その5
一颯は息を吐き出すと
「そんなキーワードでヒットするわけがない」
と言い、一枚の紙を彼女の前に置いた。
「確かに掛けた電話は君の電話番号だった」
だが起爆装置として利用された携帯の契約者は立花節子だった
茜は震えながら
「違うんです」
私が父に会いたいのをお母さまが会う方法があると教えてくれて
「準備してくれただけなんです」
と告げた。
一颯は彼女の食事が終わったのを確認し
「そうか」
と答え
「とりあえず話を聞かないとな」
君は家に戻って
と言いかけた。
茜は首を振ると
「私、帰りたくない」
と告げた。
理沙も一颯も驚いて彼女をぎょっと見た。
茜は一颯を見つめ
「ご迷惑かけることになるのに…帰られない」
と瞳を潤ませた。
確かに目を引く美少女だ。
だがそれだけじゃない。
瞳に…胸が疼いた。
一颯はふと湧きかけた熱を抑えて座り直し
「わかった」
というと
「とりあえず俺のマンションにいれば良い」
ただし
「これからその事を言いには行くぞ」
と告げた。
「立花聡志はあんたを本当に心配していた」
茜は暫く一颯を見つめ、やがて小さく頷いた。
一颯と茜が立花家に着くと立花聡志が姿を見せた。
「茜、心配したぞ」
一颯は彼を見て
「実は茜さんはこちらで暫く面倒を見ることになりました」
あの爆発事件は彼女の狂言だったことが発覚したので
と告げた。
「彼女の本当の父親である黒崎零里と会いたいという気持ちからのようです」
彼女は警察に黒崎零里の釈放を要求していたんです
聡志は茜を見た。
茜は涙を落とすと
「ごめんなさい、お父さん」
私お父さんに会いたくて
と告げた。
「馬鹿なことをしてごめんなさい」
聡志は息を吐き出し
「入りなさい」
一色さん貴方もどうぞ
と招き入れた。
七尾友晴もそれにはついて入った。
万が一、聡志が一颯に危害を加えたらと心配したからである。
友晴の役目は一颯の身を守ることもあったのだ。
聡志は茜と二人をリビングに通し
「茜には辛い思いをさせてきたかもしれない」
と言い、一つ溜息を零した。
「俺と零里は小学校時代からの友達だったが零里は他のクラスメイト達とは余り馴染めない性格だった」
俺の父は交番のおまわりさんで孤立する零里と仲良くするようにいつも言われていて俺は仕方なく付き合っていたが
「そんな俺なのに父が亡くなって多額の借金があったのが分かって困っている時に零里は一番に駆けつけてくれて俺や母の為に一生懸命心を砕いてくれた」
本当に心の優しい奴だった
「そんなアイツが会社の知り合いたちと変な団体を作って…誘われたんだが俺はアイツに辞めるように勧めて喧嘩をした」
一颯はそれが『改新』だと理解した。




