第9話 変態バニーはもういない
日曜の昼下がり、リビングの時計の針がのんびり回っていた。
「え?行っちゃうの?」
あれから、愛羽は馨にべったりだった。
家の中では馨について回り、馨が出かけようものなら、冒頭の一言。
馨は愛羽の可愛さにめろめろで、見ていて気分が悪い。
「うん、ちょっと食料買いに、それと本屋にも行きたいし」
「付いてっちゃダメ?」
「でも本屋、結構時間かかるし…退屈じゃない?」
きゅるんとした目で見つめられ、馨がたじろいだ。
「いいよ。一緒に行こう」
始終こんな感じだ。
陽はため息をついた。
愛羽は馨の後をひな鳥のようについて回る。
唯一救いなのはそれが恋慕ではなく、家族愛だということ。
あれから馨のバニー姿はなりを潜めている。
それが余計に愛羽の行動を助長している。
「愛羽、宿題あるだろ」
陽の言葉に、愛羽が眉を顰める。
余計なことを言うなと言いたげな表情。
「そうなの?」
愛羽は応えない。代わりに陽が答えた。
「そうだよ、3連休だから結構たくさんあるはず。週明けテストだし」
「じゃあ、少し勉強しないと。なるべく早く帰ってくるから」
「わかった…」
そうして、馨は出かけていった。
普通だ。至極普通の、常識的な大人だ。
あの人が奇怪なのって、やっぱりバニーだったからなんだ。
馨が出て行くと、甘えていた愛羽の態度は一変する。
「なんで邪魔すんの?」
「邪魔って言うか…なんだんだよ、あの懐き方。この前までと全然違うじゃん」
「それは…叔父と姪だもん」
「それ、本当なの?」
え、と愛羽が言葉に詰まる。
「馨おじさんって、ホントに愛羽の叔父なの?」
愛羽が気づいて、見ないフリをしていた疑問。
今、一番言われたくない言葉を、陽は容易に暴く。
「う、うるさい!部屋で勉強する!」
そう言うと愛羽は部屋に閉じこもった。
ドアの閉まる音がして、家の中に静けさが戻る。
けれど、さっきまでの穏やかな空気はもうどこにもなかった。
「馨おじさんって、ホントに愛羽の叔父なの?」
愛羽が気づいて、見ないフリをしていた疑問。
今、一番言われたくない言葉を、陽は容易に暴く。
「う、うるさい!部屋で勉強する!」
そう言うと愛羽は部屋に閉じこもった。
ドアの閉まる音がして、家の中に静けさが戻る。
けれど、さっきまでの穏やかな空気はもうどこにもなかった。




