小枝の魂
高い梢に注ぐ光と、足元の暗闇に沈む孤独。
本作は、大樹から零れ落ち、誰にも省みられることなく土へと還っていく「折れた小枝」の物語です。光を謳歌する世界から取り残された小さな命が抱く、静かで深い切なさと絶望を描いています。
芽吹くことのなかった指先が
冷たい土の隙間で震えている
わたしは森の巨大な静寂に埋もれた
名もない小枝の折れた魂
風が通り過ぎるたびに
高い梢は青空と恋を囁き合うけれど
地に落ちたわたしを振るうのは
踏みにじる足音と枯れ葉の重みだけ
太陽の光はいつも頭上で途切れ
わたしの皮膚を濡らすのは
誰かの泣き声のような冷たい雨
乾いた木肌の奥へ奥へと
痛みが棘のように染み込んでいく
かつては生きた樹木の一部だった
命の脈動を分かち合っていた
それなのに一度折れてしまえば
誰もわたしを振り返らない
親であった大樹でさえも
新しい青葉を広げることに夢中で
足元に散った欠片を思い出さない
暗闇の中で腐敗を待つだけの時間
虫たちが肌を齧る感触に耐えながら
わたしは静かに思い出を削っていく
遠い春の日の眩しさも
小鳥が留まった瞬間の微かな温もりも
すべては二度と戻らない幻
折れた場所から溢れた樹液は
すでに乾いて小さな傷痕になった
流す涙さえもう残っていないのに
心だけがいつまでも疼いている
誰も拾い上げてはくれない
誰も焚き火の火種にさえしてくれない
ただ濡れた土に溶けて消えていく
それがわたしの許された終わりの姿
さようなら、見上げるほど遠い空
さようなら、光を浴びて歌う緑たち
わたしは最初から
生まれてこなければよかったのかもしれない
深く、深く、黒い土の底へ
わたしというささやかな悲哀が
誰の記憶にも残らずに沈んでいく
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
光を浴びる大樹の陰で、誰にも気づかれず土へと還っていく折れた小枝の、静かな孤独を描きました。省みられることのない小さな存在の切なさが、少しでも心に届いていれば幸いです。




