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プロローグ
ちょっとしたスーパーの、ちょっとした家電売り場の中、セレストブルーの髪を一つに束ねだ女性が通る。
「ここらへんにあるはずなんだけどなあ」
透き通った声を響かせ、わざとらしく、頭をぽりぽりとかく。
「姿も形もわからないんだからしょうがないんだけどさ」
「では、水見市の5月8日水曜日のニュースです」
ふと、男性の声が聞こえた。地方のニュース番組を映していた複数の大きなテレビから、同じ音が聞こえてくる。
彼女は、ニュースを見なかった。“意味”がないからだ。立ち止まっている暇はない。今日もそんな”日“だっだから。
だからこれは、テレビの独り言。聞くもののいないテレビのが斉唱。
「本日未明、水見川で変死体が発見されました。これで、似た事件は5件目です。水見市警はこの件に対し……」
男性の声がフェードアウトした。
その女性は海馬をすり抜ける粒子、まもなくその存在も声と同様に………。