正義の味方になりたい~第1話、葉雪(はゆき)の場合~
ある少女は目を開けると今までいた場所とは違う空間にいた。全体が白地にピンクと黄色が入り込んだ空間だ。木や草花が生え、小さな湖もある。
夢だな、と少女は思った。
目の前にちょこちょこ動いている、体長15cm位の小さなくすんだクリーム色の奇妙な獣がいた。
何やら懸命に10円玉位の大きさの沢山の星形の物体を自分の大きさよりもでかい籠の中に入れている。少女は手伝ってやることにした。星形の物体は手触りは外側はツルツルでやわらかく、プニプニしていた。
小さな獣は少女が手伝ってやると、嬉しそうに「ユッチー!」と歓喜の声をあげた。その籠には小さな星形の物体が山盛りになった。
少女はユッチーユッチーと発する獣をユチオと名付けた。
突然ユチオは背中から蝶々のようなオレンジと黒の模様の羽根を生やし、籠をかかえて空を飛び始めた。少女もその後をついていった。
ユチオが向かった岩の奥には何やら洞窟があった。洞窟の中にユチオが入って行き、そこには星形の物体が積み重なった籠がいくつもあった。そしてユチオは、その籠に入った星形を洞窟の奥の奥の何やら【空間】に次から次へと放り入れた。空間は、まるで巨大な怪物が食べ物をよく噛まずに飲み込むがごとく、吸収していった。
すべて終えるとユチオは少女のところにきて、まだ放り入れていなかった1つの星形を私にくれた。
「くれるの?」
「ユッチー!」
ユチオは嬉しそうにそう言い、
「君の願い事を1つ叶えてくれるよ」
とユチオはそうつけ加えた。
少女、葉雪は16歳で高校1年である。進路が決まらず、迷っていた。
少女は目覚めると夢と同じように手に星を持っていて、夢じゃなかったんだなと思った。
「正義の味方になりたい」
少女は早速その星形をみてそう言った。
少女は魔法少女になったり、スーパーヒーローに変身して悪をやっつけるのかとわくわくしていた。
だが、変身はしなかった。星形はスッと消えただけだった。ただ、何だか身体に力がみなぎってきたような気がした。
それから少女は進路が決まり警察官を目指すことにし、その後の学生時代、必死に勉強をして公務員試験に受かり見事警察官になった。
葉雪は警察官として正義の味方になりたいという夢を現在進行形で叶え続けている。
少女はユチオが夢を叶える後押しをしてくれたんだと思った。