第11話 冬仕様になっただけ
今日は馨くんの友人の田崎さんが二人に会いにくる。
愛羽と陽は、にわかに緊張していた。
そわそわ。掃除。整理整頓。落ち着かない。
二人はまともな大人に慣れていない。
馨を“まとも”と定義するなら、二人目のまともな大人なはずだった。
二人は甘かったことを知る。
馨の友人がまともなわけがなかった。
馨と田崎は玄関で会うなり、ハイタッチすると、部屋に入っていった。
そして…新作のバニー服を着て出てきた。
「これ、新作なんだ」
作っていたのは、お前かー!!
なんだかバニー服が妙に馨の体の線に合っているな、とは思っていた。
特注品だったとは。
今回のバニー服はベロア生地のもふもふしたバニーちゃんだ。
ジャケットもある。
もふもふの冬仕様。
……誰か常識を持ってきてくれ。
愛羽と陽の、つかの間の平穏はこうして崩れ去った。
二人は肩を落とし、目の前の大人と相対する。
「それで…田崎さんはどんなお仕事を?」
聞くまでもない気がしたが、社交辞令として聞いた。
「服を作っているんだ」
こういう服を?と聞きかけてやめる。
これはパンドラの箱だ。見ないフリをしよう。
必殺、合コンのさしすせそ。
「さすが」「知らなかった」「すごーい」「センスいい」「そうだったんだ」
で乗り切る。
すると、陽が令和版、さしすせそで対抗する。
「最高ですね」「信じられない」「ステキです」「誠実ですね」「それは○○ということですか?」
愛羽の時より田崎の反応が明らかにいい。
ちくしょう、陽に女子力で負けた。
田崎が帰った後、二人は落ち込んだ。
なんだか無駄な争いをしてしまった。
笑い疲れたあと、二人はふと黙った。
何か、大事なものを笑い飛ばしてしまった気がした。
結局、私たちは今日もバニーの家に帰る。




