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いい加減卒業しなさいよ

作者: ナイアシン

 自分で言うのも何だが、私は割と器用な方だ。

 勉強だってそこまで躓いたことはないし、なんとなくこういうときにどうしたら良いのかわかるので、周りとの関係も良好で、それなりにうまく生きてきた方だと思う。


 まあそれもこれもちょっと頼りない幼馴染のせいかもしれない。

 マイペースで優柔不断、天然で抜けてるところのある男の子。でも優しくてかわいいところがある、幼馴染のカケルはそんな放っておけないヤツだった。

 私がしっかりしなきゃって思っているうちに、いろいろできるようになったのかも。


 家が隣どうしで親が仲良し、お互い一人っ子となれば、姉弟のように育つのは自然な流れだろう。

 しかたないなあ。

 実際、私が4月生まれであいつが3月生まれなのでほぼ1学年差だし。私が面倒みてあげますよ。



「あれ……」


「カケル、もしかしてスマホ探してる?はい、下駄箱の上にあったよ」


「あ!!探してたんだよ!そんなとこに忘れてたのか…ありがとう」



「またカケルくんの忘れ物?」


「うん。あはは、ほんといい加減卒業しなさいよって感じだよね!」


カケルがちょっと抜けていても、私が補う。

これからもそれは変わらないんだと思ってた。



 今は高校2年の冬。そろそろ大学受験のことを考えないといけない時期だった。


「カケル、そういえば進路どうするの?まあまだ決まってないか」


「うん?俺、もう行きたい大学決まってるよ。遠いから一人暮らしすることになるけど」


「そう、なんだ」


 これからもずっと私の隣には当たり前にカケルが居るんだろうなって思ってた。

 行く大学は違っても、家を出る時間が同じなら途中の駅までは一緒に通学するだろうと思ってたし、定期的にお互いの家を行き来して大学生活の報告をしあったり、就活だって私が先に内定をもらってカケルの相談に乗ったりするんだろうなって。


 いつも、カケルが困らないように私がしっかりしなきゃって、それしか考えてなかった。

 でもそれはただの私の思い上がりだったんだね。


 カケルはちゃんと自分で考えて目標を見つけたんだ。

思えば昔から、決めるまでには時間がかかるけど一度決めてしまえば頑固でまっすぐ突き進むタイプだった。

私がいなくても何の問題もなかったんだね。

 無難に生きていくことばかり考えていて、自分のやりたいことなんて考えたこともない。わからないよ……


 そっか。あなたがいないと何もできないのは、私の方だったんだ。

 卒業しないといけないのは、私なんだね。


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