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思いがけない雪見ファン

「えー、ほな本日のゲストを呼ぼーか、どーしよか考え中!」


「どっちやねん!はよ呼べーや!

ゲストの二人は、これからライブがあるんやから、忙しいねんて!

見てみぃ!お客さんの冷たい目!とっとと紹介せんか、ボケぇ!言うてるて。

もうええわ!わしが呼んだる!

本日のゲスト、日本一のイケメン俳優、斎藤健人くんと、今、巷で赤丸急上昇中の

カメラマン兼アーティスト、浅香雪見さんですっ!どうぞー!!」


紹介されてセットの扉を開け、二人でスタジオに足を踏み入れた途端、

観覧席からは、本人達はもちろん共演者、スタッフも驚くほどの悲鳴と

大きな歓声が巻き起こった。


大阪出身の超人気若手お笑いコンビがMCを務める、全国放送の午後のバラエティー番組。

その冒頭のワンコーナーに、生ゲストとして登場した健人と雪見は、

のっけから東京とはまるで違うスタジオのノリに戦々恐々、すでに及び腰である。


「ちょっと、お二人さん!別に取って食おうってわけやないんやから、

そんなビビらんくてもええやんか!まぁどうぞ、座って下さい。

しっかし斎藤くんは、いつ会うても爽やかでカッコ良すぎやなぁ!」


「お前のその挑戦的な目つき!ごっつ、いやらしいでぇ!

なんで日本一のイケメン俳優に、ライバル心剥き出しにしとんの!

ほんま、すんませんねぇ!じゃ改めて紹介します。日本一の…」


「あの、普通に斎藤健人でいいです。よろしくお願いします!」

健人が苦笑いしながら、二人を取り囲む出演者達にペコリペコリと頭を下げる。


「あれ?日本一って言われるの嫌い?世界一の方が良かった?」


「だから、いやらしいて!やめとき!ほんま、すんません!帰らんといて下さいねっ!

それより隣のべっぴんさんを、はよ紹介せんと!」


「そうやった!いつまでもイケメン、いじっとる場合やない!

俺にとってのメインゲスト、浅香雪見さんでーす!どうも初めまして!

お近づきのしるしに、これどうぞ!」


「なに、いきなりアドレス渡しとんの!

あ、これ、僕のケータイの番号です!もらって下さいっ!」


「お前もかっ!どーりで挙動不審なわけや!」


「いや実はですね、僕たち二人とも、浅香さんのめちゃくちゃファンなんですよ!」


「えーっ!そうなんですかぁ?ありがとうございます!

初めて芸能界の方にファンだって言われました!ビックリです!

ありがとうございますっ!」

雪見は驚きながらも、とても嬉しそうに頭を下げてお礼を言った。


それを隣で見ている健人も、自分の事のように嬉しかった。

一気に緊張が解け、何度かテレビで顔を合わせたことのある二人を相手に、

滑らかにトークに参加し出した。


「ゆき姉のファンって、結構レアですねぇ!

ほんと、この世界では俺と当麻ぐらいしか知らない!」

そう言って健人が笑うと、すかさず二人も笑ってうなずいた。


「でしょ?俺らもそう思うてるもん!マニアックなとこ、突いてるなぁーと。」


「何がきっかけでゆき姉を知ったんですか?」

健人が、興味津々といった顔で、身を乗り出して二人に聞く。


「僕らの猫好きは結構有名な話なんですけど、ファンから浅香さんの

猫の写真集をもらいましてね。きっかけはそこなんです!

…って、なんで俺らがインタビュー受けとんのや?ゲストはそっちでしょ!

けど、どうせやから喋らせて!

その写真集がめちゃ気に入って、それから速攻全部買い揃えたんですよ。」


「ほんとですか?それ、すっごく嬉しい!」

雪見は子供のように、手を叩いて喜んだ。


「で、どないな人が写したんかなぁ?思うてるとこに、これも奇蹟としか

言いようがないんやけど、たまたま乗ったタクシーで、三ツ橋当麻くんの

ラジオがかかってて…。

そこで浅香さんが『涙そうそう』を歌うてはったんですっ!

もう、車ん中で不覚にも泣きました!タクシーの運ちゃんに白い目で見られながら。

そっからの大ファンです!今日のライブも、もちろん行かせてもらいます!」


「そうなんですかーっ!?うわぁ、嬉しい!三人でお待ちしてます!」


「あ、斎藤くんのブログも、たまーに見とるよ!

ゆき姉の写真が、アップされとる事があるから。

今日のライブも、まぁ、ゆき姉目当てやけど、斎藤くんと三ツ橋くんも

ついでに見といたる!」


「あざぁーっす!なんにしても嬉しいっす!」

健人は、何を言われても終始ニコニコと上機嫌である。


しかもこのお笑いコンビ、相当な雪見ファンであるらしく、事あるごとに

雪見を持ち上げては健人を落として笑いを取りつつ、まだまだ認知度の低い雪見をぐいぐいアピールしていった。


スタジオの隅で、健人のマネージャー及川と共に見守っていた今野も、

この様子には驚いた。


「まさかあの二人が、ここまでの雪見ファンだとは…。予想外の展開だな!

どう考えても今日のメインは健人のはずなのに、雪見も同等に扱ってくれてる。

俺としては大層有り難いが、視聴者的にはどうなんだろ…。」


「いや、大丈夫じゃないっすか?

健人に対して毒を吐いてるようにも見えるけど、実はワンセットで応援してくれてる。

俺にはそう見えますけど…。」


及川の言う事は当たってた。

次々スタジオに送られてくるファクスやメールには、『今日のライブが

益々楽しみになりました!』とか、『今度、当麻くんのラジオにみんなで出て欲しい!

ほろよいトークとか、めっちゃ楽しそう!』と言った好意的な内容が続々届いた。


そうして話が弾むうちに、このコーナーの締めくくり。

毎回ゲストに思い出の一曲を歌ってもらうのだが、健人達が選んだのは『WINDING ROAD』。

当麻の歌うパートが予め録音されてるカラオケで、二人はいつものように

最高に息の合った歌声を披露し聴衆を大いに湧かせ、名残惜しそうにスタジオを後にした。


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