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ダブルアタック!  作者: MMR
5章 夏のお決まりコース
35/39

32.お披露目

 もちろん、目の前には美央と鴨紅さんがいた、わけだが。

 

「あ、あの、お兄さん? どうしたん……ですか?」

「えへへ、おにいちゃん、私たちの水着姿に見惚れちゃったんだよ! 残念だったね、るりちゃん! 襲われなかったよ?」

「はう……そんなこと思ってないよ……」

 

 とどまることを知らない美央の好き勝手な言動を止める気も起こらない。

 確かに俺は、見惚れてしまったというか、言い方が古いかもしれないが釘付けになってしまっている。

 

「えへへ、おにいちゃん、似合うかなー?」

 

 美央が俺にその姿を見せつけるように一回転したり、体をひねらせている。

 背中が腰くらいまで開いている、さっき鴨紅さんが勧めていたような、明るい黄緑色のワンピース。よっぽど好きなのだろうか、ウエイトレスの時に散々あったのにも飽き足らず、その胸元に白いリボンが一つ。

 活発的な美央らしいといえばらしい、というか、美央が着るとみんなそう見えてしまうのかもしれないが。

 

「というか子供っぽいのか?」

「おにいちゃん、なにか言ったかなー?」

「いや何も」

 

 どうやら気にしているらしい。

 

「あ、あの、お兄さん、どう、ですか……?」

 

 堂々としている美央とは対照的に、鴨紅さんがその姿を隠すように手を前にやっている。

 ここまでの流れは、もうほとんどファミレスの時と同じことをしているような気がしてならない。

 

「るりちゃん、隠してたら感想も言えないよ? ほらほらー」

「はう! みおちゃん、だめ……っ」

 

 美央が鴨紅さんの背後から、羽交い締めをする格好で腕を取っている。半ば強引な動きのおかげで、鴨紅さんの最も主張している部分が大きく弾んだのを見てしまった。

 ……決して見逃さなかったという表現にはならない。これは不可抗力だ。ボールのようにその弾みは一回だけにとどまらなかったところまで確認してしまった以上、そう言っても説得力は無さそうだが。

 とりあえず、視線がこちらに来ていなかったのは救いだった。美央は鴨紅さんの行動を抑えることに集中しているし、鴨紅さんはその美央のいる後ろに向いている。どうやら気づかれずに済んだようだ。

 

「えへへー、マシュマロなんだよ? うらやましいでしょー、かじってみたい?」

「えっ、みおちゃんマシュマロなんて持ってたの?」

 

 全然済んでなかった。美央の目はその二つ以外にもあるんだろうか。

 

 結局俺が選んだことにされてしまった、鴨紅さんの純粋さを思わせるような白い色で統一されながらも、大胆さがかなりのものな小さなビキニ。胸の間は一個の金色のリングでつながれていて、その場所をのぞき込んでいるような感覚に陥ってくる。そして懸念していたとおり首の後ろ、ウエストの両脇、おそらく背中も、とにかくヒモで結ばれた状況には、横を向いたら一体どんなことになっているんだろうと疑問が沸いたものの、思うだけしかできず、言う勇気が出ない。

 それでも、正面から見た感じでは……

 

「ど、どうですか……?」

「うん、に、にあって」

「るりちゃん、一回転しないとよくわからないよ? ほらほらー」

「わっ、あわわっ」

「いや! いい! そこまでしなくていい!」

 

 確かにさっき思っていたことを美央が言葉にしてくれているわけだが、全力で止めた。見ているこっちが恥ずかしくなる。

 

「みおちゃん……やっぱり、似合わないって……」

「違うよ、おにいちゃん照れてるだけだって! そのまま腕に抱きついたりしたらイチコロだよ?」

 

 卒倒するという意味ではな。頼むからけしかけないでくれ。

 しかし、今日はいつもに増して美央の勘が冴えすぎている気がする。その姿が姿だけに、ただでさえ落ち着かないんだから、これ以上は勘弁してほしい、のだが。

 

「えへへ、今日はおにいちゃん隙だらけだね? 楽しいなー、わくわく」

 

 むしろ恰好のターゲットになっているだけだったらしい。

 

 そうして一通りお披露目も終わると、美央と鴨紅さんでお互いのを見せ合いだしていた。

 

「みおちゃん、ワンピースすごく似合ってる……」

「えへへー、ありがと! あのねるりちゃん、水着はまずはワンピースだと思うよ? 次に行くときがビキニで。日焼け跡にぐっとくるんだから。るりちゃんもそうする?」

「わ、わたしは日焼けすると痛くなっちゃうから……」

「あ、そっか! るりちゃんのお肌すべすべだもんねー、うらやましいなー」

「そ、そんなこと……」

 

 ようやく俺抜きで会話が始まったことにほっとしていたが、やはりそうはならないらしく。

 

「それにしても、おにいちゃん」

 

 無理矢理にでも、美央は軌道修正をするようなやつだった。

 

「あんまり私たちが水着になっても反応しないよね? だって下着と同じようなものなのに」

「何を言い出す」

「あ、わかった。ちらっと見える方が好きなんだよね? 今度はこの上に制服着てこようか! るりちゃんもきっと」

「あ、あの……その……それでも恥ずかしいですけど、どうしても、ってことでしたら……」

「やらなくていいから。鴨紅さんも考えなくていいから」

 

 鴨紅さんが確実に美央の影響を受けてきているのが心配で仕方がない。

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