表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/443

HappyBirthday健人!

「あー、気持ち良かったぁ!石垣の砂浜で歌ってる自分が見えた。

なんだか竹富島の夕日が見たくなっちゃったな…。

うん、あなた達にお願いして、ほんとに良かった!」


歌い終え、我に返った雪見はそう言いながら振り向き、五人に向かって嬉しそうに微笑んだ。

五人にとってそれは最大級の賛辞に等しく、みなハイタッチして喜んでる。

そこへ翔平を先頭に、健人と当麻がやって来た。


「ねーねー、俺知ってる!この人達、沖縄のライブハウスの人達でしょ?

この人達がゆき姉のサポートメンバーなの?それって凄くね?」

突然現れたように思えた翔平らに、雪見はもちろん五人組も驚いた。


「えーっ!?なんで翔平くんがここにいんのぉ!?」


「わざわざ陣中見舞いに来たのに、なんではないでしょー!

俺、ゆき姉の最後のライブは絶対見届けたかったんだけどさ、

あさってから映画の撮影で香港なんだ。

だから健人に頼んで、無理矢理くっついて来たってわけ。

ほいっ!前にゆき姉と撮影で行ったカフェの、うんまいワッフル!

みんなの分もあるから、後で食ってねー。」


「あ、ありがとうございますっ!!やっべぇ、本物だぁ!」

五人は、初めて間近で見る人気イケメン俳優三人に、顔を紅潮させて緊張してる。


「健人くんと当麻くんも、お疲れ様っ!」


みんなが健人と雪見に注目してるのを視線で感じる。

なので、さらっと決まり文句を口にはしたが、内心は会えて嬉しいに決まってた。

それは健人とて同じで、二人は合わせた一瞬の瞳で思いを届け合う。

本当はすでに公認の仲なのだから、誰に遠慮もいらないのだけれど。


「ね、紹介してよ!俺らの新しい仲間。あ、三ツ橋当麻です。

俺らの曲にも出てくれるんだよね?今の聞いたら、めっちゃ高まった!よろしくっ!」

そう言いながら当麻は、一人ずつに自ら握手を求める。

その後から健人もみんなと握手をかわした。


「ありがとうございますっ!タクです!よろしくお願いしますっ!」

「ユウです。」「マサキです。」「コーヘイです!」「シンタロウです!」


五人が挨拶し終えるのを待ち構えてたかのように、総合プロデューサーから声がかかる。

「はい!じゃあお次はSJいってみようか!」




そうしてスタジオでの最終チェックも時間の許す限り繰り返され、沖縄の五人組は

健人や当麻と年が近いこともあって、終わり頃にはすっかり意気投合。

今度一緒に飲みに行く約束をして、健人が一足先に次の現場へと移動しようとしたその時!

突然パチンと照明が消え、スタジオ全体が真っ暗闇になってしまった。


「え?えーっ!?停電??なに?ブレーカーが落ちたの?」


辺りが騒然となる。当麻が一人で右往左往してる。

とっさに健人は隣の雪見に手を伸ばし、「大丈夫だよ。」と冷静に声をかけて安心させ、

ギュッとその手を握り締めた。


と、そこへ「ハッピバースディトゥユゥー♪ハッピバースディトゥユゥー♪♪」

の歌声と共に、とっくに現場へと戻って行ったはずの翔平が、ろうそくをたくさん灯した

大きなデコレーションケーキを手に、そろそろとスタジオに入って来るではないか。

次第に周りのみんなも歌声に加わり、健人と雪見の周りには大きな人の輪が出来上がった。


「な、なに!?どーゆーことっ!?翔平、とっくに帰ったんじゃなかったの?」


「いーから、いーから、まずは消せって!ろうそくが垂れてケーキが食えなくなるっ!」

笑いながら翔平が健人に言った。「みんなからのサプライズだよ!」と…。


翔平が手にしたケーキのろうそくを、健人が一息に吹き消す…つもりだったが、

22本のうち2本だけが消えずに残ってしまった。


「だっさーっ!!しょーがねーなぁ!

ねぇ、わざと?わざと残したんでしょ?ゆき姉と一緒に消そうと思って。」

翔平の言葉に、周りの連中がヒューヒュー!と、健人と雪見を冷やかす。


「んなわけないだろっ!」

「そうよ!どうやったらわざと二本だけ残せるのよっ!」


今だ暗闇の中、たった二本の細いろうそくだけがゆらゆらと揺らめいて、

健人と雪見の顔をぼんやりと映し出す。

その顔は言葉とは裏腹に、明らかに笑顔であった。


「いいから早く二人で消しなさいって!ろうそくが垂れるっつーの!」

今度は当麻が二人を促した。


「しゃーない!じゃあ、ゆき姉一緒に消すよ!せーのっ、ふぅーっ!」


健人と雪見は暗闇の中、顔を見合わせ照れ笑いを浮かべてた。

するとその瞬間スタジオの照明が付けられ、みんなから一斉に

「健人くん、お誕生日おめでとー!!」と、クラッカーが鳴らされた 。


「あざーっす!どうもありがと!めっちゃ嬉しいです!」


ろうそくの明かりだけじゃ気付かなかったが、翔平が手にしてるバースディケーキは、

生クリームが苺のクリームらしく、全体が可愛らしい薄ピンク色をしている。

上には艶々の苺がこれでもかと並べられ、ピンク色の食べ物にそそられる健人には

夢のようなケーキだった。

しかしそれもさることながら、チョコレートプレートに書かれてるメッセージに

目が釘付けになり、思わず胸が熱くなる。


『Happy Birthday 健人 みんな君たちが大好きさ!』



「君が」ではなく「君たちが」…。


健人の誕生日ケーキであるにも関わらず、雪見のことも気遣ってくれた。

そうか…。このケーキは、俺たち二人を祝う意味も込められてるんだ。

そう気付いた時、健人は仲間達のさり気ない優しさに感動し、目が潤んできた。

雪見もそのメッセージの意味を理解し、ポロポロと涙をこぼしてる。


「みんな…。ありがとう!今までで一番嬉しいバースディケーキです。」


健人が精一杯の笑顔で、当麻や翔平を始めスタッフ全員に頭を下げた。

笑っていないと泣きそうになるから…。

みんなに祝福され愛されて、この上ない幸せを噛み締めている。

健人は隣で泣いてる雪見の頭をよしよし!と撫でてから、ぐいっと肩を抱き寄せた。

そしてみんなの前でこう挨拶したのだった。


「俺と雪見のこと、これからもどうぞよろしくお願いします!」


そう頭を下げた健人にビックリしながら、慌てて雪見も頭を下げる。

初めて私のこと、「雪見」って呼んだ…。



それはまるで仲間内でのウェディングパーティー会場で、最後に参列者に挨拶する

新郎新婦のごとく、な光景だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ