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初歌!

「みなさーん!元気でしたか?今週も金曜日がやって来ましたよ!

『当麻的幸せの時間』お相手の三ツ橋当麻です。

今日は何の日か知ってる人!そうです!毎月最後の金曜日は、課題曲の発表会の日です!

と言うことで、先週に引き続きこの二人も一緒だよ!」


「どーもー!斎藤健人です!いやぁ、今日の緊張感は身体に悪いわ!

俺、腹痛くなってきたもん。」


「おいおい!初っぱなから、それはないでしょ、健人くん。

今日は大事な日なんだから頼むよ!

あれ?隣の人もビミョーな顔してるし!大丈夫?ゆき姉!」


「ぜんぜん大丈夫じゃない。どうしよう、私もお腹痛くなってきた。」


「な、なんでこの一族は、すぐお腹が痛くなるの?

やめてよ!歌ってる途中で、二人してトイレに抜けるのだけは。

今日は三人揃っての課題曲なんだからねっ!」


「わかってるって!どうでもいいから、早く進行して。」

健人のドキドキ感が、隣りに座る雪見にも伝わってくる。


「よし!ホントはもっと引っ張ってから、告知しようかと思ったんだけど、

多分リスナーさんからの反響が凄いと思うから、もう、さっさと発表しちゃいましょう!」


「えーっ!もう早、言っちゃうのぉ?当麻、もうちょっとじらすとか

何とかすれば?もったいなくね?」


「だってさ、俺らがゴチャゴチャ言ってても、聞いてる人は何の話か

さっぱり見当も付かないで聞いてるんだよ?

面白くないでしょ、それじゃ。それよりとっとと発表して、みんなで盛り上がりたいじゃん!」


「それもそうだね。じゃ、代表して年長者のゆき姉、お願いします!」

健人にいきなり振られて、雪見はびっくり!


「うそっ!?私が言うのぉ?やだ、当麻くんが言ってよ!」


「じゃ、こうしよう。自分の事は自分で言う。これならいいでしょ?」


「うん、わかった。では、お先に発表させて頂きます。

えーと、わたくし浅香雪見は来年1月5日、CDデビューさせて頂くことになりました!

ふぅぅ…。では次、当麻くん、どうぞ!」


「ええーっ!?それだけで終わり?」


「いや、詳しい話は後でいいでしょ。私一人がデビューすると思われても困るから。

いいから、早く当麻くんたちも発表しちゃって!」


「よし!じゃあ発表します!俺、三ツ橋当麻と斎藤健人は…。

結婚することになりましたっ!」


「違うだろっ!何いきなり、訳わからんこと言ってんだよ!

どうすんの?明日のスポーツ紙一面トップ記事が、それだったら!

早く訂正しないと、ツィッターで流されちゃうよ!」

ガラスの向こうのスタッフ達も、みんなで大受けしてる。


「ごめんごめん!じゃ、改めて発表します!

俺と健人もユニットを組んで、ゆき姉と同じ1月5日、念願のCDデビューを

果たす事が決まりました!イェーイ!どう?これでいい?」


「OK!取りあえずはいいでしょう!あー、疲れた。やっとお腹痛いの治ってきた。」

健人がホッとした表情を見せた。


「じゃあ、もっと詳しく伝えた方がいいんじゃない?

これだけの情報だと、二人のファンは混乱するよ、きっと。」


「そうだね。じゃあ今度は俺から話させて。

俺と当麻は、踊りに力を入れたツインボーカルのユニットになる予定。

俺、高校ん時ずっとダンス習ってたから、ほんとに念願の!なんだよね。

歌はまぁ普通だとは思うけど大好きだし、何より当麻とユニットを組めるって言うのが

今回は一番嬉しい!当麻は?」


「俺もね、実はCD出せる事よりも、健人と一緒にやれるのが一番嬉しいんだよね。

こんなことをプロデュースしてくれた、この番組のプロデューサー、

三上さんに感謝感謝の日々です。頑張ろうな!健人。」


「はいはい!そのまんま、本当に結婚しちゃいなさい!

まったく、どこまで好き合ってんのよ、この二人。」


「あー、妬いてんだ、ゆき姉!ごめんね、しばらく健人を借りるから。」


「ちょ、ちょっと!変なこと言わないでよね、当麻くん!

もういいでしょ?二人の告知は。じゃ、次は私の番!

えーと、私はアーティスト名がローマ字表記で『YUKIMI&』と言います。

最後につく『&』は発音しないんだけど、健人くんと当麻くんにつながってる、

って意味があるんだよね。めっちゃ気に入ってます!

で、デビュー曲はとっても素敵なバラードで、歌詞は私が書かせてもらいました。

『君のとなりに』って言う題名をつけたの。どう?」


「えーっ、そうなの?いいじゃん、いいじゃん!

あのね、みなさん。ゆき姉の歌は泣けます!あ、悲しい歌って意味じゃないよ!

心に染み込んできて、自然と涙が溢れるって言うのかな?知らないうちに涙が出てるの。

俺と当麻は泣きました!もちろんです。」


「あっれー?あんな所になぜかキーボードが置いてある!

あ!きっと神様が、一足早くみんなに聞かせてあげなさい!って置いてったんだ!」

当麻がわざとらしい演技で、誰に言うともなくニヤニヤと言った。


「んなわけないでしょ!どーりでさっき、ADさんがキーボードだけ片付けないで行ったから

おかしいと思ったんだ!ダメでしょ?レコーディング前に歌っちゃ!」


「プロデューサーが向こうでOKサインを出してるんだから、いいんだって!」

当麻が強引に押し切ろうとする。


「もし事務所に怒られたら、みんなのせいにするからね!知らないよ!」

雪見は健人に笑顔で背中を押され、渋々キーボードの前に座る。


「はぁぁ…。まさかここで歌うことになるとは…。仕方ない!

猫カメラマンが歌う歌だから、期待しないで聞いて下さいね。

では『君のとなりに』、聞いて下さい。」



雪見は少し目を閉じた後、静かにキーボードを奏で始める。

すでに自分だけの世界に入り込み、何かが乗り移ったかのように

先ほどまでとは明らかに違う瞳をしていた。


雪見が歌い終わったあと、とんでもない騒ぎになるとはこの時

まだ誰も気がつかなかった。


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