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《前日譚》Episode.0 そして魔族は滅亡した。俺は逃亡した。

悲劇の始まりは200年前からだった。


聖エラト紀1338年―――

事実上、最後の魔王が光暦の勇者ジャンヌによって討伐される。


聖エラト紀1418年―――

魔王が討伐されてから、80年の月日が経ても再誕を示す赫耀の月が出現しないのは有史以来初めての出来事であった。東部人魔戦線にて人類は圧勝を掴み取る。


聖エラト紀1425年―――

魔王が再誕しないにも関わらず、南東の地、城塞都市ジェルランにて勇者が誕生。


聖エラト紀1448年―――

勇者一行が次々と先代魔王直属の大魔族を討ち取る。戦局はさらに人類側に傾く。


聖エラト紀1453年―――

人類の中心国家、西の帝国ファイゼの皇帝はエルフ族の長と同盟を結び、魔帝大国を滅ぼすことに調印する。


聖エラト紀1467年―――

魔帝大国、滅亡


聖エラト紀1468年―――

残存魔族達が捕虜として永久投獄される。魔族の小国と和平条約を制定。


聖エラト紀1470年―――

魔帝大国の滅亡により、人類、その他の種族は繁栄期を迎える。人類は魔族によって支配されていた領地を得て世界の7割を掌握する。

―――停滞していた人類の文明が動き出す。


聖エラト紀1489年―――

東南に位置するヴィクトリア帝国にて人間のクァトル博士とドワーフ族のロデオ博士が共同して魔力を燃料とした蒸気機関を発明。

第一次産業革命を迎え、人類の発展に拍車がかかる。魔法は才能から技術になり、クァトル博士とロデオ博士を初めとする魔導技師、魔法工学者が台頭。


聖エラト紀1499年―――

ヴィクトリア帝国とファイゼ帝国を中心として世界各地で人口増加と共に工業化が進み、同時に蒸気機関車、蒸気船が普及したことで移動手段が画一化。

―しかし、急速な技術発展により格差が加速。


聖エラト紀1510年―――

人類の発展は止まらず、匿名に魔法工学者と大魔法使いキルテルの協力で第二次産業革命(通称:魔法科学革命)が起こる。魔力を直接動力源に変換する人工魔力循環装置(アルテナ)(キルテル型魔力炉)、一国全体を強力な魔法から守る結界発生装置、そして個人の魔力量に非依存な()()()()()()()()()


聖エラト紀1511年―――

世間で「魔王復活論」が発行。魔王は残存魔族の中から再誕するという説だった。魔族を完全に撲滅しようという動きが強まる。


そして、1514年―――






―――彼は集落の子供だった。

そこは、人と魔人の血を併せ持つ者たち、デモニ(半魔)が静かに暮らす場所だった。大樹が影を落とすその集落では、長いあいだ争いというものが遠い噂にすぎなかった。


「アルトたち!早く戻っておいで!」


大樹の根元で友人たちと駆け回っていると、父が足早に近づいてきて、少し強い声で呼びかけた。


「どうして?まだ日は暮れてないじゃん」


「今憲兵さんがこの村に尋ねてきたんだ。あまり騒ぎすぎると失礼だ。大丈夫。いつもみたいにすぐおわるさ。」


アルトの父はそう言って村の男と共に憲兵の所へ向かっていった。憲兵が来るのはこれが初めてでは無かった。数ヶ月に一度来ては村の大人と話しては帰っていたが、今日はなにやら揉めているようだ。それが少しばかり彼の鼓動を早まらせたが、そんなアルトをよそに友達のニクニスが横から話しかけてくる。


「なあ、こっそり見にいってみようぜ」


「嫌だよ。憲兵さん怖いし」


「びびってんのか?アデル(お父さん)とは違って臆病なやつだな。ま、いつものことか」


アルトの父、アデルは村でも指折りの屈強な半魔だった。

その事実は誇りであると同時に、アルトの胸を静かに傷つける。半魔は人でありながら魔の血を引き、一人ひとりが人間以上の力を持つ。だからこそ、この村は長く干渉を免れてきた。


でも、アルトは違った。

走れば遅れ、力比べでは負け、魔法も基礎すら満足に扱えない。父と比べられるたび、胸に沈殿する劣等感に、もう耐えたくなかった。


「いいよ。見に行ってやるよ。先に逃げ出したほうが負けだからな」


「ニヒヒ、珍しくノリがいいね。早く行こうぜ」


最初こそ彼は勇気を振り絞った達成感に満ちていたが、近づくにつれて憲兵の姿がはっきり見えてくるとやはり不安が呼び起こされた。彼は息を潜めて物陰から垣間見ていると、ニクニスがささやいてきた。


「なんか前見たより憲兵が多いぜ...」


彼らに不安が大きくなるが、先に逃げ出したほうが負けと決めてしまった。ここで引くわけにはいかない。そう自らを制して、父の言葉を反芻させる。大丈夫、いつも通りに憲兵さんは帰ってくれる。そう安堵した直後だった。


「何度も言っているだろう!!この村はお前らの国に従属しないと!!50年前そう取り決めたのだろう!?」


村の男の怒声が彼らの耳に入った。


「契約の期限はもとっくに過ぎている。今までお前たちが何の障害もなく自由に暮らせていたのは先代の国王のご厚意だ。だが、事情が変わってな。お前らをこちらで管理しなければいけない。従わないのなら、武力行使を行う。」


憲兵のリーダーらしき人物は淡々と告げる。


「管理だと?従属するどころか、管理させろっていうのか?俺たちが半魔だからか?ふざけるんじゃねえ。もともと俺達をはぶってきたのはお前らの方だろうが!!」


「おい、やめとけよ...」


アデルが制止するが彼の怒りは止まらない。


「うるせえ!こいつは一旦ぶん殴んないと分からねえ!」


男はそうやって拳を振るおうとしたが、目の前に突きつけられた先端に小さな穴が空いた、細長い金属と木の組み合わせの棒状のものに困惑する。


「なんだ?こ――」


言い終える前に、轟音と共に彼の頭部は吹き飛んだ。その場の時が止まった。


「...え?」


アルト、ニクニスが思わず声を上げる。

村の者たちは呆然としていたが、最初に動いたのはアデルであった。


「まずい!村の女性と子どもたちを避難させろ!!」


アデルは後ろの男たちにそう叫んで防御魔法を憲兵たちを塞ぐように展開した。

大人たちは我に返って走り出すが、物陰に隠れていたアルトは動けない、いや、動かなかった。


「アルト!早く逃げるぞ!」


ニクニスが焦燥として彼の手を引っ張る。


「でも、お父さんが...」


「アデルさんは俺達のために命張ってんだよ!早く逃げるぞ!あの人ならきっと返り討ちにしてくれるから!」


アルトは不安そうな顔で頷いてニクニスと共に逃げ出した。




「お前らはいつまで自分たちが強者だと思っているんだ?」


憲兵のリーダーはニヤリと笑ってアデルの方を向く。


「全兵、射撃開始」


兵士達は先程村の男を屠った武器―魔導銃を取り出し、アデルが展開した防御魔法に向けて放つ。


「...なっ!?」


アデルは驚愕した。自分の魔法が打ち破られるのは生まれて初めてであったからだ。


「すげえ...魔力がない俺達でも本当に扱えるぜ...」


兵士達が歓喜の声を上げる。


「これは魔導銃というものだ。ここの引き金を引けば⋯防御魔法など簡単に破壊できる威力で、魔力を纏った小さな鋼鉄の塊を打ち出すことができる。⋯一個人の魔力によらずにだ。」


「つまり、私たちは半魔より強くなったのだよ。もうお前たちに譲歩する必要はない。」


憲兵の恍惚とした目を、アデルは憎悪に満ちた目で睨む。


「なぜ⋯こんな残虐な真似をした。」


「残虐?ほう、魔族が残虐を語るか!むしろ今までお前たちを放置していたことに感謝してほしいものだ。理由なんてお前たちが魔族だから、ということに他ならない。」


「ふざけるな。魔族だからなんだ。俺達はお前らになんの危害も加えていない。」


「お前たちがどうしていようが、私達は国家の栄光のために魔族を滅ぼさなければならない。お前たちのような社会のゴミが、我々の発展、未来ある栄光に邪魔なんだよ。」


憲兵はそう言って再び発砲を命じた。アデルは村の人々を傷つけまいと魔法を放とうとするが、魔導銃のまえではなすすべもなく、腹と胸を貫かれて大空を仰いで倒れた。




―――雷のような音ではなく、乾いた破裂音が短く続くだけ⋯⋯それでも、そのたびに人が倒れる。


村の男たちは逃げなかった。

誰かが倒れると、別の誰かがその場所に立った。前に出る理由を言葉にする者はいない。ただ、背後にあるものを見ないようにして、前を向いた。

女たちは子どもを抱え、家と家の間を走った。

泣き声を抑えようと口を塞ぐ者もいたが、銃声の前では意味を持たなかった。憲兵たちは歩調を変えず、進む方向にいる者を次々と銃で撃ち殺していく。


アルトとニクニスは足がちぎれるほど懸命に走った。足が地面に縫い止められたようで、息を吸うことさえ意識しなければならなかった。気づけば、ニクニスの手はいつの間にか離れていた。


大人たちが作っていた壁は崩れ、そこに何があったのかも分からない。ただ、さっきまで人の声で満ちていた場所が、急に広く、静かになっていた。


家が壊れ、木が倒れ、道が塞がれた。

逃げ場は少しずつ消えていった。人々は散り散りになり、互いの姿を見失っていった。


アルトは本能的に身を低くした。

村外れの岩陰に転がり込むと、息を止めた。心臓の音が外に漏れてしまうのではないかと思うほど、大きく響いていた。銃声が近づく。もう死ぬんじゃないか。アルトはあと少しで自身の死を実感しそうだった。


「こっちだ、アルト」


低い声が耳元で囁いた。アルトの祖父であった。いつもより背が低く、老いたその姿が、妙に頼もしく見える。


「爺や⋯⋯!」


祖父はアルトの手を強く握った。同時に、何かが周囲からずれていくのを感じる。音が遠のき、色が薄くなる。憲兵たちの視線が、二人を避けるように滑っていく。


「目を合わせるな。考えるな。決してそこに“いる”と思わせるんじゃないぞ」


爺やは淡々と言った。

それが認識阻害魔法だと、アルトは後から知ることになる。


二人は歩いた。走らなかった。急げば、存在が浮かび上がるからだ。瓦礫の間を縫い、燃え残った木々の影を選びながら、とにかく離れたところへと向かった。銃声は続いていた。近くなったり、遠ざかったりしながら、やがて数が減っていった。


どれくらいの時間が経ったのかは分からない。どれくらい歩いたかも分からない。

空が少し暗くなり、風が変わった頃、音は完全に止んだ。

何も、聞こえなかった。



聖エラト暦1514年―――

魔族の小国は帝国ファイゼに属する灰燼の魔女リリアスの大規模魔法によって滅亡。また、多くの魔族の集落は新開発された魔導銃の実験台となり、消滅。

記録上、魔族は絶滅した。

初めての小説。

ところどころ文章が冗長になってしまったり拙い部分があったりすると思いますが、一読していただいてありがとうございます。Episord.0は1以降の話が続いてから前日譚として投稿するつもりでしたが、世界観知ってもらわんとなあ⋯っておもって最初に描きました。まだまだ種族の話や世界観が不明な点があると思うので、これからこの後書きのところでは一話につき一種族触れていきたいと思います。


【魔族】

「魔物」とは異なり、その祖先は人類と同じと推測される。先史文明から人類と敵対する。最初から魔族と名乗っているのではなく、人類が敵対する種族を示すために魔族という言葉が生まれた。

その数こそ人類より少なかったが、一個人が膨大な魔力量を持ち、さらには寿命という概念がない。(追記予定)

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