6話 VSドンボスコと助っ人
ドンボスコが右に左に動きながら攻撃を仕掛けてくるが、ガリムとデブトはそれぞれ連携しながら上手く攻撃をいなしていく。
「よしよし、お前ら良いぞ。俺は見てるだけだけど頑張れ」
「お前は何もしないのか?」
「しないんじゃない。何も出来ないんです! お荷物と呼んでください」
はっきり言うとプーカが正直だなと笑った。
「おい、仮面野郎。何か手はないのか!?」
「ふん。そこの仮面。来たからには何かしろ!」
前衛二人がプーカを煽る。
「よし、じゃあそのまま堪えてろ」
プーカは細身の剣を横に倒し、中ほどに左手を這わせる。
血が流れ、剣に赤い文様が広がっていく。
「お前ら一瞬で良いからそいつの体を拡げた状態のまま動きを止めろ」
「ああ?」
「ふん。無茶を言う!」
文句を言いながらデブトとガリムはそれぞれ左右に拡がり、ドンボスコのそれぞれの手を剣やら盾で強引に抑えた。
「よくやった!」
プーカはそのまま剣を前にしながら突貫していく。
「剣は効かないぞ!?」
「並の剣ならな!」
プーカの剣はそのままドンボスコの胸に浅く突き刺さる。
『血裂爆破』
瞬間。
ドンボスコの体が膨れ上がり、色んな場所がぼこぼこと盛り上がる。
それは全身に伝わっていき、ドンボスコが口から血をこぼす。
直後、どす黒い血が色んな所から飛び出していき、ドンボスコは小さな声と共に絶命した。
何てエグイ技なんだ。
死体となったドンボスコの体からは未だにどす黒い血がさらさらと流れる。
「勝った……」
「ふん。なんとかな」
「お前魔術師だったんだな」
「言わなかったか?」
「ふん。初耳だ。だがよくやった」
「お前らもな、俺一人じゃ勝てなかった」
「もしかしてお前あいつがいる事知ってたのか?」
「いるかもなとは思ってた。俺一人じゃ出会っても勝てなくてな。時間を稼げる前衛がいて助かった」
「ふん、沢山感謝すると良い」
3人が文句を言いながらもお互いを讃えている。
うん、爽やかな雰囲気で良いね。
さて……。
ドンボスコの体に空いた穴を覗くと微かに光るものが見えた。
ちょっと穴が狭いけど俺なら……。
腕まくりしてからドンボスコの体をまさぐる。
「殿下、何をやってるんです、袖に血が……」
「あとちょっと……おっ」
ようやくそれが取れた。
「ふん、それはネックレスですか?」
「なんか光るのが見えたからさ」
嘘である、最初から体の中にあるのは分かってた。
「それは……!」
ネックレスを見た瞬間、プーカが焦ったように近づいてきた。
「ドンボスコの中から?」
「ええ、ドンボスコは光るものを飲み込む習性がありますから。これに見覚えが?」
「……すまない、それを譲ってもらえないだろうか」
神妙な顔でプーカが頼んできた。
俺は少し考える振りをしてからプーカに渡した。
「まあ、俺には要らないものだからね」
「随分と殊勝な態度に変わったな。そのネックレスに見覚えでもあるのか」
「死んだ妹に俺が送ったものだ」
「ふん。形見か」
「ああ、良かった」
その後、俺らは丘に戻り、プーカが墓にネックレスを埋めるのを見届けた。
「あーあ、とんだ非番になったもんだ」
「ふん、まさか命懸けの戦いになるとはな」
「二人とも強いね、流石中級剣士」
「ふん。我々は騎士団の精鋭なのでね。上級に半ば手がかかっている中級剣士です」
「すぐに上級へ上がって見せますよ」
誇らしげだ。
ていうか剣だけでもこいつらが先生やってくれ……たりはしないだろうなぁ。
そういうの好きじゃなさそうだし。
「そういえばジーク様が剣術も魔術も使えないのって……」
「うん、教えてくれるはずの先生を優秀な弟に取られちゃったからね」
「ふん。噂は本当でしたか」
「可哀想に」
やめろ、そんな目で見てくるな。
「先生か……」
墓の前で座っていたプーカがゆっくり立ち上がり、後ろで話していた俺らの方を振り返った。
「ジークと言ったか。魔術と剣術、なんなら俺が教えても良い。俺を臣下として雇ってくれるならだが」
「え、本当ですか?」
「ああ、もう街は無く守るべき相手もいなくなった。仲間はリンドル公爵の下へ行ったが、街が襲われたのに救援も送ってくれなかった主だ。元々いけ好かなかったし、今更リンドル公国の為に尽くそうとも思えん。ネックレスの恩もあるしな」
「それはありがたいですけど……良いんですか?」
「ああ……っと、そういえば仮面を外していなかったな」
仮面を外すと無精ひげを生やしているが、なかなかの男前が姿を現した。
「「あ!」」
後ろではデブトとガリムが驚いた声を出すが、俺は正体を知っているから今更だ。
「本当の自己紹介がまだだったな。俺は元々リンドル公国筆頭騎士をしていたルーベルトだ。少し前からベルゼに左遷させられてたが実力は鈍っちゃいねえ。だから給金はそれなりに弾んでくれよ」
ルーベルトはニッと笑った。