その5
幸一は住所と名前を書いたメモを差し出し
「名前を、立花茜と言い17歳の女子高生だ」
と告げた。
「怪我はない」
一颯はそれを手に取り
「…JKか」
と言い
「JKとは相性が悪い」
と以前の事件でJKと偽って依頼してきた古波彩を思い出した。
幸一は苦笑を浮かべつつ
「だが、彼女は偽女子高生だったんだろ?」
今回は正真正銘の女子高生だ
と告げた。
一颯は写真を手に
「まあ、彼女から話は聞かないとな」
不審な人物を見ていないかとかな
と告げて立ち上がった。
「爆弾の詳細は警察の科捜研に聞けばいいな」
幸一は頷いて
「そう手配している」
と答えた。
一颯は頷くと
「じゃあ、そっちに先に寄ってから彼女のところへ行く」
と立ち去った。
そして、邸宅の前で待っていた益田家の車に乗り込んだ。
「愛知県警へ頼む」
運転手は那須幸一が言っていた益田家の従家である七尾の長男である七尾友晴であった。
彼はアクセルを踏むと車を走らせた。
一颯の後ろ盾である益田達男が見込んだ人物であった。
これを機に坂路理沙と共に彼を一颯の側近につけようと考えていたのである。
友晴は愛知県警本部の駐車場に車を止めると周囲を見回してから扉を開き一颯を中へと連れて入った。
既に県警署長が応接室で待っており一颯が中に入ると丁寧に頭を下げて
「お待ちしておりました」
那須様よりこちらをお渡しするようにと
と名古屋駅の女子トイレで起きた小規模爆破事件の詳細と届いた脅迫状であった。
一颯はそれを受け取り
「後もう一つ頼みたいことがある」
と言い
「黒崎零里の身上書を」
と告げた。
署長である浜夏生は頷き
「かしこまりました、少々お待ちください」
というと内線で資料室の人間に指示を出した。
10分程で書類を持って事務方の警察官が現れて夏生に手渡した。
夏生はそれを一颯に渡した。
「これです」
黒崎零里。
年齢は49歳。
18歳の時に親友たちと『JDW』の前衛となる『改新』という団体を作る。
黒崎零里の役割は様々な先進機器やプログラムの開発と資金調達管理。
他の面々は彼が開発した機器やプログラムを元に『JDefendWork』という会社名で営業を掛けながら『改新』の人脈作りを行っていた。
言わば、黒崎零里が『JDW』のバックボーンを支えていたのである。
彼は所謂ギフテッド…天才であった。




