表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルアタック!  作者: MMR
3章 どきどき撮影会
13/39

11.愛のムチ?

 なんだかんだいって、母親というものは息子を見捨てたりする事なんてないのだと思う。

 良すぎるタイミングで俺の部屋に乱入してきた母親も母親だし、そもそも誤解だってことをあらかじめ言っておくが、俺に向かってスカートをたくしあげている姿なんて突然目に入れたらどう思うだろうか。

 どう考えても、まずいだろう。

 俺のせいではないと重ねて弁明しておきたいところではあるが、それでも何を言われるかわかったものではない。

 結果から言うと、背筋が凍るような、とにかく見下す形で目を細めた冷たい視線をたっぷり浴びせられた後、居間から廊下にペッと吐き出されるように投げ出されるくらいで済んだ。

 

 ……それこそひどく見捨てられてる感が拭えないのは、この際、気のせいとしておきたい。

 

「それで、だ」

 

 当然説教だけで終わるとは俺自身も思ってはいなかったとはいえ。

 

「なんで俺は美央とまた出かけなきゃいけないことになってるんだ……」

「えっと、お母さんに怒られた、から? えへへ」

「笑ってごまかすな。元はといえば美央が」

「じゃあ、れっつごー」

 

 ごまかそうとしている感が見えすぎてしまうから困る。しかし文句を言おうにも、何をしたところで無駄な未来が容易に想像できて仕方がない。ここは変に労力を使わないことにしておいた。

 ここのところ、根本は美央が仕掛けてきたことだというのに、なぜか俺だけが母親に怒られ、最終的にその詫びとして美央と出かける、というコンボが成立しすぎだと思うが、これは果たして偶然なのだろうか。

 母親も、俺と美央を引き離したいのかどうなのかが今一つ見えてこない。

 ……当然のことだが、決してそこは「くっつけたいのか」などという言葉にはならない。俺の方こそ、そうしてたまるか。

 

「かわいい妹と出かけるのが、そんなに不満?」

「自分でかわいいとか言ってる妹と出かけなきゃいけないのは不満ではあるな」

「あうあう、おにいちゃんがいじめる……」

「愛のムチとでも思っておいてくれ」

「そっかー、いじめられればいじめられるほどおにいちゃんの愛が注がれてるって思えばよかったんだ……今度からそう思うようにするね?」

 

 美央はそう言って、俺の腕を取る。

 しまった、適当にあしらおうとして余計なことを口走ったらしい。

 案の定というか、美央が歯を見せるように口を大きく横に広げた形で悪い笑みを浮かべている。これは調子に乗りだした時のアクションだ。

 

「最後は手足を縛って『もう許して、おにいちゃん……』とか言われるのを期待……」

「してないからそれ以上想像するのをやめてくれ」

 

 何というか、美央の妄想がとどまるところを知らなさすぎる。よくもまあ、そこまでのことを恥ずかしげもなく言えると思う。

 途中まで黙って聞いていられる俺も俺なんだろうが。

 

「実行したっていいのに……さってと、とうちゃーく」

 

 ツッコまないといけないようなことを言われた気がするが、その前に美央が続けて目的地に着いたことを宣言してきたおかげで、言葉を飲み込まざるを得なくなる。

 この状況だと、ここであえてツッコんだところで美央が聞くわけもないのだろう。おとなしく諦めることにしておいた。

 

 ……どうやら流されやすいどころか、美央にどんどん甘くなってきてしまっているらしい。

 

「さーて、ここはどこかなー?」

 

 自宅から徒歩で数分。着いた場所は、とある家の前だった。

 ここがどういう場所なのか。答えは容易に想像がついたけれど、まさかとは思うが今からここに入るつもり、なんだろうか。

 

 再び美央が「れっつごー」と言っているのを聞いてしまった時点で、俺はどうやら覚悟を決めて中に入らなければいけない状況にあるようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ