その5
理沙は立ち上がって扉を開きラーメンの袋を両手に立っている一颯に
「一色君、ラーメン屋のバイト始めたの?」
と苦笑した。
一颯は嫌そうに
「ちげーよ」
と答え
「偶々下で配達に来た親父と会って渡された」
七尾に一つ渡して
「二つは持ってあがったんだ」
と一つを茜の前に置いた。
「ここのラーメンはうまいから食え」
茜はじっと見て
「その…お金」
と呟いた。
一颯は「いらん」と答え彼女の前に座るとラーメンを食べ始めた。
理沙は笑って
「茜ちゃんも食べて」
私もお昼のお弁当たーべよ
と席に戻ってお弁当を出した。
尾米正は笑いながら
「まったく自由ですねぇうちの探偵事務所は」
というと
「じゃあ、俺も早いですがお昼食べに行ってきますよ」
と立ち去った。
三人が食事を終える頃、一颯は理沙に
「メール確認してくれ」
と告げた。
理沙は頷いて
「わかったわ」
と答え、愛知県警から届いているメールを見ると印刷して一颯に渡した。
一颯はそれを見ると茜に視線を向けて
「そうか、本名は黒崎茜…だったのか」
と呟いた。
茜は顔をあげて箸を落とすと
「あ」
と声を零した。
そして、それを拾いテーブルの上に置いた。
一颯は彼女を見つめ
「母親の欄は空欄だが…立花節子の子供でない事だけは間違いないな」
と告げた。
「立花家には黒崎零里が自首をした7年前に預けられてそれ以降そこで生活をしている」
しかし
「立花聡志は『JDW』には所属していなかったんだな」
妻の節子は『JDW』の人間か
「襲撃には関与していなかったということとそれほど重要な役割をしていたわけではなかったから執行猶予5年で済んだのか」
だが…ある程度内情は知っていたわけだ
茜は俯いて
「お母さまは関係ありません」
私、お父さんに会いたかったんです
と言い
「9歳で立花のお父さんのところへ引き取られて…お父さんは優しい人だけど…やっぱりお父さんに会いたかった」
と手を握りしめて告げた。
一颯は目を細めて
「それを利用されたのか」
と心で呟いた。
確かに起爆装置となった携帯にかかった番号は彼女のものだった。
彼女が爆弾を仕掛けて爆発させたのは間違いないだろう。
自分だけになるのを待って人がいないのを確かめて電話を掛けた。
だから先の一颯の質問にはっきり答えたのだ。
トイレに誰もいなかったと。
個室に入って用を足していたら他に人が入ったかどうかなど分からない。
だが彼女は自信を持って答えていた。
一颯は茜を見て
「一つ聞きたいが、爆弾は何処で手に入れた?」
と聞いた。
茜は視線を動かして
「あ、の」
ネットで…売っていたので…
と告げた。
一颯は「なるほど」と言い
「どうやって検索したんだ?」
普通はそんなあけっぴろげに売ってないからな
と告げた。
茜は考えながら
「爆弾と販売と…」
と告げた。




