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初デート?

健人が出演した生放送の情報番組が終わったあとも、私はしばらくテレビ前を動くことができなかった。


やっと疑問が解消したはずなのに、まだその状況を呑み込めないでいる。

と言うか、これは夢の続きなのではないかと、80%ぐらいは思ってる。



俳優の斎藤健人が、ちっちゃいばあちゃんちの健人くんだなんて。

私が昔よく遊んだ健人くんが、俳優の斎藤健人になってたなんて。


確かに見た目は同じだけど、あの恥ずかしがりやの健人くんが。

学芸会で、恥ずかしさのあまり舞台上から逃走したという逸話さえもつ健人くんが、俳優という職業についてることにとても違和感を感じてる。


その違和感こそが、今まで疑問を感じながらも、それを心の中で否定してきた根拠なのに…。


まだまだ心の整理がついてないのに、健人から第三の指令が送信されてきた。




ゆき姉、見ててくれた?

まぁ、そおいうことです

(^-^)v

さすがのゆき姉でも薄々

は気付いてたと思うけど


ま、こんなとこで話しても

なんだから、飯食いながら

ゆっくり話そう。

と言うことで第三の指令


恵比寿ガーデンプレイス

時計台広場 午前一時


…な訳なくて

その近くの「グランデ」

っちゅう創作和食の店に

予約入れといたから先に

行って食いたいもの注文

しといて。

この店、ヤバいから(*_*)

俺メイク落としてから行く

んじゃ、あとで☆


by KENTO




んじゃ、あとで…って。

どんな顔して会えばいいんだろ。メチャクチャ緊張してきた。

なんで、ちぃばあちゃんちの健人くんに会うのに、こんな緊張しなきゃダメなの?

私はただ親戚の健人くんに会って、コタとプリンの写真集を渡したいだけなのに…。


いくらたっても心の整理がつきそうもないので私は、取りあえず店の場所を検索し行ってみることにした。





その店は、想像してた和食屋とは大違いだった。

元フレンチレストランのオーナーシェフが、新しい分野の和食屋さんを創りたいと始めた店らしい。


ビルの18階にある暖簾をくぐる。

が、入口の暖簾だけが和を表してるだけで、一歩店内に足を踏み入れると別世界。

そこには今どきのお洒落な空間が広がっていた。


店員さんに案内され、店の一番奥にある窓際の席についた。

バーカウンターのように窓に向かって横並びに席があり、目の前にはキラキラ光る東京の夜景が広がっている。


綺麗な夜景!

でも、こんなところで食事なんて…

誰かに見られたらどうするの?

個室に替えてもらった方がいいのでは…。


どうしようどうしようとソワソワしてる間に、健人が案内されて来てしまった。


先月会った時と同じに、黒縁の眼鏡をかけている。

羽田空港で見たのと似たバケハもかぶってた。

ほんの一時間前にテレビの中で見た人とは、別人にも見えた。


「お待たせ!なんか注文しといてくれた?」


「ううん、まだ。私もちょっと前に来たところ。」


店員が「お飲み物は?」と聞きにきた。


「取りあえずはビール!ゆき姉は?」


「私もビールください。」


かしこまりました、と店員が下がると同時に健人がメニューを開く。

「これとこれと、あっ、こっちも食いたいんだよなぁ。」

メニューを指差す健人は嬉々としてる。


二人の前に、きれいに注がれたビールが運ばれ、健人お薦めの料理をあれこれ注文し終えて、やっと乾杯。


「お疲れ〜!やっぱ仕事終わりのビールは最高だね。」


「なんか変なの。ついこの前まで小学生だった健人くんとお酒飲んでるなんて。」


「またぁ!小学生だったのは十年も前でしょ?俺、もう21だよ?」


「だよね。立派に仕事してるし…。」


「ごめんごめん!でも俺、隠してたわけじゃないからね。ゆき姉が勝手に思い込んでただけで。

先月会わなかったら、ずっと知らないままだった可能性もあるな。

まぁ、らしいと言えば、らしいけど(笑)」


「ねぇ、どうして芸能界に入ったの?何年前から俳優さんなの?」


「まぁまぁ。腹減って死にそうだから、食いながら話そ。」


そう言って健人は、運ばれてきた料理を嬉しそうに、幸せそうに頬張った。


そんな健人の横顔を眺めてるうちに、私はいつの間にやら心が落ち着いて、いつもの自分らしさを取り戻してることに気がついた。



窓の向こうの景色は相変わらず。

いや、時間と共にさらにキラキラ感が増し、この景色を眺めてる二人の姿は誰の目からも恋人同士にしか見えなかった。


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