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ダブルアタック!  作者: MMR
6章 電車の中で
36/39

33.よりかかられて

 結局試着は一着だけにはおさまらず、あれだこれだと何着も着替えていくのを結局俺は端で見守ってしまった。

 ……いや、見守るといっても別に覗いているとかじゃないぞ?

 次々と見せられた水着自体のインパクトは、最初の鴨紅さんを越えるほどではなかったものの、美央と鴨紅さんのいちゃつきっぷりというか、まるで俺をいないことにでもしているんじゃないかと思えるようなガールズトークなんか繰り広げられてしまっては、たまったものじゃない。鼻血の一つでも吹き出しそうになるのを最後まで耐えることがなんとかできたのだった。

 内容など、とても俺の口から言えるものじゃない。言わせんな恥ずかしい。

 

 解放されたのは、もう日が沈んでのことだった。

 しかし、そのまま解散というわけにはなるはずもなく。

 神経を削られまくった俺は、引きずられるようになりながら、当然のように帰りの電車も付き合わされていた。

 

「えへへ、楽しかったねー」

「う、うん……あの、お兄さん、なんだか疲れてそうですけど大丈夫ですか……?」

「あー平気平気! おにいちゃん、きっとわたしたちのセクシーさにメロメロきちゃってるだけだから」

「大声でそんなこと叫ぶな」

「えー? 事実なのに?」

「もうやめてくれ……」

 

 偶然にも三人並んで座ることができた一列に七人掛けできるシートで、横にいる鴨紅さんを挟んで向こう側にいる美央の声が届くくらいなのだ。俺としてはたまったものではない。

 目の前に立っている人へ視線を向けたら、速攻でそらされた。……うん、見知らぬ人からの評価が早速順調にガタ下がってくれているらしい。あんまりな状況に泣きたくなってくる。

 だが、こんな最悪な状況でも、ただ一つだけ助かっていることがある。

 距離があるおかげで、俺の鴨紅さんとは逆隣の状況に、美央が気づいていないことだ。

 気づいていないと断言できるのは、なぜなら……俺の肩に頭を乗せて眠っている同じ年代くらいの女性を見て、美央が何も言ってこないわけがないからだ。

 

 俺が座る時、同じ駅の別のドアから乗り込んでいたらしく、同時に着席していたことだけは覚えている。顔は良く見えなかったが、座った時からすでに俺の方に向けて船を漕いでいたので、寄りかかられないだろうかと心配はしていたけど……

 いや、別に寄りかかられるかもしれないと思ってここに座ったというわけではないぞ。これはたまたま俺が三人の中で列の先頭にいたから奥に詰めて座っただけで、不可抗力なのだ。言い訳がましいが。

 

 しかし、こうやって寄りかかられてみると思った以上に軽いというか……嫌がらせのように全体重を乗せて押さえつけてくるような会社帰りのサラリーマンとは全く次元が違う。

 なんというか、香水もそうだけど、女の子特有のいい香りが鼻をくすぐり、電車のちょっとした振動でも動くロングの髪の毛が肌をくすぐり、この近さでないと聞こえないくらいの小さな寝息が耳をくすぐり……そうされていると安心するというか、俺までその眠りの世界に誘われそうというか……

 つくづく、美央にバレなくて良かったと思う。今の俺は、その誘われた眠気とこのシチュエーションのおかげで、どんな顔をしているかわからない。

 

「えっと、お兄さん、その……」

 

 まあ、鴨紅さんにしっかり見られてしまったわけだが。

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