その2
貴子は「きゃぁ」と驚いて腰を浮かしたものの
「ご、ごめんなさい」
と腰を下ろした。
一颯はピーを睨みつつ
「いや、こちらの鳥が」
と言い顎を動かした。
ピーは戻ると
「スキスキスキスキ、イブキ―、ワトン」
と鳴いた。
貴子は一颯を見つめふぅと息を吐き出すと
「確かに貴方の言うのも一理あるわ」
と言い
「ただその企業には黒い噂があって…彼が望むなら反対はしないし良い会社なら心から祝うつもりはあるわ」
と告げた。
「でもやはりそう言う企業には行ってほしくないの」
悪い噂の企業には
一颯は頷くと
「それは当然だな」
特にあんたも彼を大切に思っているようだからな
とニヤリと笑った。
「それでその企業の名前は」
貴子は一颯を暫く見つめ
「…瀬野尾テクノロジーコーポレーション」
と告げた。
一颯は立ち上がりなら
「なるほど、色々調べさせてもらったし」
じゃあ俺は突っ込みが入る前に失礼する
と立ち去った。
入場許可書を警備員に返すと学園を出て空を見上げた。
「やっぱりガセネタだったが…あの女の目的も見えてきたから良いか」
瀬野尾テクノロジーコーポレーションか
一颯はピーを見ると
「お前…」
というと
「良くやった」
と告げた。
ピーは羽根をハタハタさせて
「ワタシ、ホムズ、イブキ、ワトン」
ラブリー
と答えた。
が、一颯は冷静に
「それはいらん」
と突っ込んだ。
事務所へ戻ると一颯は坂路理沙に瀬野尾テクノロジーコーポレーションを調べさせた。
彼女はネットで情報を拾い出して
「あ、明日ですが休ませていただきます」
というと事務所を後にした。
一颯は彼女のその前に調べていたバイオエネルギーの研究をしている会社や企業の一覧を見て
「瀬野尾テクノロジーコーポレーションも入っているな」
と言い
「しかし、色々なところから人を引き抜いているみたいだな」
と呟き、事務所の社長の尾米正を見ると
「じゃあ、俺も今日はこれで」
と印刷された一覧表を手にピーを籠の中に入れると
「今夜は大人しくしてろ」
と言い、オフィスを後にした。
尾米正は手を振り一颯が去っていくと携帯を手に電話を入れ
「那須さま…今回、一色さまが受けられた依頼ですが少々…」
と何時もと違う報告であった。
尾米正は毎日欠かさず本来の雇い主である那須家へ報告していた。
一颯の能力についても買っていたが、特に危険を感じる時には雇い主である那須家へは包み隠さず即座に報告を入れるのである。
一颯はそんなことは知らずにマンションにある自宅に戻ると一覧を見ながら夜食に買った天津飯を食べていた。
坂路理沙が短時間で調べた会社の一覧は良くできたものであった。
会社の本社から社長や会社の経営状態や買収や特出すべき人材まで書かれていた。
瀬野尾テクノロジーコーポレーションは幾つかの会社を買収してその特許を利用して大きくなったようである。
しかし、その多くの会社は短時間に経営が悪化して安く買収されている。
一颯は目を細めると
「会社と人は違うが似ているな」
と呟いた。
「もしかしたら会社の経営が突然不振になったのには今回のような何か理由があったのかもしれない」
そう、自分が浅見美咲の言うままに三河亜津志の悪評を流して学園での評価を落とせば出ていかなければならない。
「それで瀬野尾テクノロジーコーポレーションが安い年俸で誘えば行き先が無い三河亜津志は生活費を稼ぐために行かざる得ないというわけか」
とすれば浅見美咲は瀬野尾テクノロジーコーポレーションの人間ということか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




