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その影にご注意  作者: 秋元智也
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第十八話

家でゴロゴロしていた恵だが、次第に腹が立ってきた。


田辺が立ち去ってから、数時間が経つ。

使い魔は人間の食べ物を知らないのか、血液パックを冷蔵庫から出すと

恵に運んでくる。


「それは…飲めないから…」

「きゅぃ〜〜〜」

「人間の血なんて飲まないんだって…」


恵のお腹がきゅるるっと鳴ると心配して持ってきてくれるのだが、食事

の概念が違うせいかどうにも困った。


キッチンへといくと冷蔵庫には血液パックしかなかった。


諦めると近くのコンビニまで歩いていく事にした。

何もやる気は起きないけど、お腹はちゃんと空く。

財布に入ったお金もそんなにないけど、昼飯くらいはなんとかなりそう

だった。

パンとジュースを買うと公園で食べた。


「はぁ〜、昼の公園って静かでいいな〜」


のんびりと背伸びをすると空を見上げた。

上から影がかかって驚くとそこには一人の男性が立っていた。


さっきまで居たっけ?


「少しいいかな?道を聞きたいんだが…今は時間いいかな?」

「あっ…はい、どこに行きたいんですか?」

「君は始祖の心臓を持っているかい?」

「へっ…何を言っているか分からないんですが?」


恵が聞き返そうとして言葉に詰まった。

赤い瞳…真っ赤に染まった真紅の瞳に囚われると目が離せない。

身体の自由が効かなくなり、次第に意識が薄れていく。


やばい…これだめなやつだ…。


目の前でポケットから飛び出した使い魔は一瞬のうちに掴まれ男の手の

中でジタバタともがくと握り潰されて真っ赤に染まった。


うそ…そんな…。


記憶が途切れる寸前で田辺の声を聞いた気がする。

それも一瞬だったから、もう分からなかった。


恵が意識を失って倒れるところで上空から一気に下降した田辺がたどり着

いていた。

使い魔が消えた事で急いで飛んで来たのだった。


「父さん…どうして?」

「あぁ、唯か!いいところに来た。やっと見つけたんだよ。始祖様を復活さ

 せる鍵を…」


目の前には浅田が意識を無くしていて、父が連れて行こうとしていた。


「父さん…浅田をどこに連れてく気?」

「お?知り合いか?家に連れて帰るんだよ。血を抜き取ってぎりぎりで生か

 しておかないとな…儀式で使うからな。」

「なんで…それは俺のだよ?俺の…契約印を入れる予定なんだ…」

「それはだめだ、これは始祖様用の贄なんだ。勝手は許されない。」


田辺は愕然して父の言葉に反抗したかったが、怖い顔で睨まれると、身体が

竦んで動けなかった。


どうして…?どうして気づけなかった…?

浅田は特別だったんだ。だから…だったら夢の中で見たアル兄ちゃんという

のはもしかしなくても、始祖様だったのでは?

あの忌々しい陣は始祖様の目印だったのだ。


「くそっ…渡してたまるかよっ!」


空を睨みつけると使い魔を集めたのだった。



家に連れ帰られた恵を縛りあげると服を剥ぎ取り綺麗に拭かれ、清潔な檻に

放り込んでおいた。


目が覚めるまではそのままにする。

眠ったまま血抜きをすると限度がわからない。

やり過ぎると死なせてしまうし、その見極めは起きてる時の方が分かりやすい

からだった。


檻は人間がぎりぎり入れる程度のもので、檻の上部に腕を縛り付けると足も束ね

格子に括りつけられている。


田辺が急いで家に戻って来た時には血抜きの準備が進められていた。


「父さん…考えなおせない?別に浅田じゃなくてっていいだろ?」

「何を言ってるんだ!お前こそ、この人間じゃなくてもいいだろう?

 これは諦めるんだ。始祖様を復活させる為の贄になるんだからな。」

「そんな…始祖様が復活したら、浅田は俺が貰ってもいいじゃん?それ

 ならいいだろ?」


父に縋るようにいうと、父は笑いながら答えた。


「何を言ってるんだ。始祖様が復活した時には贄は死んどるに決まってる

 だろ?そんな事も知らんのか!」


父がこれからするのは浅田の血をぎりぎりまで抜いて、代わりに特殊な

薬液を入れて行くのだ。

そして、その薬液に耐えられる肉体が始祖様の身体を整形する上で一番

重要なのだという。

浅田の中にはすでに始祖様が残しておいた心臓が息づいているという。

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