仮面世界
私は小説家を目指す高校生稲葉みき
ある日、SNSを見ているとある噂が流れてきた。人間の中に人を襲う人獣が紛れ込んでいるという噂だ。近年私たちの町では一年に平均五人ほど行方不明者が出ているという。もし人獣の噂が本当ならこの行方不明者の中には人獣に襲われた者もいるかもしれない。
しかし、人獣は人間のふりをして過ごしているようで見分ける方法は無いらしい。
私がその噂を忘れ始めた頃、友達が行方不明になった。しかし私は友達が行方不明になるところを確かに見た。
【人喰いの化け物】
あいつは確かに私の友達を食べていた。何も考えられず逃げ出したが、怖くて誰にも言えない。SNSには人獣を見たという情報はない。みんな私と同じように人に言えないのか、それとも見た人は皆食べられているのか。私はこれを小説にしてみんなに広めようと考えた。しかしこれだけでは情報が少なすぎる。人獣の特徴を探るため私は人を食べる化け物の情報を見近な人に聞いて回った。私の町は町民も少ないため町民全員に聞くことが出来た。しかしみんな口を揃えて知らないと答える。私は町の外に出たことがない。しかし、私が知っている町から外へ出た人は二度と帰ってくることは無かった。外の世界はさぞ楽しいのだろうと適当に考えていたが。今考えるとおかしな事だろう。
(情報が少なすぎる。)
そう思った私はSNSで情報を集めることにした。SNSによると人獣は普通の人より聴覚が鈍い代わりに鼻が強いらしい。そこで私は会う人々の前で普通の人なら聞こえるであろう音楽を流すことにした。すると、町の人々はみんなその音楽には反応しなかった。
しかしこれだけで人獣だと決めつけるのはまだ早すぎる。
他に情報はないか…
そういえば今年ももうクリスマスがくるが行方不明者は1人も出ていない。珍しく喜ばしいことだが、それと同時にこの町の人々がみんな人獣になったという証拠にも繋がる。私は怖かったが町の人を1人家に呼び殺すことにした。人の体のことはよく分からないが、明らかに人と違うものがあることが分かった。その人獣の爪は堂の様な形をしていた。
私は見分け方を知ったことに喜んだ。
しかしこのままこの町にいると私も殺されてしまう。そう思い街の外に逃げることにした。小さな船に乗っていると、運転手が来た。
その運転手には動物のような爪があった。まさかと思い、乗っている人全員をみたところ同じような爪がある。私は焦り全員を海に落とした。船の運転は慣れていないが、思ったより簡単だったため港に着くことが出来た。ここが外の世界かと思いしばらくの間この新鮮さに浸っていた。
(しかしなんだこの違和感は)
私は違和感を覚え、通行人の手を見てみると動物の爪がある。
私は驚いた。この世界はもう人の仮面を被った獣しかいないのか。
(私が死ぬのも時間の問題だ。)
小説家の夢を諦められない私はまだ生きている人にこの事を知らせるため、最初で最後の小説を作った。
【仮面世界】
後にこの小説により人獣は世界からいなくなったと思われた。
しかし、歴史は繰り返すものであった。