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4話 知らない内に先生に愛想付かされていました……

 次の日の朝食後。

 俺は早速勉強と剣術、魔術の訓練をすることにした。

 勉強は併設の図書室があるから何とかなるにして、剣術と魔術は教えてくれる人がいなければどうにもならない。

 確か子供時代の説明では俺には良い先生がいると思ったのだが。


「セバス、俺の剣か魔術の先生は、今日は来ないの?」

「ジーク様、恐れながら申し上げます。ジーク様を教えていた先生は剣術、魔術共にティゴス様に教鞭を振るっております」

「え!?」


 ティゴスの先生になってるの!?


「ど、どうしてそんなことに?」

「言うまでもありませんが……ジーク様がやる気がないため先生方は無聊を託っておりました。そんな二人を見てティゴス様が自分を教えてと願い出たのです。お二人は喜んでティゴス様の下へ向かいました」


「……つまり俺のせいか」

「恐れながら忠告として申し上げさせていただきますと、ジーク様は御家族以外王宮の方全てに嫌われていますので……」

「え、本当に? そんなことってある!?」


セバスチャンは恭しく首肯した。

いや、そこは否定してよ! ていうかそれセバスも内心嫌ってるって事だよね!?

衝撃的すぎて泣きそうになったよ。

まあ、俺泣かないけどね。何となくそんな雰囲気は出てたし。


――にしても困ったな、というか一昨日までの俺はどんだけ駄目だったんだ。

正直子供時代のジークって説明しか知らないんだよね。

ゲーム始まった時点でジークを断罪するシーンから始まるから、18歳以前の彼がどうやっていたかとか詳しく分からないし。

イベントとかも一切知らないしなぁ……。

それこそ昨日の社交パーティがあった事すら知らないし。


「代わりの先生は手配出来る?」

「どれも初級までならば可能です」

「うーん……」


 剣と魔術には国が定めたそれぞれのランクがある。

 初級、中級、上級、最上級。

 最上級から上もピンからキリまである感じで実力の幅は存在しており、更に同じ最上級でも剣聖とか称号持ってる人がいたりもする。

 ちなみに元々いた俺の先生は中級だったはず。

 ティゴスを教えているのが中級、俺が教わるのは初級……いや、駄目だろ。

 最初の段階で負けてるのに先生まで下とか、追いつける気がしない。


「どうして初級の先生しかいないんだよ」

「ジーク様、剣術や魔術を学びたいと思う方は沢山います。ですが人に教えられるほど習熟している者は限られています。初級から中級に上がるのも本来厳しく才能が無ければ10年20年鍛錬をしても上がれない者もおります。それにそれぞれ自分の仕事をしていたりもします。たとえ王の権威があろうとも王家の教育係より自分の魔術研究……技術の研鑽を……と考える者もいてそれを無理やりにとは出来ないのです。ましてや、中級の方々を招聘できたことがそもそも凄いのです」

「じゃあ、俺はその凄い人達を取られたのか」

「…………」


 誰が悪いって言ったら俺が悪いから怒れないけどさぁ……けどさぁ……。

 うーん、例えば俺が相当な実力者として王子の教育係で時間を使う位ならもっと自由な事するよな。

 だってどこ行ってもちやほやされるし、堅苦しい王宮になんて行きたがるかと言えば。


「うむむむむ……」


 困った、何か手は……。

 しょうがないからとりあえず図書室から本を持ってきて勉強を始めた。

 この国の本は日本語じゃないくせに俺にも読めるようになっている。

 一体どういう原理なのか分からないが、ありがたい事だ。

 それにしても……。

 本を読み始めて気づいたが、俺は生前の記憶があるから四則計算は出来るし文字も読める。

 となれば意外と勉強する量は減るんじゃないか?


 とりあえずカーラーン国の地理や歴史、周囲を取り巻く情勢などが書かれた本を読む。

 本を読む限りカーラーン王国は建国が300年と割と新しめな新興国ではあるものの、貴族連中は王家へ忠誠を誓っていて団結力があるのもあり、なかなかの強国と周囲の国々に恐れられているらしい。

 

 また小国は首都がモンスターに襲われるなんて例もあるらしく、カーラーンがそういった状況にならないのは、国が運営する冒険者ギルドやら騎士団などが、領内のモンスターを定期的に討伐したりとしっかりしているからかもしれない。

 弱点と言えば観光という面ではあまり力を入れていないようだが……。


「…………」


 本を読みながら俺は隣を見た。


「何か用か?」


 セバスチャンがどうしてか分からないがずっと俺の横にいた。


「陛下からジーク様の様子を見るようにと言われておりますので」

「セバスは忙しいんじゃないの?」

「陛下の命令が最優先です」

「俺サボらないよ?」

「…………」


 にこっと笑っている。

 要するに信用していないという事だろう。

 まあ、好きにしたらいい。


「ちなみにセバス、最近何か変わったことは無いか? 近隣の国々の噂とかでもいい」

「……そうですね、先日隣国でモンスターに滅ぼされた街があったと聞いています」

「モンスターに?」

「群れをなすモンスターは危険なものです。近隣も我が国のようにはなかなかいかないという事です」


 まあ、カーラーン王国と違って国としてぎりぎり存続出来てるって国もあるらしいし、そんな事もあるだろうな。


「何て名前の街だ?」

「ベルゼの街だったかと」

「ベルゼ?」


 ベルゼ……どっかで聞いた事があるような……あ!


「セバス、ベルゼってカーラーン王国の北西にある隣国リンドル公国の?」

「よくご存じで」


 セバスが感心するように言ったが、俺はその名前にとても聞き覚えがある。

 リンドル公国。

 ゲームに出てきた名前だ。

 確かベルゼに駐留してた騎士団が近隣の山で大量発生したモンスター討伐に行った直後、別方向からモンスター集団が街を襲ってきたせいで街は壊滅っていう悲惨な事になったはず。

 

 でもおかしいな。

 俺の記憶ではそれが起こったのはゲームが始まる10年後だ。

 ティゴスが2歳下でいたりと、どうもゲームと違っている気がする。

 タイムパラドックスじゃないが俺の行動次第じゃもっと何かが変わるかもしれないな。

 それなら未来も……いや待てよ、もしかして。

 俺は本を置いて立ち上がった。


「ジーク様?」

「セバス、これから俺は旧ベルゼの街に向かう。リンドル公国は王国と友好関係にあったはずだから個人的に行く分には問題ないだろう?」

「それはそうですが、どうして?」


 どうしてって……いや、下手に言うと状況が変わる可能性があるから本当の事は言わない方が良いか。


「話だけでなく視察じゃないが実際に見に行きたい。馬車と護衛を用意してくれ」

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