【セリフ無し】雨で溜まった水
夏のホラー2025投稿用。
今とはそう遠くない、ほんの少しだけ未来の地球。
そこでは世界規模で、パニックに包まれた。
地球を一周するまで全く散らず南極から北極までにまたがる一筋の奇妙な雨雲が通った地で、明確な変化が訪れた。
その奇妙な雨雲の雨に打たれたあらゆる生き物は、本人の自覚が無いまま静かで速やかに性別が逆転した。
あらゆる生き物の言葉通り、人間だけでなく犬も猫も牛も豚も鳥も魚もトカゲも亀も昆虫も。
本当にありとあらゆる生き物が例外無く逆転した。
これにより個人・同人・商業問わず、TSを題材とした年齢制限系漫画みたいな展開が世界中で発生し報道され、倫理観の崩壊が始まった。
少し後に元男が妊娠したニュースによって、生殖能力を保持したままの性転換であると、世界中に激震が走った事もある。
ついでに元男・元女が多数発生した結果、男だから女だからの固定概念の崩壊も始まった。
このきっかけとなった奇妙な雨雲を、民間では「TS通り雨事件」と呼ぶようになったとか、ならなかったとか。
この変化が奇妙な雨雲から降る雨によるものだと判断した研究者は、降った雨が干上がる前にと慌てて回収に動く。
学校のプール、水溜まり、降雨量計等など。 特に降雨量計に溜まる水は雨水の純度が極めて高く、裏で高値取引されたとネットで囁かれていた。
雨水の研究により、性別が変わってしまう因子の特定・発見に成功。
更なる研究で人工的に、手術無しで生殖能力を維持したまま性別を変えられる因子の精製、生産が可能となった。
これにより、TS通り雨の被害を受けて生活が大変になった者が、元の性別と生活に戻れるようになった。
戻れたのはいいが、その後に民間で手軽に性転換できるTS薬として普及してしまい、性別はもはやアクセサリーとなってしまった。
これにより、TS通り雨が降る前までの倫理観や男女観が完全に崩壊し、社会は以前のように戻る事はなくなった。
この事態に倫理観的な危機感をおぼえた者たちが活動を開始。
が、時すでに遅し。
地球上の大半の人間はとっくに倫理観が粉砕されており、恋愛事情で性別の(心理的な要因含む)壁が無くなった事で国の婚姻率も出産率も上昇。
好きに男にも女にもなれるからと男女で設備や施設を分ける意味が無くなり、効率化。
経済的需要すらも明確に性別分野で分けられなくなった。
そんな変化がたった十年足らずで起きて、世界的にしっかり受け容れられてしまった。
なので、旧来の倫理観に戻ろうとする人達の方が少数でカルト勢力扱いとなってしまった。
ちなみにこの中にはTS通り雨以前でのSNSの書き込みで、性別を都合よく利用し他者を口撃する事を日常としていた人間達が少なからず合流していたと発覚した事も、少数派の(人が集まらなかった)要因の一つとも言える。
この男女の壁が無くなってしまった世界は、どこへ向かうのだろうか。
コレをホラーと言い張るホラー。
以前、年齢制限物なら何でも扱う某サイトでTSする雨を見てしまいました。
その作品ではTSした対象以外は変化後の世界に認識が書き換えられているとかの、ご都合的なものでした。
ですが、そんなご都合展開にならず、変化が起きたのが認知された世界だったら? 的なシミュレーションを脳内でした結果となります。
…………まあ普通なら変化してしまったら警戒されて遠巻きになると思いますが、まあ若者でその変化を受け容れて元同性の親友とおふざけのつもりで、アレな事をおっ始めた話が出回ったら……なんてので年齢制限展開が世界中で発生した理由を後押ししてみました。
男女観の崩壊って、本当は結構なホラーだと思うんですよ。
一種の秩序が崩壊したって意味ですし。
でも案外、生殖能力を保持したまま簡単に性転換出来るようになって、こんな感じに概念が崩壊したら面白そうと思ってしまうのです。