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予測不能のデビュー記者会見!

会見十五分前。

健人と当麻も準備が整い、雪見と三人で大ホールステージ横へと移動する。


「ゆき姉、メッチャ可愛い!俺のイメージ通りの『YUKIMI&』だ!

で、どう?俺たちは。SJっぽい?カッコいいでしょ!」

当麻はこのビルに着いた時点から、すでにハイテンションだったらしく、

移動しながらも大声で喋りまくるので、スタッフから「シーッ!」と

注意を受けるありさまだ。


「SJって略するんだ!『スペシャルジャンクション』じゃ、ちょっと長いもんね。

でもかっこいいよ!二人も私のイメージ通り!当麻くんもダンスが上手そうに見えるし。

さすが牧田さんと進藤さんのコンビは最強だわ!」


「上手そうに見えるって、どういうことよ!失敬な。

俺のデビュー曲の振り付け、まだ見た事ないでしょ!ゆき姉は。」


「見なくても大体想像つくもん!健人くんはダンスが特技だから勿論上手いけど、

当麻くんはなんか身体が硬そうで…。」


「そんな理由かよっ!」


雪見も、さっきまでの情緒不安定さはどこへやら。

緊張感のカケラも見えず、当麻との掛け合い漫才を楽しんだかと思ったら、

どうやら控え室で、ワインを一杯飲んできたらしい。


緊張し過ぎて一言も喋らなくなった雪見を、見るに見かねたマネージャーの今野が

近くのコンビニまで全速力で走って、ワインを買って来たのだ。


「まぁ、もう夜の九時だし、記者会見の景気付けに一杯ずつ飲め!

特別に俺が許可する!」

控え室に顔を出した常務の小野寺も、雪見が歌えなくなったら元も子もない!

と、とにかく緊張をほぐしてもらうため、自ら三人にワインを注ぐ。


「じゃ、会見の成功を祈って乾杯!」


結局、健人は一杯、当麻と雪見は二杯ずつ一気に飲み干し、控え室をあとにした。



酒の力は偉大だった!

しかもつまみ無しで一気飲みした赤ワインは、酒に弱い人ならばあっという間に酔いが回り

会見どころではなくなると思うのだが、日頃酒の鍛錬を怠らないこの三人は、

この程度の酒では酔うに及ばず、文字通り潤滑油となって口も滑らかだ。


「よっしゃ!明日の一面トップ記事は、全社俺たちが独占しようぜ!

ゆき姉も、歌で会場にいる全員を泣かしちゃえば?話題になるよ!」

当麻が、ステージ横で気合いを入れる。

「なんでみんな、泣くかなぁ?あの歌は泣き歌じゃないと思うんだけど。」

雪見が小首を傾げて不思議がる。



その時、今日の司会を務める夏美の声で、記者会見の開会を告げるアナウンスが入った。

「本日はお忙しい所を当会場に足をお運び頂きまして、誠に有り難うございます。

只今より、斎藤健人、三ツ橋当麻、並びに浅香雪見のCDデビュー発表

記者会見を開催させて頂きます!」


「始まった!こうなったらいつも通り、楽しくやろうぜ!」

「OK!任せといて!」


三人はお互いに握手を交わし、夏美のアナウンス順にステージ上へと出て行った。

その瞬間、健人と当麻に女性記者たちから、思わず仕事を忘れた黄色い悲鳴が上がる。

三人が勢揃いしたステージ中央めがけ、会場全体が白くなるほどの無数の

フラッシュが一斉にたかれた。


「すっごいね!俺、今までで一番の記者の数だと思う。」

健人が横に立つ当麻に話しかける。


「俺、鳥肌立った!なに?このフラッシュの数!」


「私、やっぱ帰りた〜い!」



続いて夏美からデビューの概要が発表される。

「斎藤健人と三ツ橋当麻のユニット名…『SPECIAL JUNCTION』(スペシャルジャンクション)

デビュー曲…『キ・ズ・ナ』

浅香雪見のアーティスト名…『YUKIMI&』(ユキミ)

デビュー曲…『君のとなりに』

CD発売日は共に2011年1月5日予定でございます。


なお、すでにこの二組による、全国五大都市ツアーが決定致しておりますので、

合わせてご報告させて頂きます。

『YUKIMI&SPECIAL JUNCTION 絆 2011』と題しまして、1月25日の札幌を皮切りに、

東京、大阪、名古屋、福岡でコンサートを開催致します。

これは例年、斎藤健人と三ツ橋当麻がそれぞれに東京、大阪で行なっていた

ファンミーティングを、形を変えて五大都市に拡大し、浅香雪見と合同で

開催するものでございます。

浅香雪見に関しましては今回のツアー会場で、写真展『斎藤健人キズナ三ツ橋当麻』展も

同時開催されますので、合わせてご覧頂ければ幸いです。


では皆様、これより先はトークショー型式でお送り致します。

デビューに対しての熱い想いと、三人の素顔に迫ってまいりたいと思いますので

どうぞご期待下さい!

ただいま準備を致します。今しばらくお待ち願います。」


そつなく司会をこなす夏美に対して、ワインの効果も薄れ始めた雪見は

徐々に襲ってくる緊張の波に、飲み込まれる寸前だった。



ステージ上に背の高い椅子四脚とテーブルが一つ用意され、健人たち三人と夏美とが着席する。

そこへスタッフが、それぞれの胸元にピンマイクを付けてゆく。

別のスタッフは、見覚えのあるワゴンをカラカラ押しながら、なにやら飲み物を運んで来た。

見るとそれは、先週放送の『当麻的幸せの時間』で使った、ありとあらゆる種類の

酒が乗っているワゴンであった。


「えっ?これってラジオの飲み友企画で使った酒ワゴン?

わざわざ持って来たの?っつーか、これからここで飲むのぉ!?」

当麻がひどく驚いている。無論、他の二人もだ。


「なんで?一言も聞いて無かった!けど、ちょっと嬉しい!」

健人がニコニコしながら、ワゴンを早々と覗き込む。


「サプライズって嬉しいでしょ?

あのラジオの企画が大好評だったから、三上プロデューサーが第二弾として

会見場でやったらどうか?って。


ツアーのスポンサーでもある『当麻的幸せの時間』及び『ヴィーナス』様より、

会場にお集まりの皆様にも、後ろのテーブルにお飲み物をご用意させて頂きました。

但しお車でご来場の方のご飲酒は、固くお断り致します。

アルコール以外のお飲み物も多数ご用意致しておりますので、どうぞここからは

お飲み物片手に、リラックスした会見をお楽しみ下さい。」


夏美のアナウンスにどよめきが起こり、一人が立ち上がると皆が次々と

飲み物を求めて後ろのテーブルに集まった。



『予測不能の飲み友パーティー!』第二弾の幕開けだ。


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