第二話
少し眠るつもりが、外は真っ暗になっていた。
単身赴任の父親と、朝から夜まで働きずめの母とは一緒に暮らしていない。
恵を見るとヒステリックになるというのが現実だ。
コンビニで何か買おうと出かける事にすると一番近いとこへと向かった。
すると、そこにはクラスメイトがいて気まずいと思い少し遠くのコンビニま
で、足をのばすことにした。
いつになく背筋がゾクゾクする。
こんな日は早く帰るに限る。そう思いながら裏路地を通り過ぎるとバタッと
何かが倒れる音がした。
こんなところで何を…いや、これ以上深入りは危険だ。
分かってはいるが、気になってしまって覗いてしまった。
真っ黒なモヤに包まれたナニカが女性の上にのしかかっている。
意識がないのか動かない。
110番を押すと場所を言って助けてほしいと言葉を発した時、そのモヤから
紅い目がこちらを捉えた気がした。
あれはなんなのか?
霊的なモノなのか、それとも人間なのか?
大きく膨れ上がると気づいたら目の前に真っ黒なモノが広がっていた。
「ヤバっィ…」
逃げようにも逃れられない!
壁に押さえつけられるとびくともしない。身体は金縛りにでもあったように
ピクリとも動かない。
「たすけて…」
胸が熱い!肩が熱を持っている。
首筋に痛みが走ると身体中が火照っていく。
黒いモヤの中で赤く光る目が不敵に笑った気がした。
そこで意識は遠ざかっていく。
遠くでサイレンが聞こえる…助かったのだろうか?
気がついた時には見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。
「ここは…?」
見知らぬ部屋に自分のではないシャツを着せられていた。
ズボンも脱がされていてパンツ一枚だった。
ガチャッ。
ドアが開くと誰かが入ってくる気配がする。
すぐに布団に入ると眠ったふりをした。
誰かが近づいてくると、目の前で止まった。
額に手を当てて布団を持ち上げられるとシャツの中に他人の手が入ってくる。
「ふざけんなっ!」
ガバっと起きあがるとその手を掴んだ。
相手も驚いたのか目が合うと驚いた事にそこにいたのは昼間にあった田辺だった。
「なんでお前が?」
「あんなところに放置できねーだろ?起きたんなら出てけよ!」
冷たく言われると、無性に腹が立った。
言われなくたって帰るよと言おうとして服がない事に気づく。
「服…返せよ…」
「あぁ、お前が来てたやつか…あーなんだ、俺のを着てけばいいだろ…」
「はぁ?なんでそんな…」
言いながらゴミ箱の中を見るとビリビリに破かれた恵の服が捨てられていた。
「なんで…?なんでこんな事すんだよ!」
「…仕方ねーだろ?お前が…チィッ。だから俺の服で我慢しろって言ってんだよ!」
喧嘩ごしな態度で話すとコンビニのおにぎりが脇のテーブルに載っていた。
捨てられた服を取り出すと肩口から裂けていて血が固まっていた。
シャツを脱ぐと自分の身体を確認したが傷などどこにもなかった。
「何なんだよ、いったい…」
立ち上がるとおにぎりを手に取った。
すると目の前がフラッとして崩れ落ちた。
頭がくらくらする…貧血にでもなったのだろうか?
早く帰りたかったが、今はそのまま眠る事にした。
ムカつく奴の家なのが気に食わないが、動けないのも事実なので仕方がなかった。
夢を見た気がする。
顔は分からないが、誰かが上にのしかかっている…
こそばゆいと訴える僕の身体を執拗に触れてくる。
下半身が熱くて痛い…他人に触れられる事の無いところを扱かれて痙攣する。
『気持ちいい…もっと触って…』
自分じゃないみたいな甘い声がねだる。
尻を揉まれるとその間へと指が伸びていく…。
『あっ…んっ、ふっ、奥まで…入れて…』
自分の声なのに、別人みたいだ…。
くちゅくちゅと音が耳に届くと、奥が疼きだす。
股を強引に開かせると太いモノがそこに当たる。
熱くてドクドクと脈打つ杭を眺めながら裂けていく身体の痛みに耐えるよう、
シーツを硬く握りしめた。
「うわぁぁぁぁーーー!!」
盛大な叫び声で目が覚めると、眠った時に見た見慣れぬ天井だった。
「なっ…なんつー夢を見たんだよ!」
男に抱かれる夢など…欲求不満なのかと恵は頭を抱えたのだった。