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ROG(real online game)  作者: 近衛
二章
34/151

2‐2‐4 Elimination  

 

 数分後、一行は同ブロック内のポートエリアに辿り着く。

 『The Book』の機能の一つである時計機能で時間を確認する。

 現在の時刻は11時59分。そして、視界の片隅に見えるアナログのような外見の時計の針が動く。正午、つまりは予選の開始時刻になると三人は同時にポートエリアから強制的に転送される。


――《Translation》(記号変換)――


 そのビジュアルエフェクトが彼らの視界に表示されると、半ば反射的に彼らは祈りを捧げるかのように目をつむり思考する。

 直後に自身の意識体(アヴァター)を構成する情報が上書きされていく。

青い妖精、フェアリー、赤い魔術師、ウィザード、水の巫女たる、ウィンディーネの三体の姿がそこにあった。 そして、三人の姿が、ただの人間のそれから力の顕現(けんげん)たるAAへと形を変えた直後、視界には輝く文字が表示された。


――《Survival》――

 

 つい先日にも見た、あのビジュアルエフェクト。そう、三つ以上の勢力が交戦する際のエフェクトであり、『生き残れ』というのはつまり、文字通りサドンデスの戦闘が幕を開けたということだろう。こうして、予選が開始されるのだった。

 

 「さあ、開戦(オープンコンバット)と行こうじゃないか」

 

 「大会の本戦に参加したければ、力を示せと言うことか。なら、今回は君のサポートに回るとしようか」

 

 「そうだね、私と鏡は遠距離武装があまりないから、生存と仲間の防衛に主眼を置いた方がいいだろうね」

 

 三人の視界に映るのは、古代ローマを思わせる芸術的な建築物、独特の様式で構築された教会や街並み。しかし、この美しい風景は数分後には無数の破壊者たちによって蹂躙されることとなるだろう。

 どんなに美しく映ろうとも、ここは戦場でしかないのだから。

 

 「了解だ、俺は砲撃で数を減らす。水月と鏡はサポートに回ってくれ」

 

 「了解した。君は早々に敵を蹴散らしてくれ」

 

 「わかったよ、明」

 

 基本情報として、初期配置がと残存勢力の現状に関するデータがプレイヤーに行き渡っていた。自分自身の配置と対戦相手の配置は超大型の都市を舞台に中央に複数名と周辺部を囲むように時計の形に並ぶ。

 そして、明たち一行こと『水月と愉快な仲間たち』は、円形の都市で六時辺りの位置に配置されていた。

 

 「まずは、偵察を()ねて上空から位置情報を確認する。散らせるやつがいたらそのまま数を削る。鏡と水月は自衛と位置情報を元に迎撃を担当してくれ」

 

 フェアリーのAAが閑静(かんせい)な住宅街から空へと飛び上がる。

 大人数のジャミングが合算されてフィールドに適用されるのでレーダーは沈黙しているが有視界で同じ考えのフライトユニットが数名程度確認されたが有効射程からはやや遠い。そして、自身から東の方向、時計で言えば三時の位置に煌々(こうこう)と輝くヘッジホッグの砲身を明の視界が捕らえた。


 「あのヘッジホッグ、やばいぞ」


 上空から俯瞰(ふかん)してみえるヘッジホッグの背面部に装備された大型の荷電(かでん)粒子砲(りゅうしほう)がチャージに入っていた。その威力は絶大であるのだが、効果範囲とチャージ時間が恐ろしく長いことから実戦ではあまり使用されない武装でもあった。

 

 「全員、予測射線域を離脱(りだつ)。あいつの射線から離れるんだ」

 

 即座にデータを二人に転送して予測される射線域からの離脱を図る。仮にあのヘッジホッグが開始と同時にチャージを始めたのであれば、まだ数秒程の猶予(ゆうよ)がある。

 

 「了解したわ、明中尉。それにしても、荷電粒子砲なんて普通の戦闘じゃお目に掛かれない兵装を使ってくるのね」

 

 「こういった掃討戦ならあれほど強い武器はないだろう。うっかり、近接戦闘に夢中になっていると横から一掃されるぞ」

 

 「じゃあ、私と鏡は念のためシールドを展開しながら移動するね。それで、明は私たちの後方を警戒して」

 

 大きな水球を自身の周りにいくつも生成しつつウィンディーネが移動を開始する。

 

 「そうね、まずは数が減るのを待ちましょう」


――《Magic circle》(魔方円)――

 

 登録された動きを自動で再現するARM(Auto Response Move――自動対応行動)を利用して瞬時にビットを展開するウィザード。

 鏡の機体を囲うように複数の方陣が配置され虚空を漂う。その二人に追従するように低空をホバリングしつつ移動するフェアリー。こうして準備しておけば、万一こちらに射線が重なったとしても、しばらくは堪えられるはずだった。目下のところ三人はエンカウントを完全に無視して東に向かう。

 予想される射撃の範囲が八時から十時の一帯、それと中央にいるチームは全員巻き込まれることになるだろう。最初からこちらを狙っていなければ当たることはないはずであるが、用心するに越したことはなかった。

 

 「大丈夫だよ、明。きっと、当たらないから」

 

 なぜか確信めいた発言をする水月。根拠なんてなかったが、明と鏡は不思議と彼女の発言はその通りなのだろうと信じることができた。

 

 「とりあえず、私の『神眼』で確認したところ非難している間にエンカウントはしないで済みそうだ。データをリンクするから参考にして」

 

 移動しながらもやることはいくらでもあった。しかし、戦闘が始まってから時間は一分と経っていない。

 

 「さあ、神聖なる戦場に不適格な者たちには退場を願いましょうか。この私が、直々に排除してあげますよ!」

 

 会場一帯にオープン回線を通して(あざけ)るような声が響く。初期配置から察するに操縦者は、共産主義連合国共同体の一人であるグリゴリー・ドゥヴァ。

 そして、その声が聞こえた直後に、フィールド全体を貫くかのように金色の光の奔流が迸る。

 視界に映る荘厳(そうごん)な建造物が融解し蒸発していく。直後に現れるのは無数の蒸気となって散っていく何十人もの参加者と何もない荒野だった。



あとちょっと行きます。

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