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二人の新生活

「真由子、起きて!もう帰るよ!」


香織の声に起こされた真由子は、「あれ?私、いつから寝てたの?」と

ボーッとした冴えない顔で、雪見に聞いた。


「うーん、かれこれ二時間前かな?幸せそうな顔して熟睡してたよ。

相当疲れてたんでしょ?今日はゴメンネ。来てくれてありがとう!」


「えっ!私、二時間も寝ちゃったのぉ!?

なんでもっと早くに、起こしてくれなかったのよ!せっかくの合コンだったのに!

私が寝てる間に、まさか四人でイチャイチャしてたんじゃないでしょうね?」

真由子は、端から見ていて笑えるほど、一人だけ寝てしまった事を後悔していた。


「また来ればいいでしょ。今日からは、いつ来たって健人くんに会えるんだから。」

そう言いながら雪見は、隣りに寄り添う健人と見つめ合い微笑んだ。


「信じられない!本当にあの斎藤健人が、今日から雪見と一緒にここで暮らすの!?

私、もしかして、まだ夢の続きを見てたりする?」


「夢だったら私が困る!せっかく叶った夢なのに…。」


雪見は急に不安になってきた。朝目覚めて隣りに健人がいなかったら…。

雪見の曇った表情を見て、健人が笑いながら「どこへも行かないよ。」

と頭を撫でた。


「はいはい!いつまでも二人でやってなさい!香織、帰るよ!」

真由子はまだ少しふらつく足で立ち上がり、さっさと玄関へと歩き出す。


それを見て、慌てて香織も自分のバッグと真由子が忘れて行ったバッグを手に取り、

「ごちそうさま!また来るね。雪見なら必ずやれるから、自信をもって

進んで行くんだよ。健人くん、雪見をよろしくお願いします。じゃ!」

と挨拶してから居間を出た。


「あ、俺も帰る!香織さんちって、どこら辺?

俺、タクシーチケット持ってるから送るよ。一緒に帰ろう!」

当麻の言葉に、健人と雪見は顔を見合わせて二ヤッとする。


「じゃ、またな!っつーか、これから毎日歌のレッスンで会うもんね。

頑張ろうな、お互いに。香織さんとお似合いだよ!ファイト!」

健人が、最後に小声で当麻を励ました。隣で雪見も笑ってる。


幸せそうな二人の笑顔を見て、当麻は安心して雪見宅のドアを閉めた。


「当麻くん、香織のことが相当気になってるみたいだね。

あの二人はお似合いだと思うけどな。うまく香織のアドレス、聞き出せればいいけど…。」

当麻達を見送った玄関先で、雪見がつぶやく。


「なんで?香織さんのアドレスなんて、ゆき姉が当麻に教えてやればいいじゃん。」


「それじゃ意味ないでしょ!自分で聞くから道が開けるんだよ。

キミはまだまだ修行が足りんな!」


「じゃあ、今日からしっかり勉強させてもらいます!」

そう言って健人が笑ったあと、雪見を引き寄せギュッと抱き締めた。


「今日から毎日一緒にいれるんだね。明日もあさっても、ずーっと…。

俺…、もう離さないよ、ゆき姉のこと…。」


「私だって離れないから…。

毎日美味しいご飯作って、健人くんの帰りをここで待ってる。」


「ゆき姉…。」健人が雪見にキスしようとした、その時だった!

かぷっ! 「痛ったーっ!」 

足音も無く忍び寄っためめが、健人の足に噛みついた。


「なんでだよぉ!俺、なんかしたぁ?」


「あ!まだめめ達に、ご飯あげてなかった!

ごめんごめん、お腹空いたよね。今すぐあげるからねっ!」

雪見はそのまま健人を残し、めめとラッキーにご飯をあげに居間へと行ってしまった。


記念すべき同居第一回目のキスは、邪魔が入ってあえなくおあずけとなり

仕方がないので健人は、スーツケース四個分の私服や帽子、靴などを取り出して

雪見が用意してくれたハンガーに掛けた。


ファッションリーダーでもある健人の、私服の枚数は半端ではなく、

とてもじゃないが、一度に全部を持ち出すことは不可能であった。

靴やブーツも相当の数があり、何日かに一回は自宅に戻って

私服を入れ替えることにする。


雪見が居間の片付けをしている間、整理整頓が大の苦手な健人は

四苦八苦しながら荷物の整理をし、その日二人が眠りについたのは

夜中の二時過ぎであった。



翌朝六時。雪見は、隣りに健人が本当に眠っていることに安堵しながら

そっとベッドを降りる。

顔を洗い身支度を調えて、朝八時に仕事に出掛ける健人のために、

美味しい朝食を作ってから起こそうと、冷蔵庫を空けた。

が!そこには何一つ食材など入っていなかった!


『しまったぁ!昨日のヤケ料理で、全部使い果たしたんだった!

一日目の朝ご飯は、絶対におしゃれな洋食にしようと、前から決めてたのに!

仕方ない。コンビニでなんとか食材を調達して来るか…。』

雪見は財布とケータイを持ち、そっと玄関を出て鍵を閉めた。


マンションから最寄りのコンビニまでは、徒歩五分。

普段はこんな朝っぱらからすっぴんで、コンビニになど出掛ける用事はない。

食材にしたってきちんとスーパーで、丸ごとの野菜を吟味して買うのが雪見だ。

だが今日は緊急事態。そんなこと言ってはいられない。


エレベーターが一階に着くのと同時に飛び出し、マンションを出る。

日曜の朝とあって、人通りは確実に少ない。

すっぴんであることを後悔していたが、これならあまり気にすることもないだろう。


外を歩き出してすぐに、遠くの方で「パシャパシャパシャ!」と

聞き覚えのある音が、微かに聞こえた気がした。

振り返って辺りを見回しても、誰もいない。


『おかしいな…。確かにさっきの音はカメラのシャッター音。

この私が聞き間違えるはずがない。

近くの公園ででも、誰かが撮影してるのかな?

最近は密かにカメラブームらしいから…。

そういや昨日当麻くんも、またカメラを持ち歩いて、色んなものを写し出した

って言ってたなぁ。暇をみてアドバイスしてあげよう…。』


そんな事を考えながら、コンビニのドアを押し開ける。

急いで卵やベーコン、キャベツなどを買い込み、またマンションまで

早歩きで戻った。


「パシャパシャパシャ!」


今度は確かに聞こえた!誰かが私を写してる!

目に見えない正体に怯えながら、雪見はマンションに飛び込んだ。

どうしよう!健人くんとのことがバレた!?


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