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イケメン翔平との仕事開始!

それから三日後。

いよいよ今日から、雪見の新しい仕事である、苅谷翔平の写真集撮影がスタートする。

健人は平静を装ってはいたが、いつまで経っても自分の中で消化しきれずに

モヤモヤとしたままなのだろう。何となく朝から沈んでる気がした。


「お昼過ぎにはスタジオ行くねっ!ドラマの初日風景はしっかり押さえとかないと。

また今日から、現場でお世話になりますっ!」


「うん。」


雪見が明るく言ったのに、健人の返事はそれだけだった。

自分の写真集撮影の時には、毎日雪見が現場に来てくれるのが嬉しくて嬉しくて

仕方ない顔してたくせに…。

寝起きのせいだと思う事にして、それ以上は何も言わなかった。



「今日は晩飯いらないわ。初日だから撮影終った後、みんなで飲みに行くと思うから。」


「あっ、そうなんだ。わかった。じゃあ私はみずきさんの様子を見に行って、

一緒にご飯でも食べて来るかな?あ、当麻くんがいたらお邪魔だから帰って来るけどね。」

何となくぎこちなく「いってらっしゃい!」と見送り、雪見はため息をつく。


こんな状態はお互いにとって、良いわけがない。

さっさと翔平くんの仕事は終らせて、先に進まなくちゃ!

次からの仕事は、ちゃんとリサーチしてから選ばないとね。




午前11時半。今野の車に乗り込み、健人と翔平が撮影中のスタジオへと向かう。

「おはよう。健人の様子はどうだった?」


「うーん、あんまり良くないです。

健人くんにとっては今回の私の仕事、マイナスでしかない気がする…。

翔平くんには悪いけど、この仕事はとっとと終らせてしまいたいんで、

三日間密着できるように、スケジュール調整してもらえますか?

勿論仕事には手を抜きたくないから、短期集中で全力でやります!」


「よし、わかった!翔平の事務所とも調整するよ。

ってことは、その間のお前への取材も現場でって事になるからな。

宇都宮さんの遺影が話題になって、お前にも取材のオファーが殺到してる。

宇都宮さんの次の撮影対象が苅谷翔平だって言うのは、ある意味グッドタイミング

だったかもしれないぞ。

クリスマスには健人の写真集が発売になるし、その上翔平の写真集も話題になったら、

カメラマン浅香雪見は一気に大ブレーク間違いなしだ!頑張れ !」


「はいっ!!」



久しぶりのドラマ撮影スタジオは、やはり雰囲気に緊張する。

しかも苅谷翔平とはこの日が初対面。その上、健人まで一緒にいるのだから…。


「おはようございます!」

雪見が近くにいたスタッフに声を掛けながら、スタジオの隅に機材を下ろした時、

健人と翔平は真剣な表情で、監督と打ち合わせ中だった。

スタッフに聞いた所、打ち合わせが済んだらお昼休憩に入るそうだ。


「じゃ、そう言う事でよろしく頼むよ!

よーし!じゃあ休憩に入るかぁ!次のスタートは一時だからな!」

監督の声でスタジオの張り詰めてた空気が緩み、和やかな笑い声が広がった。


「おっ!ゆき姉!今野さんもお疲れ様です!」

健人が雪見たちに気付き、こっちに歩いて来る。その後ろから翔平もくっついて来た。


「誰?知り合い?」

翔平が健人の顔を覗き込み、無邪気な顔して聞いてくる。


「今朝話した、お前の写真集のカメラマンだよ!

俺の親戚の浅香雪見さん。で、隣がマネージャーの今野さん。」


「初めまして!今回カメラマンを務めさせて頂きます、浅香雪見と申します。

どうぞよろしくお願い致します!」

雪見が名刺を渡しながら、柔らかな笑顔で頭を下げる。

間近で見る翔平は、健人とタイプこそ違うが、確かに可愛い系のイケメンだった。

が、性格はと言うと…。


「えっ!?こんな綺麗なお姉さんがカメラマンなのっ!?

俺、もっとおばさんが来るのかと思ってた!だって健人、33歳だって言ってたじゃん!

それに、なにっ?マネージャーまで付いてんの?なんか凄くね?」


「お、おいっ!翔平っ!お前、今相当な地雷踏んづけたぞっ!

違うからね、ゆき姉!俺、年を聞かれたから答えただけで、一言も変なことは

言ってないからっ!」

翔平のあっけらかんとした物言いも可笑しかったが、健人の慌てぶりが

もっと可笑しくて可愛かった。


「あははっ!いいよ、健人くん!そんなに気を使ってくれなくても。

33のイメージよりも若く見えるって事でしょ?良かった!

今日から三日間、密着して撮らせてもらうんで、よろしくねっ!」

翔平に合わせて堅苦しい挨拶はやめにした。


「やった!三日間も一緒に居れるの?俺、毎朝ピッカピカに磨き上げてくっから、

格好良く撮ってよね!じゃメシ行こ、メシ!もう腹減って死にそー!」

そう言いながら翔平と健人は、仲良く控え室にお弁当を食べに行ってしまった。


早生まれの健人より九ヶ月年上だが同学年で、22歳。デビューは健人より二年後。

その屈託のない笑顔と性格のせいか、翔平は健人よりも精神年齢がかなり幼く感じられた。

だが、そのギャップこそが翔平の魅力なのだろう。

そこをうまく拾って行こう!と、撮影の方向性を決める。


「よしっ!じゃあ私も準備して、早速仕事と行きますか!」

雪見は下ろしていた長い髪を、器用にくるくるっとアップにして、仕事モードに

スイッチを入れ替える。

それからカメラを手にして、翔平の控え室のドアをノックした。


「はーい!どーぞー!」


「浅香です!失礼します!もう撮影開始してもいいですか?」

ドアを少し開けて中を覗くと、健人も一緒にお弁当を食べていた。


「あ、いーよ、いーよ!中入って!せっかくだから、健人とツーショット撮ってよ!

えへっ!健人ファンにも買ってもらおう作戦!」

そう言いながら翔平が、おどけた顔で健人と肩を組んだ。

健人も、普段はあまり見せない変顔をして写真に収まる。


翔平と共にいる時の健人は、当麻といる時ともまた違った一面を覗かせた。

それは多分に翔平の、飾らぬ自然体な性格によるものだと思うのだが、

そのお陰で健人に対する、当初心配してたようなやりづらさは感じない。

雪見もこれなら三日間、健人の目を気にする事なく仕事に専念できるぞ!

と意気込んでいた。


その日の夜までは…。


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