みりん干し
魚がたくさん干してある。
みりん漬けしてあるイワシがたくさん。
潮風がその匂いを運んでくる。
独特のあの、いや~な磯臭さとおいしそうな魚の香りの半々が鼻を通り抜ける。
ここはそんな港町。
少し濁った水面に小さな漁船がプカプカ浮いている。
地元の小学生は、「こんなクサい町嫌だ」なんていう。
でも僕はこのクサい町が好きだ。
だから、この町の真相を知ったときは、たいそう、ショックだった。
みりん干しだと思っていたあの匂いは、うんこの匂いだった。
岬の崖の上にある、町を見守る大きな仏さまがしている、
仏さまだとは言っても普通に全然排泄物な、
うんこだったのだ。
仏さまには毎年みりん干しが供養される。
だからうんこも全然みりん干しの匂いだったのだ。
少し考えればわかったことだろう。
最近はコンプラに厳しいから、周りにみりん干しの匂いなんかさせないって。
僕が好きだったこの匂いは、町は、うんこだったんだ。
クサいっていった小学生のほうが正しかったのかもしれない。
だから、僕は今日、この町を出た。
町をでて、上京して、初めて漫画の持ち込みをした。
結果はさんざんだった。
高円寺のボロアパートで、バイトしながら毎日筆を持って悩む日々が続いた。
それで思い出した。
そうだ、僕を構成したものはウンコだった。
みりん干しでできた、うんこがあの町を、僕を作ったんだ。
だから、僕は、作った原稿に、仏さまのウンチを塗りたくった。
前衛的な作風にしてやった。
うんちの匂いがする原稿を集〇社に持ち込んだ。
少年ジ。ンプ+編集者「これは、素晴らしい...まんがからありありと、港町の情景が浮かんできます」
僕が持ち込んだ読み切りは即日掲載された。
今では連載もしている。
みりん干しとうんこを間違えたこの僕の鼻が、僕の創作を推進してくれる。
だから僕は描き続けるんだ今日も。
鼻の穴に仏さまのうんちを詰め込みながら。




