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昔の関係

「ようこそ!マナブ先生。

あなたに会える日を、家族全員心待ちにしてましたよ!

今日はご無理を聞いて頂いてありがとうございます。」


「とんでもないです。こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。」


お互いが初対面であるにも関わらず、大統領と学は久しぶりに会った知人同士のように

ごくナチュラルに握手をし言葉を交わす。

学ファンだと言う大統領夫人のミシェルと二人の愛娘も、嬉しそうに学と握手した。


「こちらのお美しい方をご紹介下さいますか?マナブ先生。」


大統領の言葉に、雪見の緊張はいきなり頂点に達した。

それは、にこやかに目の前に立つアメリカ大統領に対して…ではなく、

学が自分の事を何と紹介するかという、最大の懸案事項に対してである。


「彼女は…僕の大学時代の友人でユキミと言います。

同じゼミで学んだ仲間ですよ。今日は僕の実験助手として手伝ってもらいます。」


望んだ通りの紹介をしてくれたのでホッと胸を撫で下ろし、雪見も笑顔で握手を交わした。


「本日はお招き頂きありがとうございます。

日本でカメラマンをしているアサカユキミと申します。

これ、私が撮った猫の写真集なんですが、もしよろしければお嬢様たちに…。」


そう言いながら雪見は、リボンを掛けた小さな写真集を二人の娘に差し出した。

健人の実家の猫、コタとプリンの写真集である。

「わぁー可愛いっ!!ありがとう!!」


動物好き一家の小学生と中学生の娘たちは、キャーキャー言いながらそれを胸に抱き締めた。

喜んでもらえて良かったぁ!と雪見がすっかり油断したその時である。


学がまたしても雪見の腰に手を回し、グイッと自分に引き寄せるではないか。

そして暗に親密さを匂わせるかのように、意味ありげな笑みを浮かべて

訳のわからぬ事を言った。


「あぁ、彼女は日本が誇る歌姫でもあるんですよ。

後ほど大統領に、素晴らしい歌のプレゼントがあるそうです。」


「それは楽しみだ!期待してますよ。では後ほど。」


「…えっ!?」



きらびやかなホールには、ヴァイオリンが奏でる四重奏が心地よく響き、

グラス片手の人々が楽しげに談笑してる。

そんな中、学はホール隣の部屋で忙しそうにサイエンスショーの準備を進めてた。


「もぅ!なんであんなこと言ったのよー!誰が、日本が誇る歌姫よ!

私が詐欺で国際手配でもされちゃったら、どーすんの!?」


「いーから早く手伝え!喋りながら準備してると重大な事故に繋がるぞ!」


「は、はいっ…。」


学の言葉に、雪見は一瞬で口を閉じた。

大学時代、実験の準備中に仲間が起こした事故を思い出したのだ。


それから雪見は学の指示のもと、従順に真剣に作業を進める。

昔を思い起こしながら作業するうちに、いつの間にか二人はあうんの呼吸を取り戻してた。

そう、恋人同士だったあの頃のように…。


「OK!準備完了だ。じゃあ、上にこの白衣を着てスタンバイするぞ。

…うん。やっぱり雪見には白が良く似合う。」


「白じゃなくて白衣が、でしょ?(笑)

そういや昔も、ブルーの服の上に白衣を着てたっけ。懐かしいなぁ…。

ま、こーんな高いドレスの上には着なかったけどね。」


そう言って笑う雪見はあの頃と同じ笑顔で、学の心をあの時と同じにキュンとさせた。

抱き締めたい衝動を必死に取り繕い、テレビでの顔を取り戻す。


さぁ!全米で人気の、サイエンスティーチャーマナブの登場だ!


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