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四人のパーティー

「愛穂さん。今日の夜、もし良かったらうちで飲まない?」


「え?雪見さんの家で?」


雪見はこの場で当麻のことを、あれこれ聞き出すのも気が引けたので、

この際お酒の力を少々借りて、愛穂の真意を確かめようと思っていた。


「私このあと編集部に戻って、健人くんの写真集の続きをやらなきゃならないんだけど、

今日は九時には終らせようって話だから、もし予定が無かったらどうかなと思って。」


「そうだなぁ…。」


「あ!当麻くんのラジオ、生で五時から聞くのは無理だと思ったから、

予約録音してきたんだ!一緒に聴きながらお酒飲もうよ!」


この一言で、愛穂は「うん!」と返事した。

二ヶ月後の当麻への愛はどうだか判らないが、取りあえず 今日の愛は大丈夫そうだ。

もう次の仕事先へと向かった健人に、メールでこの事を伝えてから編集部へと戻る。




「じゃ、お疲れ様でした!お先に。」

雪見が今日の編集作業を終え、ホッとしながら誰もいない一階ロビーに降りると

愛穂がベンチに座って待っていた。


「愛穂さん!待っててくれたの?」


「うん。雪見さんちは教えてもらったけど、やっぱり迷ったら困るから

一緒に行きたいかな、って。こう見えても私、方向音痴で…。

ロケ先になかなかたどり着けなくて、遅刻寸前!ってことを結構やらかすの。」

笑いながら肩をすくめる。


「ほんとに?やっぱり私と似てる!

私もこないだ竹富島で、健人くんと当麻くんに案内は任しといて!とか

言っときながら 、大きな顔して道に迷った!

ここから自分ちは迷わないから安心してね。じゃ、行こう!」


愛穂が、近くのコンビニで買ったワインを持参してきたので、

二人はそのまま雪見のマンションへと向かう。




「ただいまぁ!めめとラッキーは仲良くお留守番してたかな?

愛穂さん、上がって!」

パチッ!と居間の電気をつけた途端、雪見はビックリして卒倒しそうになった!


「お帰りぃ!遅かったね、ゆき姉!待ちくたびれたよ。」


なんと、暗闇の中に健人と当麻がソファーに座ってるではないか!

雪見より早く仕事が終った二人が、健人の持ってる合い鍵で先に入って、

雪見と愛穂を驚かせようと待ちかまえていたのだ。


「ちょっとぉ!驚かせないでよ!もう心臓が止 まるかと思った!

通りでめめ達がお出迎えに来ないわけだ。あー、びっくりした!」


「イェーイ!やったねっ!」

健人と当麻はハイタッチをして、いたずらの成功を喜んだ。


当麻が雪見の後ろに立つ愛穂を見て、「お疲れ!」とにっこり微笑む。

愛穂も当麻を見つめて「ラジオ、お疲れ様!」と笑顔を見せた。

なんか、いい感じじゃない?という風に、雪見は健人に目配せしてから

「よーし!宴会の準備、開始!」と号令をかける。


「当麻くん、おつまみ作るの手伝ってくれる?」 「OK!」

「健人くんと愛穂さんは、お酒とグラスの準備をお願いねっ!」

「了解!」


当麻は器用に料理する人で、反対に健人は何も出来ない人。

愛穂も「お料理はあまり得意じゃなくて …。」と、前に言ってたことがあったので、

当麻の前で恥をかかせてはならないと、健人と一緒に酒の用意をしてもらう。

久しぶりに雪見とキッチンに立つ当麻は、心なしか嬉しそうだった。


「ねぇねぇ、ラジオ聞いてくれた?」


「残念ながら、それどころじゃなかったの!

振り袖着せられて、苦しくて撮影大変だったんだから!」

雪見があり合わせの物で、簡単なマリネを作りながら当麻に返事する。


「えっ!ゆき姉、着物きたの?あっ、そうか!もう一月号の撮影だもんね。

ゆき姉の着物姿って、どんなんだろ?すっげー興味ある!」


「今、『ゆき姉が振り袖かよ?大丈夫かぁ?』とか思ったでしょ?絶対に思った!」

隣りに立つ当麻をジロリと下から覗き込む。

その 顔が可愛くて、一瞬当麻はドキッとさせられた。


「そ、そんなこと思うわけないでしょーが!相変わらず被害妄想大きい人だね、

ゆき姉は。なんで自分に自信が持てないの?そんなに可愛いのに。」

当麻の言葉に、今度は雪見がドキッとする。

なんで愛穂さんと付き合ってるのに、そんなこと言うの…。


そこに健人が、「おつまみ、まだぁ?俺、喉乾いてんだけど。先に愛穂さんと

飲んじゃうよ!」とキッチンに顔を出した。


雪見は慌てて、「ごめんごめん!出来た物から運ぶね。当麻くん、お願い!」

と、当麻にトレーを渡す。

作りかけのおつまみも急いで仕上げて、雪見も席に着いた。


「じゃ、乾杯しよう!何に乾杯する?」健人がニヤッと笑って雪見を見る。

「もち ろん!でしょ?」

「そうだよねぇー!じゃ、当麻と愛穂さんにカンパーイ!」


当麻と愛穂は、顔を見合わせて笑ってた。

そして雪見や健人とグラスを合わせたあと、見つめ合って二人でチン!

とグラスを鳴らし、ワインを口に含んだ。


「うめぇーっ!仕事の後のワインは最高!俺、腹減ってたんだ!食べてもいい?」

健人がどれに手を付けようか、子供のように迷いながら料理を皿に取る。


「いっただっきまーす!これ、今作ったの?マジうめぇ!さすが、ゆき姉だね!」


「それ、当麻くんだよ!作ったの。めちゃ手際いいの!

男の料理なんだけど、繊細な味付けするよね、当麻くんって。

いいなぁー、愛穂さん!きっといっつも美味しい物、食べさせてもらえるよ!」

雪見は当麻を褒めて、愛穂にも「よかったね、料理の得意な彼氏で!」

と言うことを素直に伝えたつもりだったが、三人の受け取り方は違ったようだ。


「悪かったね!何にも出来ない彼氏で!」と、まず健人がむくれる。

次に愛穂が「私、お料理下手くそで…。」と下を向き、当麻までもが気まずいのか

シラーッとしていた。


「ち、ちょっと!そんな意味で言ったんじゃないって!

ごめん!私の言い方が悪かったね!機嫌直して食べようよ。

あとは全部私が作ったんだから!遠慮しないで食べて!」


「ゆき姉!それも嫌みに聞こえるんだけど。」

当麻が笑いながら言うと、雪見は「もう、しゃべらないっ!」とワインを一気飲みした。



にぎやかなホームパーティーの始まりだ 。


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