5.シスターアタック
一日が過ぎるのは早い。
気づけば今日の授業は全て終わり、放課後になっていた。
夢と現実をさまよい続けた俺が一日の過ぎゆく早さを説いていいのか、という疑問には目をつぶっておく。
そんなことをしているからというわけでもないが、今日は放課後にやらなければいけないことがあった。
それは、まもなく行われる文化祭の委員打ち合わせだ。
朝のホームルームで意識が飛んでいる間に勝手に委員に決められてしまい、それで行くことになってしまっている。
……と言ってみたものの、周りの証言によると、俺はちゃんと引き受けるニュアンスの返事をしていたらしい。無意識に周りに合わせる……もしかしたら授業の時もそれで乗り切っていたのかもしれない。それにしたって、そんな時に変に発動してくれなくたっていいじゃないか。
まあ、そんなことをしているから委員に選ばれてしまったということでは、自業自得なのかもしれなかった。
「えへへ、おにいちゃんと一緒に委員になるなんて、運命的なものを感じるよね? どきどき」
委員に決まって美央と離れることができるならそれもまたよし、と思って自分を納得させていたのに、美央まで一緒になるとは思いもせず。
どこに着席してもいいというこの委員会、始まる前から美央がもう横に座っていた。
「頼むからあんまり目立つようなことしないでくれよ」
「えー? 委員になったのって、いろいろしたいからなのに」
美央が提案するようなイベント……何が出てくるのか怖くて考えたくもない。
委員会が始まり、さっそくその不安は的中することになってしまうわけだが。
「では、何か提案などありますか」
「はーいっ! カップルコンテストはいつものことなので、それに加えてシスターアタックコンテストとかどうですか? どのくらいラブラブか」
「すいません、今のは聞かなかったことにしてください」
今ほど、美央の隣にいてよかったと思うこともない。
俺は美央にもう何度目かわからない口ふさぎを強制発動させて、最後まで言わせずシャットアウトさせる。
「はは、もしそれをやったら高坂さんの圧勝でしょうね」
「いや、委員長も納得しないでいいですから」
納得がどうこうよりも、俺と美央の関係が普通に知れ渡っているから困る。まだ笑ってくれているだけマシだ、と思っておくしかないのか……なんだか、美央を止めている俺の努力が無駄だと言われているようでむなしい。
「えへへ、それもそっかー」
そして何度も同じことをされている経験からか、美央がすでに俺の手からすり抜けてしゃべり出す始末。しかもなんでそこで肯定するかな。道連れにされた俺に、周りの委員の見守っているように見せかけておいて、冷たく刺してくる視線が、なんともいたたまれない。
結局、朝と変わらない状況に泣きたくなった。