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Reshot  作者: 如月いさみ
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予告状

「今日聞いた佐世の浮気の話を調べてみる必要もあるな」


一颯は言い探偵事務所に戻るとピーを坂路理沙に託して帰宅した。

その時、坂路理沙からチラシの一覧と区域の一覧をもらい見比べて

「やはり、昭和区がこれか」

と奏斗が手紙に使ったチラシと新聞を見せた。


奏斗は頷いて

「何ればれたってことか」

と言い

「本当に探偵なんですね」

と告げた。


一颯は嫌そうに奏斗を見ると

「当り前だ」

あそこを何の事務所だと思ってるんだ

と告げた。


翌日、妻である佐世の浮気のことを調べると思わぬことが発覚したのである。

それは統流が生まれる前から…つまり、相手の男性と佐世は鎌倉統一郎と結婚する前から付き合っており男性は働いていない割に羽振りが良かったのだ。


何処からその金が流れているかは男性のマンションの住人から頻繁に訪れているという女性が佐世であることが分かり想像がついた。


男の名前は早川流二。

一颯と奏斗は隠れて男を見張り今回の件の理由が分かったのである。


一颯はマンションから出掛けようとしている早川流二を見ると

「…なるほど、統流は父親似だったのか」

佐世にすればどうにかしないと、と思っているところに

「都合よく罪を被ってくれそうな存在が現れた訳だ」

と奏斗を指差した。


一颯と奏斗はしばらく後を追って流二の入った場所を見て携帯で動画を撮り

「さて、行くぞ」

と立ち去った。


そして、一颯は奏斗と共に鎌倉邸へ行くと出迎えに現れた蓮司に

「手紙の送り主がもう少しで分かりそうなので中間報告を」

と告げ

「あ、その前に奥様の佐世さまおられますでしょうか?」

と聞いた。


蓮司は驚きながら

「は、はい」

と答えた。


一颯は頷くと

「出来れば奥様もご一緒に」

と告げた。


一颯の要望通りに統一郎と佐世が応接室に姿を見せた。

一颯は二人に一礼し封書を出すと

「実はこの手紙の消印と使われた切り抜きから中部新聞で昭和区辺りだとわかりました」

近いうちにこの手紙の主が分かると思います

と言い

「ブレーキの細工もこの手紙の主の可能性が高いのでご注意ください」

と告げた。


佐世を見ると

「この手紙の主のことでもしかしたらある女性の子供かもしれませんので事実が分かる前に奥様にもお伝えをしておこうと思います」

と告げた。


佐世は酷薄に笑むと

「夫のそれは以前からですのでお気遣いありがとうございます」

と頭を下げた。


統一郎は奏斗を一瞥して直ぐに一颯に視線を戻すと

「…では引き続きお願いする」

妻にはそう言う意味では苦労掛けてきたと反省はしている

と告げた。


一颯は立ち上がると

「わかりました」

いらぬ気遣いをしました

と答え

「それで費用の件で」

その二人で話を

というと佐世をチラリと見た。


統一郎は「ああ」と納得すると

「確かに新聞やチラシを調べるのに費用が掛かったかもしれんな」

と言い

「佐世、お前はもう」

と告げた。


佐世は頷くと

「わかりました」

と答え、立ち去った。


一颯は彼女が完全に出ていくと携帯を取り出すと先ほどとった写真と動画を見せ、唇を開いた。


統一郎はそれに息を吐き出すと

「わかった」

と答え

「それに関しては私の方で」

と告げた。


一颯は立ち上がると

「では宜しくお願いします」

と立ち去りかけて、奏斗の頭の上のピーを見ると

「ピー、そろそろ、そいつの頭の上からどいてやれ」

と告げた。


ピーは飛び立つと

「ワタシ、ホムズ」

ワトン、アタマ、イイナラ

と一颯の頭に乗りかけて振り払われると上へと飛び立った。


奏斗は目を見開く

「あー」

と叫んだ。


一颯はふぅと息を吐き出すと応接室の前で

「また迎えに来てやる」

と言い統一郎を見ると

「すみません、あれは暫く放置しておいてください」

これから手紙の送り主を訪ねて確認したら迎えに来ます

と告げた。


統一郎は頷いた。


一颯は執事の蓮司にも

「あのインコは直ぐに迎えに来るので」

と言い立ち去った。


車に乗り込み館を出ると奏斗は慌てて

「あの、大丈夫なんですか?」

と聞いた。


一颯は「まあ一種の賭けだな」と言い

「だが妻なら俺がお前を連れて行く前に行動を起こすしかないだろ」

と言い、携帯を触るとスピーカーをオンにした。


そこから声が流れてくる。

佐世の声である。

「手紙の主が見つかったらしいのよ」

直ぐにも連れてくるみたいなの

「どうするのよ」

統流が貴方の子だと判る前に遺産を継がせないとダメなんでしょ


「え?…そんな」

わかったわ


奏斗は一颯を見た。

一颯は車のエンジンを入れると奏斗を見た。

「お前は鎌倉統一郎を助けたいか?見殺しにしたいか?」


奏斗は顔をしかめると

「見殺しは嫌だ」

と答えた。


一颯は笑むと

「なら、助けろ」

と言い戻ってきたことに驚く蓮司にシッと黙るように言い事情を説明すると彼の案内で裏から中へと入った。


佐世は辺りを見回し手袋をしてナイフを隠し持つと統一郎の部屋へと訪れた。

「貴方、先程の女の話で」

呼びかけて、開いた扉に目を見開いた。


「え!?」


一颯と奏斗と統一郎がいたのである。

奏斗は彼女の慌てて隠そうとした手を掴み

「これを使うと息子の統流君が悲しみます」

と告げた。

「それに貴女も目を覚ました方が良い」


一颯はあの時に外出した早川流二が向かった先を映した動画を見せた。

他の女の部屋に通っていたのである。

「…働かず貴方の金を当てにした男がどういう行動をとっているか」

甘い言葉だけで騙されて罪を犯すと貴方が不幸になるだけだ

「いやその不幸は息子の統流くんも」


佐世は泣きながら座り込んだ。

「私だけだって私だけだって言ってくれていたのに」


一颯はピーを見ると

「ピー、行くぞ」

と呼びかけた。


ピーは一颯の頭に乗ると

「ワタシ、ワトン、ラブリー」

と羽をパタパタさせた。


一颯は目を閉じると

「…今だけは許してやるが」

ラブリーはやめろ

と告げた。


そして、奏斗を見ると

「ここからはお前が話をして決めろ」

お前の将来だ

「もうお前はちゃんと前を見て歩いて行けるだろ」

と言い立ち去った。


奏斗を見送り統一郎を見た。


統一郎は頭を下げると

「今まで苦労を掛けた」

すまなかった

と告げた。


佐世は統流のこともあり早川流二と手を切り、別宅で住むことで決着を見たのである。

生活は出来るがこれまでのように自由になる金はないということだ。


遺産は統流と美郎と奏斗の三人で等分になることと決まったのである。

統流自身出生を知らないので秘密は秘密のままとなったのである。


一颯は事務所でピーを頭にその報告を聞き

「そうか」

アイツの面倒を見る必要がなくなって助かったぜ

と少々の寂しさを味わいながらぼやき、ちらりと尾米正を見ると

「鎌倉家は那須家と繋がっていたんだな」

とぽつりとつぶやいた。


尾米正はそれに黙ったままふっと口元にだけ笑みを浮かべた。


ピーは羽を広げると

「ワトン、ラブリー!」

サンポー

「サンポー」

と鳴いた。


一颯は嫌そうに

「ラブリーを言えば散歩はなしだ!」

と怒りながら立ち上がると事務所を後にした。


陽光は明るく地上を照らし極々普通の光景が広がっていた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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