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突発的短編集

ホワイト・クリスマス

作者: 葱間涼

 12/24。クリスマス・イブ。街は賑やか、みんなにこやかな日。

 本番は明日だけど…前夜の方が盛り上がってる。みんな楽しそう…


「いいなぁー…」


 はぁ…、と大きくため息。みんながとても羨ましい。

 聖夜、は明日か、でもその前日のイブだっていうのに私は、友達(こ、恋人はいない…はぁ…)と遊ぶことも出来ず、一日中塾に軟禁。楽しい今日が、まるで台無しになった。

 やっと塾が終わったんだけど、もう六時。PMで。友達はもう帰っただろうし、まだどこかに居るかもだけど、今から参加する気にもなれない。もう暗いから、街で遊ぶのもちょっと、って感じだし、もうなんかやってられない。MPゼロって感じだよ…

 良い子にしてた私にサンタさんは、微笑んではくれなかったらしい…


「…はぁ…私も楽しみたかったなぁ……。…もう帰ろう…」


 楽しそうな人たちを見てると、気が滅入る。特にカ、カップルとか見ると、爆発しろー、とか思っちゃう。まぁ、したらしたで困るけどね。

 そんなことを考えると、何か悲しくなる。このままじゃ、何か負のオーラ的なものが出そうで嫌だから、足早に街を抜けて、駅を目指す。楽しそうな人たちの横を抜ける度、楽しそうな声が聞こえて、辛い。思わず、「ふふふふふ…」とか、暗い笑い声を上げそうになる…ふ腐ふ負ふ…


「…ん?あれって…」


 暗い声は上げずに、街を歩いてると、人混みの中に、見知った顔を見つけた。その人は、誰か知らない人と一緒に居て、とても楽しそうに笑ってた。私も見たことないような笑顔で。


「…榊くん?」


 見知った顔…同じクラス、私の友達の榊くんは、誰か、とても可愛い女の子と一緒にクリスマスの街を歩いてた。クリスマスに2人で、ということはまぁ、つまりそういうことなんだろう。つまりは恋人、ということで、ちょっと、なんというか…ショックかも。

 まぁ、分かってたけどね。榊くん人気者だし。私はいくら一緒に帰った(相合い傘までしたもん!…はぁ)とはいえ、所詮は友人、の域に居るかも不安だったけどさ…もしかして、なんて期待もちょっとだけあったから(その根拠は、とある雨の日の話を参照で…って、あれ?)、少しガクッ、というか、ボキッ、という感じでちょっとダメージが…ま、まぁ、分かってたけどね(泣)。

 …そんな過去はさておき、そんな楽しそうな2人の横を通り過ぎるのは、なんだか気が引けた。でも、2人の居る方向は、駅の方向で、そこを通らないと帰れない。でも、顔を見られたら、とか思うと進むに進めない。でもでも…なんて、1人でぐだぐだやってる内に、二人が進んで、はいなくて、それどころかこっちを見てる。ななな、なんで?も、もしかしてバレた?


「…ま、まさかねー」


 と呟くと、2人はもうこちらを見てはおらず、何か話してた。

 よ、よかった…、と、すっ、と胸をなで下ろすと、すぐに私はその胸をはね上げた。彼女さん『らしき』人と別れた榊くんが、こっちに向かって歩いてきたからだ。その眼はしっかりと私の方を見てて、何というか、私主観だけど、嬉しそう顔してる。ちなみに後ろの彼女さん『らしき』人は、にやにやとこちらを楽しそうに、そしてこちらも嬉しそうに笑ってる。にししっ、て感じに。…何故?


「おう!雨宮じゃん!どうしたの、こんなところで?」

 

 そうこうしてる内に、榊くんはすぐ近くにまで来ていて、手を挙げて、話しかけてくる。突然の展開で、反応が遅れる。


「こここ、こんばんわ?榊くん?」な、何故に疑問系なの!?


「ん?あぁ、こんばんわ。っていうか、何で疑問系?」やっぱり気になりましたか?何ででしょうね?私もわかりません…


「な、なんでもないよ?うん」また疑問系…あぅぅ…


「また、ってまぁ、いいか。で?雨宮はこんなところで何を?」


「私?私は、えーと、塾の帰り、かな?」1人寂しく、ね。


「ふーん、雨宮は塾行ってんのか。えらいな、お疲れさん」


 そういってニコッ、と笑った。それだけで疲れも吹き飛ぶよ。ついでに負のオーラ的なものも。

 ただ、私はえらくはないと思うよ?ただ成績が芳しくないってだけだしね…

 …あまりこの話はしたくない。私は話を変える。


「う、うん。そ、それより榊くんこそ、彼女さんはいいの?」


 多少違和感あるかもだけど、なんとか話を変える。でも、何もおかしくはなかったはず。大丈夫、大丈夫…でも、榊くんは怪訝そうな表情。何か、変だったのかな…?


「雨宮…あの、彼女、って誰のこと?」


「へっ…?誰って、今一緒に…」


「今…って、もしかしてユミの事か?」誰ですか、それ?


「…えーっと、それって…」


「ん?あぁ、ユミってのは、多分だけど、雨宮の言ってた女の子の事。んで、あいつは俺の彼女、じゃなくて妹だよ」


「へっ?妹さん?」


「そうそう。どうしても欲しいものがあるって言うから、ちょっと買い物に来てたんだよ。まぁ、多分もう帰ったと思うけど、今度機会があれば紹介するよ。あいつ、雨宮に会ってみたいらしいしさ」…なんで私に?

 というより、妹さん、思いっきり後ろにいるよ?こっち見てニヤニヤしてるし。うーん…私、何かしたかなぁ?


「………」思い当たる節は、何も無いんだけど…榊くん、私の事なんか言ったのかな?だとしたら、ちょっと気になる。私、一体どんな紹介されたんだろう…どんな風に…




「…みや、雨宮?どうかしたのか?」榊くんが、声をかけてきた。


「へっ?な、なに?」考えごとしてたから、何も聞いてなかった…榊くん、何か話してたのかな?


「いや、別に何もないけどさ。ぼーっとしてたから…大丈夫か?熱とかあるんじゃないのか?」そう言って私の顔をのぞき込んでくる。そして、手を私の額に、って何、このフィクション的展開!?かか、顔が近い…ヤバイ、ドキドキしてきた…


「ん?ちょっと熱いな…顔も赤いし、やっぱ具合悪いのか?」いや、多分緊張によるものだと思う…というより、顔!手!ち、近いよ!


「あ、あぅ、うぅ…」言葉になってない。落ち着け私。

 深呼吸、深呼吸…


「息、苦しそうだな…やっぱ具合悪そうだ。早く帰った方が良いぞ、雨宮」そう言って、榊くんはやっと離れた。ふぅ…何とか落ち着けそうだ。もう大丈夫だよ。

 でも確かにもう帰った方がいいかも。早く帰んないとお母さん怒るし、『あの子』も…(意味深)


「う、うん。そうするね。そ、それじゃ、またね榊くん」


「また?いや、送ってくぞ?さすがに一人じゃ不安だし、帰らせられ無いよ。具合悪いんだし、もう夜だしな」そういうと、榊くんは何やら携帯をいじくり始めた。何か操作を終え、榊くんがしまうと同時に、後ろの妹さんが慌て始めた。多分、メールしたんだと思う。遅くなる主旨の。


「ほら、行くぞ?」そう言って榊くんは、そっと手を出してくる。…もしかして、手を握れ、ってこと?


「手、だして。はぐれたら危ないから」確かに、周りには人がたくさん居て、ちょっとした事ではぐれてしまいそうだけど…恥ずかしいよ…でも、こんなチャンス、もう無いかも、だし…でも、でも…


 …って私がまごついてる内に榊くんは、私の手を掴んで、ニコッて微笑んだ。ふ、ふぇぇ!?


「ほら、行くよ」そう言うと榊くんは、私の手を引いて歩き始めた。私はおいて行かれないように、合わせて歩く。

 途中で妹さんの横を通った時には少しドキッ、とした。妹さんが何故か笑顔で私のことを見てたから。しかも、何かありそうな怪しい感じで、下なめずりもしてた。ドキッ、というよりゾクッ、とした。

 な、何…?とか考えたけど、何か分かる前に、妹さんと離れてしまった。榊くんは、足を緩めなかったから、気づかなかったみたいだった。視線、結構感じるけどなぁ…


 …その視線を感じなくなった頃には、もう駅に着いていた。…あれ?


「榊くん、家こっちじゃ無いよね…?」そう言うと榊くんはおかしそうに笑った。


「いやいや、普通に家まで送るよ。さっきメールしたし、大丈夫だから、心配はしなくていいぞ。…それよりあれか?迷惑か?」


「う、ううん。ありがとう。じゃ、じゃあ一緒に…」


「おう。じゃあ、雨宮の家まで、レッツゴー!」


「お、おー?」



 何故かノリノリな榊くんと私は、そのまま2人で電車に乗り込んだ。帰りの電車はスカスカで、人が居なかった。

余裕で空いてる椅子に、少し詰めて座る。何故かそうしてた。榊くんはビックリしてたけど、ちょっとしたら、そのまま笑ってくれた。ニコリ、って。妹さんと居た時と同じ笑顔で。嬉しい。

 そのままで居ると、何か安心出来て、次第に睡魔が襲ってきた。寝ちゃダメだ、寝ちゃダメだ、って思ってたのに、電車が動きだすと、絶妙な揺れ具合にやられて、結局寝てしまった……zzz…



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 はっ!?っと気づいて起きると、榊くんが、困ったような顔をしてた。…えーと、私、寝てた?


「あ、あの榊、くん…」


「おう、おはよう。ところで、寝起きで悪いんだけど、雨宮の家ってどの辺?」


「へっ?あぁ、えと…」次の駅を見ると、もう、次で降りる駅に着く。あ、危なかった…


「つ、次の駅で降りなきゃ…」


「ふーん…じゃあ、危ないところだった訳か。もう少しで乗り過ごしてた」


「ご、ごめんなさい」


「ん?いや、気にすんなよ。大丈夫だったんだし。…それにしても迷った迷った。起こさないと降りるとこ分かんないし、でも、気持ちよさそうに寝てんのに起こすのは気が引けたしさ…」いやー、良かった良かった。

 そう言うと榊くんは立ち上がる。もう着くみたいだった。


「さ、もう着くぞ」そう言って榊くんは、笑顔になる。


 よく笑うなぁ…。私は今更ながら、そう思ったのだった。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------------



「…ふーん?雨宮の家ってこの辺なのか…静かだな」街から離れた、この辺の地域は、街の賑やかさなんてものが無くて、とても静かだ。都市部に住んでいる(と思う)榊くんにはとても静かに感じるのだろう。


「うん。もうすぐ着くよ」というかもう見えてます。すぐそこの家だよ。


「ん?ここ?」


「うん。そうだよ」


 2人で私の家を見上げる、ってほど大きくはない。普通の一軒家です。でも、私はこれくらいが大好きだけど。


「…それじゃあ。送ってくれて、ありがとね」


「あ、ちょっといいか?渡したいもんがあるんだけど」


「ん?良いけど…何?」


「ありがとう。あぁっと、それじゃあ、ほら、プレゼント」


「へっ?ぷれぜんと?何の?」私の誕生日、は五月だし…


「何って…クリスマスのだけど…」


「?くりすます?」なんで私に?


「いや、さ、買い物してたら、何かいい感じのものがあったから…プレゼントに、って思ってさ」そう言って照れた様に笑った。…うん。やっぱり良く笑うね。

 そ、それにしても、私にプレゼントって、ちょっと夢みても、っていうか、期待してもいいのかな?もしかして、とか思ってもいいのかな?

 き、聞いちゃおうかな…今回は悪魔が勝ってもいいよね…


「こここ、これって、その、あの、わ、私の為に買ってくれたの……?」そう問うと榊くんは、思いっきり顔を背けてしまった。あ、あれ?違ったの?す、すごく恥ずかしいかも…


「…そうだよ」榊くんはぼそりと何か呟いたけど、ちょっと聞き取れなかった。


「え?」聞き返すと、榊くんは、ちょっと不機嫌そうにこっちを見た。な、なんだろう?


「…だから、それは、雨宮のために買ったんだ、って言ってんの」そう言うとまた、プイッ、と顔を背けてしまった。榊くん、それってやっぱり…


「じゃ、じゃあ俺は帰るから。あんま遅いと怒られるからな」そう急いだ様に言うと、榊くんはそのまま行ってしまう。なんかおいて行かれた気分……よしっ…

 せめて、と私はその背中に言う。


「め、メリークリスマス、榊くん!」

 すると、榊くんはこちらに振り向いてまた笑った。いや、というより、はにかんだ?そして、一瞬何かを考えるようにした後、私に返してくれた。


「メリークリスマス…ハレ」


「!?!!?」


 それだけ言うと榊くんは足早に行ってしまった。走れば追いつけそうではあったけど、なんて聞けばいいのか分からない。


 な、なんで私のこと名前で呼んだんだろ…?


「うぅ…な、なんか気恥ずかしいよ…」言いながらぎゅっ、とプレゼントを抱きしめる。榊くんからのプレゼント…そういえば、中はなんなん…


「くしゅん!…ぅぅ寒い…」本当に風邪になる前に中に入ろう…お母さんも心配してるだろうし…


「ん?あ…雪だ…」


 空からハラリハラリ、って雪が降ってきた。この辺りはあまり雪が降らないから、ちょっと感動…久しぶりの雪だ。しかもホワイト・クリスマス。ちょっと心残りはあるけど…見れて嬉しい。


「………うん。ただいまー」


 たっぷり雪を見て私は、中に入った。家の中はとても暖かかった。なんかほっとした。…まぁ、その後お母さん達に怒られたけど。






「わぁ…まだ降ってる…」

 

 夜、寝る前に窓の外を見ると、まだ雪は降っていて、結構積もっていた。めずらしいなぁー…


「…今日は良い日でした」


 雪も見れたし、榊くんにも会えたし…とても良い日だった。ただ、一つだけ心残り…わがまま、一つ言ってみたくなった。


 サンタさん。お願い事、一つ叶えてください…


「来年は、榊くんと一緒のホワイト・クリスマスになりますように…」


 …そのために、ちょっとでも成績あげなきゃな…はぁぁ……

完全な遅刻投稿ですね。


素人文、読んでくださった皆様、ありがとうございました。

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