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その影にご注意  作者: 秋元智也
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第七話

モヤを食べるとお腹は膨れる。

ただ砂を食べているような感覚で美味しいものではなかった。

そう、おいしくはなかったはずなのだ。

しかし、浅田恵の中に入っていたモノは普通に味があって美味しかっ

たのだ。


「どうなってるんだ…?こいつのせいか?」

「っ…んっ……」

「おい、起きれるか?」

「ここは…あれ?どうしたんだっけ?」


寝ぼけたような感じで意識が混濁していた。

次第に意識がはっきりすると慌てて、周りを見回してから田辺を見返した。


「なんで…奴らに呑まれたはずのに…」

「俺が助けてやったんだ、感謝しろよ!」

「誰がお前なんかに…それに誰のせいでこんな事になったと…」


恵は言いかけて、途中で断念した。

こんな事を言っても無駄だと考えたからだ。

どうせ、普通の人には見えていないのだから。


「お前見えてるんだろ?だから身体に入られたんだろ?」

「…どうしてそう思うんだ?」

「そりゃ〜あんなに取り憑かれてりゃな〜。俺が追い払ってやろうか?」

「…いや、いい。見返りが怖いんで、遠慮させてもらうよ」

「そういうなって…昼にちょっと食事させてもらえればそれでいいからさ〜」


今日の昼を思い出すと速攻で断る事にした。


「嫌だ…絶対に嫌だ。変態に付き合うつもりはねーよ!」

「俺がいれば、奴らは近づいてこねーと思うけど?」


後ろで声が聞こえるがそれを無視して教室の鞄を引っ掴むと家へと急いだ。

確かに一瞬で奴らは消えたのも事実だが、むしろこの状況に陥った原因は田辺

にある。

体力的にも、精神的にも疲弊していなければ、撃退できたかもしれないし、気

配で始めからわかったと思うと余計気に入らない。


アパートまで後ろをついてくる田辺に振り返ると急いで中にはいった。


ここまでは来れないだろうと。


家の中には何枚かの護符が貼られている。

一番落ち着く空間だった。

窓を開けると外を眺めようとして目の前に浮かんでいる田辺に気づき言葉を失

っていた。


「よぉっ!」

「…!?」

「邪魔するな〜って…ん?なんだコレ?」


バチバチバチッ…。


電流が走った様に見えるとお札が一気に燃え上がった。

青い炎が上がった一瞬で消え去ったのだ。


「あ…何してくれんだ!」

「あんなもんがあったら入れねーだろ?」

「入ってくんな!これからどーすんだよ。」

「いいじゃん、俺が代わりに守ってやるって。それに…俺の眷属にならねー?

 俺ってダンピールなんだよ。ようは吸血鬼と人間のハーフなわけよ!」

「ダン…ピール?人間じゃ…ない…」


恵は後ずさるとキッチンの包丁を前に突き出した。


「で、出てけよ…」

「そんなに身構えんなって…俺さ、お前の事気に入ってんだぜ?」

「気に入られてまたるかよっ、どーせ殺す気だろ?冗談じゃないっ!」

「だーかーらー聞けって、死なせない為に眷属にならねーかって…」

「信じられるかよ!昼間だって…あんな事しといて…」


包丁を握る手が震えている。

そりゃそうだろう、人間としか思えない相手に刃物を突きつけて怖くない

人間はいない。


「俺の力を分けてやるって言ってんだよ。今のままじゃ安心できる場所な

 んてねーだろ?こんな弱いお札に頼ってる様じゃこの先どーすんだよ?」

「そんな事言われる筋合いじゃねーだろ?」

「そうだな…でも、眷属になればあいつらは寄って来れねー様にしてやる

 って言ってんだよ!」


それでも、昼間のが蘇るとどうしても頷けない。


「お前みたいな変態の眷属なんて御免だね。」

「強情だな〜、俺が気に入ったって言ってるのに…」

「勝手に決めるな!早く出てけよ!」


田辺は呆れたように堂々と恵に近づくと包丁を素手で握った。


「えっ…うそっ…」


握る手が動かない。

簡単に包丁を奪われると、あの時と同じ赤い目が光る。

身体の自由が一瞬で効かなくなった。


「こうでもしないと危ないだろ?」


田辺はゆっくりと包丁をキッチンに戻すと恵のシャツを脱がしにかかる。

首筋残った歯痕をぺろりと舐めるとそのまま背筋にゆっくりと触れていく。

そして円を描くようになぞると指の先を噛み血をそこに垂らす。


魔法陣が浮かび上がりゆっくりと赤く描かれていく。

そして焼き付くように恵の背中に描かれ、完成した瞬間霧散した。


バキーンッ…


何が起きたか分からないという視線前に恵の背中には青い別の魔法陣が現れ

ていた。


「あぁぁっ…いやっ…熱い…田辺やめっ…」

「俺じゃねーよ!これって…眷属契約じゃねーか…それも完成してない?まる

 で餌を誘き寄せる為に描かれたような…」

「はぁ、はぁ、あぁぁっ…離れろ…熱い…」


恵の背中に現れたものは眷属にして力を与えるものではなく、不完成のものだ

った。

餌を誘き出して食べる為だけに描かれたもの。

それで納得がいく。

恵が引き寄せる体質のワケが。



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