涼ノ宮ユウヒの憂鬱
皆さんは異世界転生と聞くと何を想像するだろうか。
魔法が使えてほうきで空が飛べるようになった自分?
ドラゴンと剣一つで戦い、死闘の果てに賞賛される自分?
それとも、エルフや猫耳美少女に囲まれる自分?
みんな、「自分」に目が行きすぎなのではないだろうか?
せっかく異世界に転生しているのに周りを見ていなさすぎる。
そこで、わたくしこと、ウンコ剣士は、これからはこの超異世界ハラルドを旅するルポをお届けすることにします。
汽車にゆられて3時間といったところだろうか。
せせらぎが流れる田舎にかなう風景はない。
「おーーい!そこのウンコ剣士さぁん!」
小高い麦わら帽子をかぶった少女が田んぼから手を振ってくる。
やはり、子供というのはかわいらしいなと思った。
黄昏ながら、頬に手をつき移ろいゆく車窓をながめていくと
ブォオオオオオオンと蒸気をあげて汽車は俺ことウンコ剣士に停車の合図を知らせる。
「そうか、もうハンブルグの街につくのか」
汽車はハンブルグの小さな駅舎についた。
俺はウンコ豆帽子を深くかぶって、街を探索することにした。
ハンブルグの街はエーネ川、ソヤネ川、ワカル川の合流地点にあり、商業都市として栄えたという。
だから街の中心部では露店がたくさんでており、色とりどりのくだものや、工芸品、剣や防具を売る店でにぎわっている。
「レンガの街並みに夕陽のオレンジが美しいなあ」
実はそれは全然夕陽ではなかった。
夕陽に擬態するA級モンスター『涼ノ宮ユウヒの憂鬱』だった
罪のない女性「キャーーーーー!!!『涼ノ宮ユウヒの憂鬱』よ!!」
涼ノ宮ユウヒの憂鬱はあっという間にハンブルグの街を飲み込んで、10年代のアキハバラに変えてしまった。
俺「あの頃に戻りたいな」
エルフの女性「ウンコ剣士!!目をさますのよ!!この世界を救えるのはあなたしかいないわ」
気が付くといつも横にいたエルフの女性が俺のウンコ襟元をゆすっていた。
そうか、俺はこの現実[ちょうせかいはらるど]にかえらなきゃいけないんだ。
涙を流しながら、『涼ノ宮ユウヒの憂鬱』にウンコブレードで斬りかかった。
俺「さらば...俺の青春...」
『涼ノ宮ユウヒの憂鬱』はじわぁーっと消滅していった。
俺「これでよかったのだろうか」
エルフの女性「過去はどうしても美しく見えるものよ。きっと未来も現在も美しい。でも、それに気づけないままアルバムばっか見返すなんて、きっと未来の自分が美しいっておもってくれないわ」
俺「それもそっか」
哀愁に涙するハンブルグの街を後にし、俺たちは汽車に乗り込んだ。
まだ俺たちの旅は終わらない。魔王エロリアを倒して、平和を取り戻すまでは。