち、他の貴族の領地や都市に暖簾分けをした弟子がお店を開いている状態だった。
俺がパクって……リスペクトして、『夏バテにはウナギ!』と宣伝して大繁盛していたので、今からそこに割り込むのは難しいとベッティは思ったようだ。
「安心してくれ。多分成功するから」
「先生は自信があるんですね」
「当然」
そして数日後、俺とベッティは王都にあるローザさんのレストランの前にいた。
このお店はローザさんが経営者で、ベッティの兄は決して経営者ではない、というのが悲しい現実だったけど。
「バウマイスター辺境伯様、ミズホの料理人の方にも指導していただいて新メニューにしたハモ料理ですけど、大盛況ですよ」
俺たちを見つけたローザさんがレストランから出てきて挨拶をしたが、確かにお店の中は混んでいた。
客層を確認すると年配者が多く、実はこれは俺の予想どおりであった。
「ウナギは美味しいけど、脂が多いから年配者には辛いって人もいる」
白焼きなら脂も落ちるので大丈夫だけど、蒲焼きを食べている人たちがいる中で、一人白焼きを食べるのは空しいと思うので、それなら同じ効果があるハモ料理を食べた方がいいと思った老人が多かった。
そういうことだと思う。
少数だが、脂っこいものが苦手な若者、脂を気にする女性も意外と多かった。
「さすが先生。そこまで計算してハモ料理を薦めるなんて」
いつもならここで、『お兄さんとは大違いです』と言うベッティであったが、ミズホ人の料理人よりも先にハモの骨切りを覚えたのは素直に凄いと思うので、これからはこのレストランでハモ料理を出し続けてほしいと思う。




