第六話
巨大光魔法襲来事件から数年。
リバルたちの周りではいくつか変化があった。
グレイスがあまり城下に下りなくなり、領を空けることが多くなったこともその一つ。
グレイスが領にいない期間は、リバルが城下の見回りなどの仕事を任されていた。
さらに、王都から帰還したグレイスは何かにとりつかれたように、
軍事力にお金を使うように舵を切っていた。
そのため、領民からは少なからず不満が上がっていた。
しかし、巨大な光魔法がかなりの速度でライアン家の鉄塔を破壊し、通り過ぎていったことは
領民にもみられていたため、その脅威を防ぐためとグレイスが領民を説得し、
泣く泣く要求を呑んでもらう形となった。
まず第一の施策として、勇者の力を認められないグレイスは、街と王都の間にも砦を築き、
その砦の周辺に魔法の研究機関と勇者の光魔法を防ぐために、闇属性使いの兵士を砦に配置した。
「勇者の光魔法…このイベントが起こったら、ゲームではここは魔族領と一緒になくなってた。
何とか街を守り切ったけど、これによって、ゲームの進行としてどうなるかわかんなくなったな…」
自分の部屋でぶつぶつとつぶやきながら、この後、どうやって守っていくかを考えるリバル。
考えているうちに、日課の城下の見回りに行く時間となる。
城下に向かうため、部屋を出ると、
グレイスの部屋に黒いフードをかぶった人物たちが入っていくのが見えた。
(グレイスが屋敷にいる時は、研究機関の人たちなのか、怪しい人の出入りも増えてる。
黒いフードをかぶって顔が見えないから不気味なんだよな…)
「あんな黒フードの集団、ゲームに出ていたかな?」
記憶をたどっても思い出せなかった。
「げ~むというのはわからないですが、あの人たちは、ご主人様の魔法研究の協力者だそうですよ~。」
と、答えるマリー。
「魔法研究の協力者ねぇ~……って、マリー!?いつから!?」
「坊ちゃまがお部屋から出てくるところからです~」
(気配消して後ろにいて、突然話しかけてくるから、びっくりすんだよな…
まぁ、ちゃんとプライベートの空間には入ってこないでくれるから、いいんだけども…)
「今から、城下の見回りに行くからついてきてくれるか。」
「はい。」
マリーが返事をすると同時に、
鉄と鉄がぶつかり合う音が屋敷の庭から響いた。
庭に出てみるとそこには、アリスとサーシャがそれぞれ武器を持ちながら、組手を行っていた。
「はあ!たあ!」
キンッ!キンッ!
掛け声を上げる度に、アリスとサーシャの武器がぶつかり合う音が響く。
一旦距離を空けるアリス。
次の瞬間、アリスの後ろに魔法陣が発生し、一瞬にして、
空いた距離を詰め、武器を振りかぶる。
「やあああ!」
不意を突かれたサーシャであったが、アリスの武器はサーシャには届かず受け止められた。
「おお、二人とも精が出るな」
拍手を鳴らしながら、アリスとサーシャに声をかけるリバル。
「はぁ…はぁ…、リバル…」
「お嬢様、少し休憩にしましょう。」
「わかったわ…」
アリスは光魔法事件の時、あまり役に立てなかったことを後悔していた。
自分の話を信じ、いろいろと助かっていたと伝えても、
「リバルの許嫁として、このままじゃダメ。もっと役に立てるようになる。」
と言ってきかず、サーシャに戦闘訓練などを教わっていた。
「さすが元凄腕の冒険者。全然歯が立たないわ…」
「結構、いい感じの組手になっていたと思うけど?」
「私は魔法をバンバン使ってるのに、サーシャは魔法も使わず、一歩も動いていなかったのに?」
「ハハハ……そこは、経験の差だって。」
「それでも悔しい!絶対、移動させるか、魔法使わせるかさせてやる!」
「ほどほどにな。僕は、見回りに行ってくる。」
「最近、見回り一緒に行けなくてごめん。」
「ああ、大丈夫。アリスも頑張って。」
そう声をかけて、城下の街に向かっていくリバル。
城下の不満を聞き、兵舎の様子見、魔族領側の動きの確認。
日課の巡回を終え、屋敷の帰路につく。
屋敷が見えてくると何やら屋敷の前に人だかりができていた。
見覚えのない馬車が止まっていて、そこには「Arbiter Vitium」のゲーム内で見たことのあるマークが掲げられていた。
「聖女様!あのものです!あのものが6属性の適正を持つ聖者様です!」
そう声を上げた聖職者の指にさされたリバルは集まっていた者たちの視線を一斉に集めた。
「リバル=ライアン!こちらへ!」
声を上げた聖職者にどこか見覚えがあったかと思ったら、
リバルの魔法適正を担っていた司祭であった。
その司祭から、ある馬車の前まで案内される。
その馬車からリバルと同い年ほどの金髪の聖職者が出てきた。
「あなたが6属性すべての適正を持つというリバル=ライアンですか?」
「はい。私が、グレイス=ライアン公爵の息子のリバル=ライアンと申します。
私にどういったご用件でしょうか?」
「神に愛されし聖者様、私の夫としてそのお力を教会のために奮っていただけませんか?」
「はい?夫?」
何がどうなっているのかわからず、その場で呆然と立ち尽くすしかできなかった。