その4
一颯は最後の水菓子のプリンが出ると
「あれから10年か」
と言い
「お前らと叔父さんがいなかったら俺はどうなっていたか」
と呟いた。
「叔父さんがずっと俺を抱き締めてすまなかったって言っていたのが」
今もずっと胸の中に残ってるな
春彦は静かに笑むと
「そうだな」
と言い
「忘れられない光景ってあるよな」
と告げた。
「俺は直兄が大丈夫だって言ってくれた顔が忘れられない」
東京へ戻るつもりだったが
「結局九州に残る道を選んだ」
けどどんなに離れていても俺と直兄は何かで何処かで繋がってるって感じるんだ
「だから一色と卓史さんも同じだと思う」
だから忘れられない光景なんだと思う
一颯は穏やかに笑うと
「そうだな」
お前のそういう甘いところ嫌いじゃないぜ
と告げた。
大翔は笑って
「確かに島津は甘いが俺も嫌いじゃないな」
と告げた。
伽羅は笑顔で
「俺も」
と告げた。
春彦は腕を組むと
「褒められてるのかくさされてるのか悩むところだけど」
と言い
「けどまあいいか」
と笑った。
その時、春彦の携帯に武藤譲からの連絡が入った。
先に頼んだことの返答であった。
春彦は一通り譲からの報告を聞くと一颯と大翔と伽羅を見た。
「やはり先の男は雇われていたらしい」
SNSで募集が掛かっていてこの店の前であの時間に車で暴走して逃げるだけで10万だと言われて
「前金の2万は振り込まれ済みだったらしい」
と告げた。
伽羅は驚きながら
「この店の前って…嫌がらせかなぁ」
と呟いた。
春彦はう~んと考えながら「警察はそう考えたらしいけど」と呟き
「それから代議士の友岡克也と医者の田口紋太とか俺達がここへ来た後に入ってきた人たちのことを調べさせた」
と告げた。
伽羅は不思議そうに
「え?なんで??」
と聞いた。
それには一颯が答えた。
「俺達が部屋に向かいかけた時に代議士の友岡ってやつが時間通りだったら事件に巻き込まれていたって言っていただろ?」
それが気になったんだ
春彦は頷いて
「そしてその時間が分かるのはこの店の人間だけ」
と言い
「暴走車の犯人が言っていただろ」
この日のこの時間って指示を受けたって
「店への嫌がらせだけなら時間まで指定するって言うよりも何度もって感じだと思うんだ」
だから本当は店への嫌がらせじゃなくて
「指定された時に訪れる人間を狙ったんじゃないかって」
と告げた。
大翔はそれに
「つまり、この店の人間でその代議士とか医師に良い感情を持っていない人間がいるってことか」
と告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




