その3
刑事の一人が息を吐き出し
「どうしたんだ、一体」
と呟いた。
一颯は少し考え
「とにかく、葵さんが遊んでいたという公園の周辺とこの家の近辺を捜索してみた方がいいかもしれない」
と告げた。
「犯人は警察が動いていることを知っている」
金の受け渡し場所を模索しているかもしれない
「私服警察がそれとなく張って見ても効果が見込める」
刑事は腕を組むと
「確かに犯人は警察が絡んでいると判っても葵さんを生かしていたということは殺害する予定はないということか」
だとすれば金の受け渡しをどれだけスムーズにするかを模索していると
と呟いた。
「どちらにしても受け渡し場所が決まればそこに人を張り込ませるし」
この周辺で不審人物がいればマークするのも悪くないか
一颯は頷いた。
通報を受けて警察庁から数人の刑事が公園の周辺や久世家の家の近隣などと共に受け渡しに使われそうな駅や道路などを調べた。
一颯は頭の上のピーを見ると
「さて」
と呟いた。
その時、捜査に出ていた刑事の一人から連絡が入ったのである。
「学校の体育館の倉庫で眠っている女の子を発見しました」
送られた写真から久世葵さん9歳と思われます
それに久世加子も耕作も顔を見合わせると抱きしめ合った。
刑事も大きく安堵の息を吐き出すと
「なるほど、学校の体育館の倉庫で…本当に殺すつもりはなかったようだな」
と呟いた。
「犯人の誤算か」
久世葵は覆面パトカーで家へと戻り母親と父親に抱きついた。
犯人からの電話はそれ以降もなく警察は録音したテープを科学解析したが犯人に結び付く手掛かりは得られなかったのである。
久世葵も犯人に関して
「黒い帽子をかぶった人からジュースもらって飲んだら眠くなって」
と話し、その後はずっと眠っていたようである。
つまり、迷宮入りということである。
一颯は解決後に警察で色々情報を交換し夜の10時に事務所へと戻った。
坂路理沙は彼が戻るとインコのピーに餌を与えながら
「でも娘さんが無事でよかったですね」
と言い
「犯人が捕まらなかったのは残念ですけど」
と呟いた。
「でも警察も声紋分析とか進めていくんですよね」
一颯はそれに息を吐き出しながら
「あー、俺は警察じゃねぇんだ」
そこまでは知らねぇよ
と言い
「依頼料は払ってくれるんだ」
文句はねぇ
「が、あいつならちゃんとするかなぁ」
と天井を見上げた。
坂路理沙は不思議そうに彼を見て
「?あいつ?」
と聞いた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




