表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/443

まさかのラジオ出演!

当麻と健人がプロデューサーとの打ち合わせ最中、なぜかチラッと

ガラス越しに二人が雪見を見た。

カメラのファインダーから覗いた二人の顔は、何か悪巧みを企ててる

いたずらっ子のような目をしてる。なんだろ?


やがて本番三分前のカウントが始まり、プロデューサーの三上が放送

ブースから出てきた。雪見が慌ててカメラを下ろし、挨拶をする。

「あの、斎藤健人に同行してるカメラマンの浅香と申します。

今日はご無理を聞いて頂き、ありがとうございました!

みなさんのお邪魔にならないよう、この辺から撮させて頂きますので、

どうかよろしくお願いします!」

三上に頭を下げたあと、周りのスタッフにも頭を下げる。


すると女性スタッフが、「三上さん!美味しそうなプチフール頂きましたよ!」と伝えた。


「いやぁ、済みませんねぇ!当麻からさっき『ヴィーナス』見せられて

お会いできるのを楽しみにしてました。まぁ、あいつったら、浅香さん

のことを語る語る!相当気合い入ってますよ、今日は。

どうか、放送を楽しみながら仕事していって下さい。」


「ありがとうございます!そうさせて頂きます。」

雪見は笑顔で答えて、再びカメラを構えた。



「本番十秒前!5、4、3、2・・」

張りつめた空気の中、軽快なオープニング曲が流れ、いよいよ放送スタートだ。


「さぁ、今週もお待ちかねの金曜日がやって来ました!

『当麻的幸せの時間』この放送をお送りするのは、三ツ橋当麻です!

じゃあ、とっとと今日の相棒を呼んじゃおうかな?

先週の予告通り、本日のゲストは斎藤健人くんです!イエーィ!!」


「どうもーっ!またしても斎藤健人です!

いやぁ、悪いね!いっつも呼んでもらっちゃって。

大丈夫?リスナーさんから『もっと他のゲストを呼んで下さい!』とか

苦情来てない?」


「なに言ってんの!『毎週健人くんでもいいです!』とか、『いっそ

二人の番組にしちゃえば!』とか、そんなのばっかだよ。

今にプロデューサーが『当麻と健人、交代ねっ!』とか言い出さないか

ヒヤヒヤもんです。」

そう笑いながら、当麻がガラスの向こうにいる三上を見る。


「大丈夫、大丈夫!その時は毎週当麻をゲストに呼んでやるから!」

健人の返しにプロデューサーを始めスタッフ一同、大爆笑!

雪見は、二人らしいやり取りだなぁと笑いながらシャッターを切った。


こんなテンポのいい二人の会話で、放送は順調に進んでゆく。

まるで長年連れ添った夫婦のように、阿吽の呼吸で。


間にコマーシャルを挟み、二人が一息コーヒーで喉を潤しているとき、

またしても二人一緒に雪見の方を見て笑った。

『一体さっきから私を見て何笑ってんだろ?』

雪見は小首を傾げて二人を見返す。すると今度は健人がピースした。

『どういう意味?』益々わけがわからない。


コマーシャルが終わり、また当麻が話し出す。

「じゃ、そろそろサプライズゲストをお呼びしようかな?

今日はね、もう一人特別なゲストを呼んでるんです!」


周りのスタッフがざわついてる。

「誰だよ、サプライズゲストって!そんなの台本にないぞ!」

雪見は誰が出て来るのか楽しみに、カメラを構えていた。


「どうする?健人。なんかドキドキするね!どういう展開になるのか

予想もつかないけど、まっいいか!

ではお呼びします。本日のサプライズゲスト!

俺たちの友人でもあり姉貴分でもあり、そして事務所の後輩でもある

動物写真家の浅香雪見さんです!どうぞお入り下さい!

って、入って来るわけないよね!プロデューサー入れちゃって下さい、その人。」


雪見は突然聞こえてきた自分の名前にビックリして、カメラを下ろす。

するとプロデューサーの三上が、「済みませんが中に入ってもらえる?

二人のたってのお願いなんで、許可しちゃったんです!お願いします!

あとは座ってればいいから!」と、半ば強引に放送ブースに押し込められた。

何が起こっているのか理解不能で立ち尽くす雪見を、健人が隣りに座らせる。


「済みませんね、リスナーさん!サプライズゲスト本人に、まったく

知らされて無かったもんだから、今やっとマイクの前に座りました。

で、改めて紹介します。動物写真家で…って紹介したら怒られるんだった!

えーと、猫カメラマンで、今は健人の写真集の専属カメラマンをしてる

浅香雪見さんです!ようこそ、ゆき姉!って、やっぱ、怒ってる?」


「怒ってるも何も、何これ?どういうこと?健人くんだって、朝から

一緒に仕事してたのに、何にも言ってなかったじゃない!」

案の定、健人に食ってかかる。


「まぁまぁ、落ち着いて。全国に生放送なんだから頼むって!

じゃあ取りあえず、一曲挟むね。

その間にサプライズゲストさんには心を落ち着かせてもらって、と。

曲は「涙そうそう」の三線バージョンです。

この後たっぷりと俺たちの沖縄旅行の裏話をするんで、みんなもこれを

聞いて沖縄モードになって下さい。では。」

当麻が機転を利かし、曲の間に雪見をなだめることにした。

スタジオ中に、沖縄の風を感じるような三線の音色が響き渡る。


「あのね、これはさっきの打ち合わせで急遽決めた事だから、健人も

来た時は知らなかったの!

ほら、見て。今そっちの部屋に入ってきた今野さんも、なんでゆき姉が

マイクの前に座ってんの?って顔して驚いてる。

なんか美味い物おごるからさぁ、俺の番組に少しだけ付き合ってよ。」


「でも私、何にも喋れないかもしれないよ!」


「大丈夫だって!俺と健人がいるんだから。いつも通り、酒飲みながら

三人でおしゃべりしてるみたいな感じでいいの!

それにあの流出動画の事、早いうちに俺たちの口から直接みんなに

伝えた方がいいと思う。」


「俺もそれがいいと思うよ!今ならまだリカバリーできるはず。

ねっ、ゆき姉!そうでしょ?」

健人と当麻が雪見を見つめた。


その時、ハッと我に返ったように雪見が耳を澄ました。

「あ、これ『涙そうそう』の三線バージョンだ!

そう言えば民宿のおばさん、夜になって泡盛飲み出すといつも決まって

この曲を私にリクエストして歌わせるの。おじさんの三線の伴奏で。

おばさんの大好きな曲なんだ…。」

そう言いながら、雪見はこの歌を口ずさみ出した。


その途端、ガラスの向こう側にいたスタッフを始めプロデューサーも

驚いた顔をして雪見を見つめ、その歌声に聞き惚れていた。

と、突然当麻のイヤホンから三上の指示が聞こえてきた。


「当麻!この歌をオンエアしろ!早く!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ