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24.後悔先に立たず



 ライラックから「もう城に来ないでほしい」と言われ、両親から家での謹慎を言い渡されたジューンメリーは、ベッドにゴロンと寝転び、フグのように頬を膨らませていた。


「なんであたしがこんな目に遭わなきゃいけないのよっ。あたし、なーんも悪いことしてないでしょっ? 城に行くのだって、元はといえばお父さんが言い出したことじゃないっ。教養を学ばせるとかなんとかっ。でも結局なんにもしなかったけどっ」


 父とともに初めて登城した日、王妃に謁見したのだ。

 その時、王は外出中で不在だった。


『アナタには、アタクシの息子と仲良くしてほしいの。ゆくゆくはアナタが息子の婚約者になってもらうつもりよ。今、息子には違う婚約者がいるけど、アレはダメだわ。てんでダメ。息子にまったく相応しくない女なの。だからアナタに息子を任せるわ』


 王妃にそう言われ、実家での貧乏暮らしにほとほと嫌気が差し【玉の輿】を狙っていたジューンメリーは、目を輝かせて即座に頷いた。


 それから、アーベリアがライラックと一緒にいてもジューンメリーは一向に構わず、彼に大胆なくらいすり寄っていった。

 アーベリアではなく、自分がライラックのパートナーに選ばれたことも、将来は王太子妃になるのだし当たり前の流れだとすぐに承諾した。


 アーベリアに申し訳ないとか、彼女を差し置いてパートナーに選ばれてしまった罪悪感など、ジューンメリーの中では一切存在しなかった。


 昔から恋人が絶えなかったジューンメリーは、男が嬉しがる行為や動作を熟知している。

 そして、自分が男好みの可愛い容姿をしていることも自覚していた。


(この人ももうあたしのトリコね。ホント男って単純バカ! あたしはこのまま王太子妃になって、今までガマンしてきた分、これでもかってほど贅沢をするのよっ。あたし好みの愛人も作りたい放題だわっ)


 ジューンメリーは、自分の父親が王妃と不倫していることを知っていた。

 けど、それは仕方がないと思っている。

 父はお金のために王妃と寝ているのだ。それで家の借金をどうにかしようとしているのだろう。

 そうでなければ、五十になったケバケバしいオバサンに甘い言葉を吐き、ベッドを共にできるはずがない。


 お金はこの世で一番大事だ。だから父の行動もジューンメリーは許せる。

 母親が知ったら激怒するだろうけど、借金があっても何もせずただ家にいるだけの無能な母に、父を責める権利などない。


 ライラックと結婚したら、美形な愛人達を持ちたい。

 そして、可愛い自分はたくさんの男達に愛されて、生涯不自由なく幸せに暮らすのだ。


「……それなのに、なんでこんなことになってんのよっ! こんなのおかしいわっ!」


 ジューンメリーは金切り声で叫ぶと、部屋を飛び出し家を出た。

 向かった先は、登城する前に付き合っていた貴族の息子のもとだ。

 彼の家の前まで来ると、ちょうど彼が玄関から出てくるところだった。


「グラノさまぁっ、会いたかったですっ」


 ジューンメリーが笑顔で駆け寄ると、グラノと呼ばれた青年はあからさまに口を引きつらせた。

 

「やっぱりわたしにはグラノさましかいませんっ。グラノさまもそう思ってるでしょ? まだあたしを愛している――」

「すまない、もう二度とここに来ないでくれないか。そして、金輪際僕と会わないでほしい。王族もそうだが、バセロルト公爵家を敵に回したくないんだ。また来るようなら、容赦なく衛兵を呼ばせてもらう」


 グラノは青い顔で唇を震わせながらそう言うと、足早にジューンメリーから離れていった。


「……は? なによそれっ? ふざけないでよっ! いいわよ、男はあんただけじゃないんだからっ!」


 ジューンメリーは真っ赤になって憤怒しながら別の貴族の息子に会いに行くと、そこでもグラノと同じ対応をされた。

 ジューンメリーと関係のあった男全員に会ったが、やはりキッパリと拒否され、さすがの彼女も呆然とするしかなかった。


「うそ……うそ、うそよ……。あたしが男に冷たくされるなんて……そんな……っ。――こんなことなら、あのケバ女の言うことなんか聞かないで、貴族の男で満足しておけば良かった……っ」


 後悔しても、それはもう後の祭りで。



 ――後日、王妃と王太子に多大な恥をかかせたという理由で、王族への【侮辱】の罪でジューンメリーは捕まってしまった。


 リアンジュ伯爵は廃爵されて平民となり、夫人とともに朝晩働きながら借金を返済することとなった。

 ジューンメリーも、釈放後は両親と一緒に汗水流しながら働くことになるだろう。



 愚かな私欲に負け、彼女が欲張った先にあったものは、【自分自身の不幸】へと真っ逆さまに落ちていく崖だった――




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