その5
一颯は彼女を見つめ
「そうですか」
というと、先程の彼女の父親と母親を思い浮かべ
「そう言えば茜さんはお母さんとは血が…」
と告げた。
彼女の母親に対する呼び方。
そして母親が彼女に対する態度。
違和感満載であった。
茜は一颯の問いかけには笑みを浮かべたまま答えなかった。
一颯はメモを取ると立ち上がり
「そうそう…爆弾の起爆装置は携帯電話でそこへ電話を掛けると電流が流れて爆発する仕組みだったんですよ」
それに掛けた携帯番号を調べているので犯人は近いうちに捉まると思います
「その時にはまた」
と驚いた表情をした茜に背を向けた。
茜は慌てて立ち上がると
「あの」
と言い
「分かるものなのですか?」
と聞いた。
一颯は肩越しに振り向き
「分かりますよ」
爆発は小規模だったので携帯が残っていたとか聞きましたから
と答えた。
茜は視線を彷徨わせて
「わ、私が…」
と呟いた。
「私がしたんです」
一颯は振り返ると
「携帯…見せてくれるかな?」
と手袋をして差し出した。
茜はおずおずと渡した。
「これで」
一颯は受け取り携帯の『設定』を開くと
「…なるほど」
と言い
「一緒に来てもらうけど」
かまわないか?
と告げた。
茜は小さく頷いた。
下では聡志が心配そうに待っており一颯は彼に会釈すると
「お邪魔しました」
彼女と少し食事をするので
と告げて、茜を見た。
聡志は驚いて
「あ、茜」
どうしたんだ?
と慌てて聞いた。
茜は首を振ると
「大丈夫、お父さんにもお母さまにも迷惑かけないから」
と頭を下げた。
聡志は首を振ると
「いや、何を言っているんだ」
と言い、一颯を見ると
「その、茜は被害者なんです」
本当に本当に
「良い子なんですよ」
と訴えた。
一颯は頷いて
「わかってるので安心してください」
と告げた。
「少し話を聞くだけなので」




