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当麻が結婚っ!?

「う、うそだろっ?だってお前ら、付き合いだしてからまだ一ヶ月も経ってないじゃん!

どう考えても早すぎるだろっ!」


健人が唖然として、声が上ずっている。

雪見は心臓がキュンと縮まって、声も出なかった。

が、当の当麻は…。


「え?俺、今すぐするなんて一言も言ってないけど!なに二人して早とちりしてんの?」

平然とした顔で笑ってる。


「当麻〜っ!おっめ〜なぁ〜!!」

健人が当麻の頭をポカッと殴りながらも、どこか安堵した表情を見せた。


「ほんと!今の言い方はさぁ、絶対すぐに結婚するって言い方だったから!

もーう!ビックリさせないでよぉ!」

雪見も、なぜかホッとしている自分に気がついた。

もし本当にそうだったとしたら、私はすぐに祝福の言葉を掛けてあげられただろうか…。


「ねぇ。じゃあ、いつの話してんの?もう日取りとか決めたわけ?」

一呼吸置いて落ち着いてきた雪見が、呑気にワインを飲んでる当麻に聞いてみる。


「いいや、ぜんぜん!ただ、結婚するってことだけは決めたよ。

お互い、人生のパートナーを見つけたってわけ。」

そうい言って当麻が微笑みながらみずきを見ると、みずきも嬉しそうに少しはにかんで当麻を見た。


「どこまで行っても気持ちは変らないって確信出来るから、別に今すぐじゃなくていいんだ。

二人の仕事の都合とか今後の予定とか、色んなこと考えて一番いい時期にするつもり。

ほら今ってさ、割とみんな先に籍を入れて、後から式を挙げるってパターンが多いじゃん?

俺ら、そうじゃないんだよね。式で永遠の愛を誓ってから、神父さまや

みんなの前で婚姻届に署名したいわけ。なぁっ!」

またしても二人は目を合わせ、にっこり笑ってうなずいた。


そのあまりにもラブラブモード全開な二人に、健人も雪見も次の言葉が出てこない。

こんなにも当麻って、堂々と恥ずかしげもなく愛を語る奴だっけ?

聞いてるこっちの方が恥ずかしくなるのは、なんでだ?


「あ、あのさぁ…。何て言ったらいいのかわかんないけど…。

取りあえずは、めでたい話ってことで、まぁ飲もう!あー喉乾いた。」

健人がぬるいビールを一気に飲み干し、すぐにワインも飲み干した。


「そ、そうだね!二人ともおめでとう!

ごめんね、なんかあまりにも驚いちゃって、失礼だったね。

もちろん式には私達、呼んでくれるよね?

あ、話聞く前に、私マスターに冷たいビールもらってくる!」

雪見は一旦頭を冷やすために、その場を離れたくなった。


「マスター、ビール四つ!はぁぁ…。」

カウンター前の椅子に腰掛けた途端、ため息をついて突っ伏した雪見に

マスターは怪訝そうな目を向ける。

クリスマス十日前の店内は、週半ばの水曜日十二時過ぎであろうとも、

浮かれ気分で賑やかだった。


「どうした、どうした!?随分とお疲れモードじゃないか!

まぁ、宇都宮さんの葬式以来、すっかり売れっ子カメラマンだもんな。

そろそろ疲れも溜まってきたか。」

ジョッキに美味しそうな泡を作りながら、マスターは雪見の顔色を見る。

「それもあるよね…。きっとそうだ。そのせいなんだ、こんな気分…。」


雪見は、今のなんとも得体の知れない心のモヤモヤを、マスターの言った通り

疲れのせいだと思い込みたかった。

そうでもしなければ、当麻たちの元へ戻る気力も湧いてこない。

どうしてなんだろう…。


「上がったよ!持っていこうか?」


「ううん、大丈夫。それくらいの力は残ってる。

あ…。ねぇ、マスターは奥さんと知り合ってから、確か一ヶ月くらいで結婚したよね?

結婚ってそんなすぐに、お互い決めちゃうもん?」


「はぁ?まぁ人それぞれだろうけど、俺たちは付き合いだしてすぐに、

こいつが運命の人だ!ってお互いが思ったからよ。

もう後にも先にも、そいつ以上の出会いはないって思うから、別にいつ結婚しようが

時期なんて関係ないわけ。だったら早くに一緒になりたいだろ?

いや、まだこの先いい出会いが待ってるかも知れないぞ!なんて思ってたら

結婚までの道のりは遠いよな…。

って、なに?いきなりのこの質問!俺も大まじめに答えちまったじゃないか!

ビールの泡が消えちゃっただろっ!」


「あぁ、いいから自分で入れてく!ほら、お客さんだよ!」

雪見は慌ててサーバーから泡だけを継ぎ足し、そそくさとその場を立ち去った。


ばっかみたい。私ってば、なに聞いてんだろ…。

でもマスターが言ってる事って、当麻くんと同じ事だよね。

じゃ、私と健人くんって…。



「誰か開けてぇー!」

本日二度目の叫び声。今度は健人が開けてくれた。


「さっすがゆき姉!力あるぅ!」

四つのジョッキを持った雪見を見て、当麻が感心してる。


「フリーカメラマンはね、一人で重たいカメラバッグを背負って、どこでも

行かなきゃなんないから、力持ちになんのっ!

そんな事よりみずきさん、『秘密の猫かふぇ』いつから再オープンするのか

目処はついてるの?」

雪見に、もう当麻たちの結婚話の続きを聞く勇気はなくなってた。


「うん。近々会員にはご案内を出すんだけど、クリスマスを予定してるの。

今、支配人が中心になって、里親に預けてた猫ちゃん達を集めて回ったり、

再度従業員研修をしたりして、準備は進んでるみたい。

父の意向で今回もオーナーは正体を現さないから、私がやることと言ったら

資産の運用と、新しく保健所から迎える猫と暮らして、最初の躾けをする事くらいね。

でねっ私、猫の世話するために津山の家を出て、宇都宮の家で暮らすことにしたの。当麻と…。」


「ええーっ!?ほんとにぃー!?」


みずきは、照れながらも嬉しそうに当麻を見つめ、当麻もみずきを見つめて微笑んだ。

またしても驚いたのは健人と雪見だった。


「お、おめでとう!いやー、今日は驚かされっぱなしだなぁ!

当麻の引っ越しはもう済んだの?まだなら俺、手伝うけど。

俺んときは当麻に手伝ってもらったからね。」


「いや、健人の手伝いはいらないわ!絶対俺一人でやった方が綺麗に片付く!」


「それは言えてる!」

雪見の突っ込みに、当麻とみずきが大受けする。


なんだか二人とも、本当に幸せそう。

きっと宇都宮さんはこんな光景を見て、安心して天国へ行けるだろうな

と思ったら、少しだけ心が軽くなり二人を祝福したい気持ちが湧いてきた。


でも、まだまだひねくれてる私の心…。


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