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突然の再会

「おばさん、お久しぶりです!」


「まぁ、ゆきちゃん!よく来てくれたわ。

何年ぶりかしら。立派なお嬢さんになっちゃって。」


「うちのおばあちゃんが亡くなってからだから、もう十年になるかな?

だから、とっくにお嬢さんじゃなくなりました(笑)」


「なに言ってるの。自分でお仕事して食べてるんだから、立派なお嬢さんでしょ。

つぐみー!ゆき姉ちゃん来てくれたよ。降りといでー!」



とんとんとん、と階段を下りてくる軽やかな足音。


「え〜っ!つぐみちゃんなのぉ?

前に会った時には、こーんなに小さかったのに。

すっかり綺麗な、今どきの女子高生になっちゃって!」


「やだなぁー。前に会ったのは私が小学二年の頃でしょ?まだ子供だったもん。

ゆき姉ちゃんは昔と何にも変わってない。若いよ!」


「あらまぁ、ありがと ♪

お世辞も言えるなんて、もう立派な大人ネ。」


そう言って、みんなで大笑いした。





仏壇の前に座り、ちぃばあちゃんの大好きだった芋ようかんと一冊の写真集をお供えし、そっと手を合わせる。



ちぃばあちゃん、ごめんね。こんなに会いに来るのが遅くなって…。

今までありがとね。父さんが亡くなってから、ずーっと私たちのこと、気にかけてくれてたよね。

それなのに私、なんの恩返しも出来なかった…。



涙が溢れて溢れて仕方なかった。

あんなにも可愛がってもらったのに、ここ十年は顔も見せずにいて、最後のお別れさえ伝えてないなんて…。



もう天国で、うちのばあちゃんや父さんと会えたかな。

この写真集ね、みんなの大好きな猫がたくさんいるよ。

私が沖縄で、一生懸命撮してきたの。

父さんにも見せてやってね。


これからも私、仕事頑張るから。

お嫁には行き遅れるけど、まだまだ撮りに行きたい所たくさんあるから。

また新しい写真集作って見せにくるよ。

だからずっと私たちのこと、見守っててください…。



心から合掌し、涙を拭いてみんなの集まる居間のソファーへと腰掛ける。

すると、今までどこかに隠れてたらしい二匹の猫が静かに近寄り、ピョンと膝の上に飛び乗って毛づくろいを始めたではないか。


これには、この家の誰もがびっくり!


「ゆき姉ちゃん、あり得ないよ!

虎太郎もプリンも、初めて会う人の前には出てこないんだから。

しかも膝に乗るなんて、絶対ありえな〜い!

早くお兄ちゃんに教えなきゃ!」


そう言いながら、つぐみはケータイを私に向け、誰かに写メを送信した。



ここの家族は根っからの猫好きで、猫がいなかった時期はないらしい。

そのほとんどが、目も開かないうちに捨てられた仔猫だったり、保健所から引き取った野良猫だったり。

昔はペットショップから買った純血種を飼ってた時期もあったそうだが、その猫が天寿を全うして以降、店から買うことはしなくなったそうだ。


人間の金儲けのため次々と繁殖させられ、いいように値段をつけられる犬や猫たち。

ブームになれば何十万もの値がつき、ブームが去って売れ残れば保健所で殺処分する。

みな同じ重さの尊い命のはずなのに、人間に命をもてあそばれる可哀想な生き物たち。

その実態を知ってから、ペットショップへは行かなくなったと。


私も同じ。

あんなに好きだったペットショップ巡りをしなくなった。

そこにいる犬や猫たちが、哀れで哀れで仕方なかった。




そんな話をしながら、私の撮った写真集をみんなで見ていると、玄関ドアの開く音がして誰かが居間に入ってきた。


「嘘だろ⁉︎ 虎太郎とプリンが、ホントに膝に乗ってるよ!

なんだよ、お前ら。その変わりようは(笑)」


そう言いながら、ケータイ片手に部屋に入ってきた男の顔を見て、私は自分の目を疑った。



う…そ ⁉︎

この人、昨日ドラマで見た人にそっくりなんだけど!



ビックリし過ぎて、心臓が口から出てきそうになった。




普段はニュースと天気予報、交通情報を見るためにしかテレビはつけない。

ドラマや映画は全く興味なく、最近の芸能人など浦島太郎並みに知らなかった。


だが昨夜は、我が家に飲みに来てた友人二人が、どうしても毎週見てるドラマが見たい!とテレビのスイッチを入れた。


「ちょっとぉ!今日は私のお祝いに来てくれたんでしょ?仮の出版記念パーティーなんでしょ?

だったらドラマなんて、帰ってから見なさいよ!」


「もちろん、録画したのも見るよ。

でもファンなら、リアルタイムでも見なくちゃねぇ。」


「そうそう!今どきこのドラマ見てない人なんて、雪見ぐらいなもんだよ?

いいから、あんたもここに座ってしっかり見ておきなさい。 明日にはお肌、潤ってるから。」


「なによ?それ。」


「いーから、見ればわかるって!」



そう言われて無理矢理見せられたドラマには、若い俳優たちがウジャウジャ出てた。

すでに話は終盤に差し掛かってるらしく、話の内容はさっぱり理解できなかったが、数いる若手俳優の中に一人だけ、 ひときわ輝く一番星みたいな人を見つけた。


「ねぇねぇ。この人、何ていう人?」


「シィーッ!今いいとこなんだからっ!」


「ねぇ、なんて名前?」


「もーぅ!肝心なセリフ聞きそびれちゃったじゃない!

ケントっ!斎藤健人ってゆーのっ!

今、ぶっちぎりの人気俳優なんだから。」



斎藤…健人?

ちぃばあちゃんちの健人くんと同姓同名だ。

でも健人くんが俳優になったなんて話、一言も聞いてないし…。まさかね。

大体、こんなイケメンじゃなかったもんね、十年前に会った時は。

まぁ、あの頃は小学生のおちびさんだったけど。


でも この人…この中でダントツに輝いてる。

絶対この先、すごい俳優さんになるはず。


こんな整った顔立ちの人なら、ポートレートの苦手な私にだって、きっと上手に撮れるんだろうなぁ。


いつかこの人を撮してみたい…。


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