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心強いサポート

「彼女…!さっきまでとは、まるで別人だわ…。

ほんと、彼が言ってた通り。撮られるより撮ってる時の方が格段にいい顔してる。

って言うか…自分がモデルだってこと、すっかり忘れちゃってるようね(笑)」


「はい、そのようです(笑)

でもプロフェッショナルだし、アクティブで美しいですねぇ。輝きが倍増した。

そのお陰でドレスの表情までもが、チャーミングだったりセクシーだったり

変化して見える。

ポスターの仕上がり的には、相当面白くなりそうですよ。」


「そうね。それにあの彼もいいと思わない?美しくてクールでセクシーで。

スタイルも抜群だし、あそこまでうちのスーツを着こなすとは思ってもみなかったわ。

それにバックショットだけなのに 、背中で顔の表情が解る感じ?

上手い役者の演技を見てるみたい。一枚の繊細な絵のよう…。」


「ただのマネージャーなんですかね?モデルの経験でもあるのかな?」


「ねぇ。うちのメンズ部門…この後レディスに続いてアジア強化に乗り出すって話よね?

…どう思う?彼。」


「さすがボス!閃きましたね(笑)いいんじゃないですか?

オーディションの手間も省けるし、彼ならイケルと思います。」


「よしっ!決まり♪」


腕組みして撮影を見守るクライアントが、まさかそんな会話を交わしてるとは。

健人と雪見は想像すらせずファインダー越しに見つめ合い、二人の世界に没頭していた。


「はい、OK!衣装チェンジお願いしまーす!」


「えっ?あのぅ…今ので良かったんですか?

私ったら、すっかり撮られてること忘れちゃって…。」


カメラマンの声で我に返った雪見は、「またやっちゃった。」と健人に首をすくめる。

健人は、そんな雪見が可愛くて「ドンマイ。」と笑って頭をポン。

そこへ広報担当のブロンド美人が、満足げに微笑みながら近づいて来た。


「いいのよ、あれで。お陰で素敵な仕上がりになりそうだわ。

あ、それとマネージャーさん。次のカットにもご協力頂けるかしら?」


「えっ?次も…ですか。」


雪見の緊張がほぐれるまでのワンカットだけと思ってたので、予想外の依頼に戸惑った。

大好きな人との撮影は楽しいし、たとえ休日中であろうと自分はまったく構わないのだが、

なんせこれは斉藤健人としての正式な仕事ではない。

果たして事務所的には大丈夫なのか?と心配になり、今野に目を向ける。

すると今野は、渋い顔ながらも『やってやれ。』という風に顎をクイッと突き出した。


まぁ、渋い顔の原因は、ブロンド美人が明らかに『あなたじゃなくてイケメン君の方ね。』

という顔して「マネージャー」と発したことに他ならないのだが。


「あ…僕でいいなら喜んで。」


「そう!良かった。じゃ、あなたも着替えてきて。

次に用意したスーツは、うちのトップデザイナーがアジアを意識して作った新作なの。

きっとあなたなら、素敵に着こなしてくれるはずよ。

あ、勿論、ちゃんとギャラはお支払いしますから(笑)」


「はぁ。新作…ですか。」


言われるがまま着替えてスタジオに戻った健人だが、ふと『何してんだろ?俺。』

と自分が笑えた。

でも、隣で雪見が嬉しそうに顔を見上げてる。それが何より愛おしく嬉しい。

よし、こーなったら本気モード全開!どんな時も、どんな仕事も全力投球。

それが斉藤健人だから。



「はい、じゃあユキミはカメラ片手に持ったまま、ケントのソファーの後ろに立って!

あ、やっぱ背もたれに腰掛けられるかな?」


「こんな感じですか?」


「そうそう、いいよ!ドレスの裾、少しだけ持ち上げてみて。

OK!二人とも視線はこっちね!」


健人がすぐそばに居ることで、雪見はスムーズにカメラマンからモデルへとシフトチェンジ。

かつて『ヴィーナス』で撮られてた時の勘をすぐ取り戻し、健人と二人で

息の合ったポーズを決めていく。


ポスター撮影をトントンと終えた後は休憩を挟み、引き続きCM撮影へ突入。

これにもナゼか健人は駆り出され、結局全編に関わって長い一日を無事終えた。


「はい、OK♪今回の撮影はすべて終了!お疲れ様!」


「…えっ?あ、お疲れ様でした!ありがとうございました!」


すっかり入り込んでた世界から現実へと意識が戻り、雪見が慌てて挨拶すると

スタッフから拍手と歓声が沸き上がり、大きな花束を贈られた。

健人も嬉しそうにスタッフやカメラマンと握手。

保護者の気分で「これからもユキミをよろしくお願いします。」と彼らに今後を託した。



「ゆき姉、帰ろ。俺、めっちゃ腹減ったぁ!なんか旨いもん食いたい。 」


一足早く着替えて待ってた健人は、雪見が「お待たせっ!」といつもの格好で

メイク室から出て来ると、やっと元通りの二人に戻れた気がして甘えたくなった。


「そうだね。私もホッとしたら、めちゃめちゃお腹空いてきた!

うーんと美味しいもの、食べよっか。どこに行こう?」


「よしっ!今日は俺のおごりだ!雪見も頑張ったし、健人には世話になったからな。

何でも好きなもん、食っていいぞ!酒もたらふく飲ませちゃる!」


今野がやけに気前よく張り切ってる。

雪見は『珍しいこともあるもんだ。』という顔で今野を見たが、健人にはお見通しだ。


「それって、もしかして常務への口止め料ですか?英語がダメだったことの(笑)」


「バレたか(笑)。頼むから常務にだけはチクらないでくれよぉ!

部長職を蹴ってまで志願したのに、これじゃ大目玉喰らうって。

次回までには全力で勉強しますから、どーか今回だけは見逃して下さい!」


「ゆき姉、どうする?まぁ、ご馳走になりながら考えよっか。」

「うん、そうだね。ご馳走次第ね。」


「おいっ!それはないだろ?何ご馳走したら内密にしてくれるんだ?

とんでもなく高い店は勘弁してくれよ。役職手当てが無くなって給料下がるんだから!」


雪見と健人が今野をからかい、ゲラゲラ笑いながら手を繋いで歩き出す。

と…。


「待って!まだ帰らないで。大事な話があるの。」


後ろから誰かに呼び止められた。

三人が一斉に振り向くと、そこには書類を手にした広報担当のブロンド美人が、

スーツ姿の長身イケメンを従え立っている。


顔を見合わせた雪見と健人は「大事な話」という言葉に、鳴りそうなお腹を差し置いて

ドクンと心臓が大きく鳴った。












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