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Reshot  作者: 如月いさみ


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58/61

その10 後半

頭の上に雪を乗せて玄関口に現れた人物たちに坂路家の人々は驚愕しながら姿を見せた。


「年末の忙しい時に申し訳ない」

そう言って頭を下げている坂路家の主人である坂路理一と妻の沙奈に一色一颯は告げた。

理一は「いえ、こちらこそ突然のことで何か御無礼が…」と立ち上がると

「どうぞ、中へ」

と誘った。


そこへ着物を来た理沙が騒ぎを聞いて姿を見せると

「あれー、一色君…じゃなくて一颯さま」

どうしたの?

と目を見開いて告げた。


理一は慌てて

「理沙!ご挨拶をしなさい」

と告げた。


理沙はすっと座ると

「ようこそ、坂路家へ」

と告げた。

が、一颯はふぅと眩暈を起こしかけて

「坂路…お前」

と言いかけた。


それに沙奈が

「そんなところで何かとあれですので」

お部屋の方で

と告げた。


一颯は「すみません」と言い付いて来ていた友晴を見ると

「七尾」

と呼んだ。


友晴は頷き

「失礼いたします」

と玄関から上がった。


一颯と友晴は坂路家で一番良い大広間に案内された。

上座に座り下座に坂路家の三人が座った。


理一は息を吐き出し

「突然のご訪問」

何か坂路家で不備がありましたでしょうか?

と告げた。


一颯は慌てて

「いや、実は坂路…いえ、坂路家のご息女である理沙さんには何時も仕事でお世話になっており」

その…今日、益田家の方から理沙さんが名古屋の方へ戻らないとお聞きしたので

と告げた。


理沙はハァツと母親の沙奈を見た。

「お母さん!」


沙奈は咳払いをして

「益田家に言いました」

と言い

「その、理沙はかれこれ10年…名古屋で一色さまにお仕えしてまいりました」

ですがそのために

「結婚適齢期を遥かに超えてもう31歳です」

とおよよと泣き崩れながら

「このままお子も出来なければ坂路家の裏を仕切る私としては」

と告げた。

「それで若い新任を理沙の代わりにと申し出ました」


…。

…。


友晴はちらりと一颯を見た。

理沙は蒼褪め

「はぁー!?」

私は名古屋で仕事するっていったでしょ!

と立ち上がった。


沙奈も立ち上がると

「仕事なら坂路家の会社で事務を許しますと言ったではありませんか!」

と告げた。


理一は左右で立つ母と娘に挟まれ

「主家の流れの前で何をしている!」

とがっくりと頭を項垂れた。

「申し訳ありません」

妻も坂路家のことを思ってのことで

「その、一色さまも事務仕事の滞りをお考えなら新任の事務員を選出して年始から任に着くようにお願いしますので」


理沙は顔をしかめると

「お父さま!」

と座ると

「私…名古屋で仕事をしたいの!」

事務がしたいって

「ただ働きたいって訳じゃなくて」

いっし…

と言いかけたところを一颯が手で止めた。


「坂路」


一颯は頭を下げると

「お願いします」

俺も理沙さんと一緒に仕事をしたいと思っています

「いや、それだけでなく」

理沙さんがプロポーズを受けてくれれば

「結婚したいと思っています」

と告げた。


理沙は驚いて一颯を見た。

「一色君!」


一颯は真っ赤になりながら

「逆になったがな」

と言い

「お前がいなくなるって話を聞いて…そう思った」

と笑みを浮かべた。

「茜のこともあったからお前が嫌じゃ無ければだけど」


理沙は泣きながら

「何で?私はそう言うところもひっくるめて一色君と一緒にいたいよ?」

だって一色君の隣だと私は私らしくいられるんだから

と抱きついた。


一颯は抱き留め

「あー、それでな」

というと

「お前をこれからも名古屋にということで」

交換条件を呑んできた

と告げた。


理沙は「は?」と一颯を見た。


一颯は彼女を抱き締めたまま

「益田達雄の後継な」

受けた

と告げた。


理沙は蒼褪めた。

「はぁ!?」

一色君!

「いいのー!?」

一色君渋ってたじゃない?

「私、荷物持って家飛び出すし」

気にしなくて良かったのに


理一と沙奈は

「「理沙!!」」

と腰を浮かした。


一颯は笑って

「いいさ」

あの人が元気なあいだ俺はこのままだ

と告げた。

「探偵業は俺の天職だからな」


理沙は笑顔で

「ありがとう」

と座り直すと

「一颯君、私をお嫁さんにもらってください」

と頭を下げた。


一颯も頭を下げて

「理沙、俺の嫁に来てください」

と告げた。


七尾友晴は安堵の息を吐き出し

「ハチャメチャでしたが…益田さまの思惑通りになりましたね」

と心で呟いた。


そして

「益田さまが年始の挨拶の際にお二人のことは山陰に報告なさいます」

と告げ、理沙の両親に視線を向けると

「坂路家の方もそのようにお願いいたします」

と告げた。


理一と沙奈は顔を見合わせた。


理一は理沙を見ると

「主家の当主の妻になるということは並大抵のことではない」

良いのか?

と聞いた。


理沙は笑顔で

「はい」

一颯君となら私頑張るわ

と答えた。


沙奈は一颯を見ると頭を下げ

「こんな、品格も格式もない娘ですが…心根だけは真っ直ぐだと私は思っています」

何卒宜しくお願いします

と告げた。


理一もまた

「こういう娘ですが」

親の願いというのは子が幸せかどうかということだけ

「娘を宜しくお願いします」

と頭を下げた。


一颯は微笑むと

「確かに」

お二人を見て俺も両親には辛い気持ちをさせてきたのかもと思います

「必ず理沙を幸せにします」

宜しくお願いいたします

と頭を下げた。


理沙も頭を下げて

「ありがとう、お父さんお母さん」

と告げたのである。


年末年始を一颯は数年ぶりに両親の元で過ごし、その間に慌ただしく後継としての挨拶と坂路理沙との結婚の報告などに走り回った。


「あー、面倒くせー」

と相変わらずぼやきつつ、不意に

「あ、ピーを俺の部屋に忘れてきたな」

とハッと1月4日の昼頃の名古屋へ帰る列車の中で気が付いた。


…。

…。


理沙も友晴も

「私もだ」

「私もですね」

と同時に呟いた。


名古屋に帰宅をして暫くのあいだピーは

「ワタシ、ラネン、キライ」

とかなり拗ねていたのである。


那須幸一に報告をすると

「これは先を越されたな」

とぼやきつつ

「まあ、君がこちらのブレインであることはゆるぎない」

と言い

「おめでとう」

と言いつつ、虎視眈々と次の手を考えていたのである。


尾米正は二人の報告を聞くと

「ですよねぇ」

おめでとう

「坂路さんに一颯君」

お仕事はこれまで通り頑張ってくださいねぇ

とやっぱり探偵業丸投げ感満載で応えていたのである。


そして、2月に入り大きな事件が一颯を待っていたのである。


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