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ROG(real online game)  作者: 近衛
二章
36/151

2‐3‐1 Arrive

 

 午後1時、アリーナ内部の控え室にて。

 『水月と愉快な仲間たち』の面々は、どういった意図が働いたのか二つのソファに男女別に腰掛けて向かい合っていた。

 

 「明、あのまま試合が続いていたらミカエルに斬り掛かっていきそうだった」


 「戦う者の精神としては、無理もない話だろう。あれが現在仮想内にいる最強と言われているプレイヤーなのだから、君がそうなるもの無理はない。私だってそうなのだから」


 鏡も震えているのか、少しうつむいて右腕で左腕を抱きかかえている。その様子は、おびえていると言うよりは、抑えきれない衝動に無理やり蓋をしているようにも見えなくもなかった。

 

 「すまないな、二人とも。なんか、体が勝手に動き出しそうな勢いだった」

 

 「なんとなくだけど、今の明じゃあの人には勝てない気がする」

 

 「やってみなければわからない、と言いたいところだが実際に見て俺とはランクが違うとは感じたよ。ただ、死ぬことがない、この大会でなら一度腕試しをしてみたいとは思う」

 

 下を向き、拳を強く握る明。

 その胸にあるのは、久しく味わっていなかった感情、恐れでも憎悪でもないそれは、闘志とでも言うべきか。黒木智樹を越えたいと思っていたあの頃の感情が沸々と湧いてくるような気がしていた。


 「なんにせよ、順当に勝ち進んでいけば合間見えることもあるだろう。私たちの当面の敵は、一回戦で当たる共産主義連合国共同体だろう。ミカエルの攻撃で退場してくれたかと思ったが、チームの誰かが最後まで生きていたらしいな」

 

 「生き残っていたのは、ウー・ヘイフォン。『傭兵(マーセナリー)』で情報屋だ。俺の知っている奴と同一人物なら、こいつはかなり強いよ」

 

 近くで何度も彼の戦闘を見ていた明は、彼に護衛が不要だと感じてもいた。なぜ自分が彼の護衛をしているのかもよくわからかったが、結果的にはいい勉強をさせてもらったとも思う。

 相手としても、単純な戦力としてはそれなりに強い明を普通の護衛の半分以下の学生価格で雇っていたのだから、まんざら理がなかった訳でもない。


 「開始と同時に荷電粒子砲をぶっ放したやつは『護衛(エスコート)』だっけ。こちらは、それなりに有名人だな。そちらの方は、私は聞いたことがないな」

 

 「あれで、『護衛(エスコート)』なのか。まあ、やっていることはほとんど『掃除屋(スイーパー)』の部類だったが、攻撃的護衛といえなくもないな」

 

 「ええと、つまり、相手チームは全員強いってこと?」

 

 「そうだな。エンペラーの奴はなんか得体がしれないし、というか、予選の半数以上のチームを葬ったのはこいつらだろうから。弱い訳はないだろうな」

 

 かなり異常なスコアにも思えるが、その大半は密集地帯へのファーストアタックで稼ぎ出したものだろう。回避不能、防御不可の範囲攻撃ならいくらでも数字が稼げる。


 「いきなりピンチだね」

 

 「まあ、一回戦は一対一の戦闘が三回行われる形式みたいだから、一敗してもいい訳だし何とかなるだろう。というより、対戦カードは既に決まっているみたいだからじたばたしてもしょうがない」

 

 「私がこのエンペラーだったな。面倒くさいが、とっとと片付けるとしよう。少なからず因縁のようなものもあるしな」

 

 「昔の知り合いなのか?」


 「そんなところだ。『魔女』などと言われて迷惑していたよ」


 「それで私は誰が相手だっけ、明」

 

 「水月は、ヘッジホッグの奴が対戦相手だな。正直、こいつには確実に勝ってもらいたいところだ」

 

 「じゃあ、明がヘイフォンさんだね」

 

 「まあ、負けず嫌いが俺の信条だからな。倒すよ、絶対に」

 

 「新城だけに?」

 

 「そういうぼけではないな」

 

 「水月は適度に場を和ませたりしてくれるから、助かるよ。あははは」

 

 控え室にあるソファに倒れこむようにしながら鏡が笑う。

 

 「そうだな、癒されるというか、一緒に居ると落ち着くな。まあ、時間になったらアリーナに転送されるらしいから、現実に帰還しない限りは好きにしてくれていいぞ」

 

 そういうと、明も鏡のようにソファに背中を預けて天井を見上げる。仮想のものとはいえ感覚としては超高級な家具に座っているような状態なので戦闘後の疲れを癒すにはもってこいの代物だった。

 

 「みんなが寝るなら、私も寝るよう。このソファふかふかしていてすごく気持ちいいし」

 

 仲間はずれは嫌な水月であった。


修正祭りじゃー。

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