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ダブルアタック!  作者: MMR
3章 どきどき撮影会
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17.どきどき撮影会5~まぶしさ、再び

「でさ、おにいちゃん。上目遣いが好きなのはよーくわかったけど、そろそろ違う目線で撮ってもいいと思うんだけどなー」

 

 半分あきらめの境地の俺、うつむいていまだに声にならない声を出している鴨紅さん、どちらも美央に何も言えない状態でいると、美央は容赦なく次に進もうとする。

 俺の好みを確定してきた件については面倒なのでスルー扱いにしておくとして、確かに美央の言うとおり、今まで鴨紅さんが座ったところを立ちながら撮影しているので、ワンパターンなのかもしれないとも思う。

 

「どうしろと?」

「あうあう、流された……えっと、せっかく彼氏になったんだから、同じ目線になるとか? というか、ちょっと甘える感じで下からのぞき込むとか」

「彼氏になったとか決まっている言い方には引っかかるが面倒だから処理しないでおく」

「あうあう、やっぱり放置プレイに目覚め」

「それはもういい」

 

 とにかく、立って撮影する以外には目線を合わせるか、もしくは下から。美央は結局当たり前のことしか言っていないわけだが、もうそのあたりもいちいち指摘しないでおく。時間の無駄だとようやく気づいてきた。今更な感じもするが。

 ひとまず俺はカメラを持ったまま、視線を鴨紅さんの顔に合わせながらしゃがむ。少しでも鴨紅さんを不安にさせないように、と思っての行動だったが、しかし今でも頬に手を当てており、女の子座りだった足は前に出ていて、体に引き寄せるように縮こまっており、充分不安なオーラがまとわれている。

 まったく、美央のせいで鴨紅さんはしばらく再起できなくなってるじゃないか。これこそなんという時間の無駄なんだ。

 そこまで考えて、あることに気づく。

 ちょっと待て。鴨紅さんが縮こまっている? ということは。

 

 デジカメの画面の中には、見てはいけないはずの、しかし今日すでに見覚えのある、あの「まぶしいもの」が映っていた。

 

 それが意味するものを考えるより早く、とっさに俺はレンズを手でふさいだ。我ながら、普段の俺に比べてらしくもない、素早い行動だったと思う。

 ところが、まずいことに肝心の鴨紅さんがこの事態にまだ気づいていないらしい。今でも鴨紅さんはうつむいているので、自分で気づいてくれる期待ができない。

 そして美央は、この状況に何も口を出さないつもりでいるらしい。俺が無言で美央の方を向くと、わざとらしく俺から視線をそらし、鳴らない口笛を吹こうとしていた。

 

 美央のやつ、わかっててわざと俺を座るように促したな。

 

 美央の魂胆にまんまとはまって、結局、どうやら俺が指摘するしかないらしい。

 あいにく俺も、さすがにこのままにしておくほど鬼畜な神経は持ち合わせていない。

 

「鴨紅さん、か、かくして」

 

 覚悟を決めて言ったものの、どうしても声がかすれてしまう。まさかこんなことを言わなければいけない日が来るなんて、予測できるわけがない。

 鴨紅さんも恥ずかしいことになっているんだろうが、俺もそれなりに恥ずかしいものがある。

 もうここまで来ると、美央のこれはいたずらではなくてほぼいじめだ。

 

 鴨紅さんが俺の言葉に顔を上げる。しばらくは何を指しているのかわからない様子で、鴨紅さんは顔全体を赤くしながらも俺に視線を合わせてきていたのだが、俺が勇気を持って、あくまで鴨紅さんの顔だけを見ながら指を下に向けていると。

 

「…………ひぅっ!」

 

 その瞬間、もはや声になっていないどころか、息が詰まっているような、聞いていると心配までしてしまうくらいの音が聞こえた。かと思うのも束の間、座り方を正座にまで戻し、スカートを両手で押さえるという動きをする。鴨紅さんもまたさっきの俺と同じように、それは普段にはあまり見られない素早さだった。

 目を強くつむっているらしい、まぶたがけいれんするようなくらいに震えていた。

 

「えへへー、シャッターチャンスだったでしょー? 気づいた時レンズ覆ってたけど、ホントは一枚くらい撮ったよね?」

「美央……わざと黙ってたな」

「ガード甘くなったでしょ? ほらほら、今の表情とかもかわいーよ? 写真写真」

 

 なんだかもう、美央の一つ一つの行動に見事に振り回されっぱなしで、ほとほと疲れてきていた。

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